シェア
貴綱 みか
2021年1月8日 08:02
認知症の母は時々眉間にしわを寄せ口を一文字にしてうつむき加減に難しそうな寂しそうな困ったような顔をすることがあった認知症の母のそんな表情は深刻さを感じさせるものではなくまるで小さな子供が何かに悩んでいるようで母が眉間にしわを寄せているのにか気がつくとあらあらまたこの顔をしてるなと思いながら時々、どうしたの?と尋ねてみることもあったが私がたずねても母は何も言わず
2021年1月6日 07:45
認知症で要介護の母にスプーンでごはんを口の中に入れ次の一口をスプーンで口の前に差し出しても口を開けてくれるまで何分もかかることが多くなってきた私があーん、と口を開けて言いながら母の口元に軽くスプーンをあてて口を空けるよう促しても1ミリも口を開けてくれない仕方なく数分時間をおいてスプーンを口の前に差し出してやっと望んだとおりに口をあけて食べてくれると私は心の中で思わ
2021年1月5日 15:42
グループホームで母が椅子に座っているとそこだけゆったりとした時間が流れているようだと母の誕生日に母が通うグループホームの職員の方がメッセージを書いてくれた事があるが認知症が進んで段々と反応が薄くなり私が仕事から帰っても母は無言でお帰りとも言わず時には無防備な寝顔のままでも母がそこにいるだけで何とも言えない安心感があった要介護5になっても自分の意思で考えるこ
2021年1月2日 18:39
母を起こすことから始まるいつもの朝母が寝ている部屋の襖を開けると目に入ってきた母のベッドの景色がいつもと何か違っている一体何が起こったのか?すぐには理解できない光景が飛び込んできて一瞬とまどったがしかしほんの数秒で状況を把握してその途端私は慌ててベッドに駆け寄った母は、介護用ベッドの転倒予防の鉄柵の間の狭い隙間から頭をだらんと下に垂らしその垂れた頭の下の床は
2020年12月23日 09:54
朝小柄な母が玄関の上がり框に幼子のようにちょこんと大人しく腰掛けている姿を見て自宅に車で迎えに来てくれたデイケアの新しい職員の方が思わず「かわいい」とつぶやいた昼間にグループホームでショートステイ中の母の様子を見に出かけるとちょこんと椅子に埋もれるように座ってテレビを見ている母の横顔がみえたとある夜家の中で転んで入院した母のもとへ着替えや日用品を持って
2020年12月21日 10:44
朝、母を起こしに行くと「今日は行く日ですか?」とデイケアに行く日かどうか尋ねてくることが多かった認知症が進んできた母は時々自分がどこにいるのかさらに自分が誰なのかも分からなくなることもあったがデイケアと認識していなくてもどこかに出かけるか出かけないかは分かっていたらしくデイケアに行く日には私が母に朝食を食べさせおむつを取り替えて洋服を着替えさせて玄関まで手
2020年12月18日 20:56
夜中に「トントン」と私の部屋のドアを微かにたたく音が聞こえた気がした気のせいかと思ってまどろんでいるとまた微かに「トントン」とドアをたたく音が聞こえるもしかしてと思ってドアを開けると寝間着姿の母が立っているその頃の母は足元がおぼつかず昼間でも机や家具を頼りにしながら家の中を歩いていたが夜中に電気の消えた家の中を1階の自分の寝室から階段をのぼって3階の私の部屋
2020年12月18日 08:04
母の通ったグループホームである年の七夕の日に母が震えるような字で書いた短冊に「むすめがかえて(帰って?)きますように」と書かれていた母は、一度目の結婚で生まれて1年も経たない我が子をおいて家を出されて2度目の結婚で生まれた私は幼少時に交通事故で生死の間をさまようような重傷を負い奇跡的に助かった娘が成人して一人暮らしをしたいからと家を出ていった時には母が泣いていた
2020年12月16日 15:17
このまま家でも診ていけそうだ母が老健から一時退所して一定期間が過ぎたら戻る予定で老健の職員の方からも「またね」といって送り出してもらったが家に帰ってくると老健に入所する前より足腰もしっかりして人に頼らず何でも自分からしようとするようになっていた老健に面会に行くと母は歩行器で歩かされていたし心身ともに老健でだいぶ鍛えられたなと思った当然のことながら母は