マガジンのカバー画像

それから・・・

18
運営しているクリエイター

#母の死

サイン

サイン

特に気に留めることなく
過ぎていったささやかな出来事

それは
もしかして
何か意味のある事
ではなかったのかと
後になってから思ういくつかのこと

いつものように
静かに座って
会社で仕事を片付けていると

トク、トク、トクと
自分の心臓の鼓動が感じられ
そしてそれが段々と小さくなって
次第に途切れていくのを
時々感じるようになり

1度医者に診てもらった方がいいかもしれない
漠然とそう思いなが

もっとみる
母の遺伝子

母の遺伝子

叔母から
母の初婚の相手は
背の高い人だと聞いていたが

時間より少し前に
待ち合わせた場所に着いて
あたりを見回すと
それらしき人は見当たらなかった

待ち合わせの相手である
母の最初の子供の
その人については

家にあったアルバムの中の
小さな子供の頃の写真と

名前については
母に送ってくれた
その人自身が編集に携わった
ある本から
知ったのだったかどうか忘れたが

ネットで検索をしてみると

もっとみる
無力な存在

無力な存在

母の表情が乏しくなり
何もしゃべらないことも多くなってきた時に
ふとした拍子に
少しでも表情がほぐれて笑顔が見れると
嬉しくなった

母のおむつ交換の時に
おむつを取ったままベッドに座らせていたら
母が尿を漏らしてしまい
ベッドの下まで垂れて
床まで濡らしてしまったが

こんな格好のまま座らせておいて
身体が冷えてしまったのかもしれない
自分が母を世話して
しっかり守っていかなくてはいけない
と思

もっとみる
鉄の扉

鉄の扉

インターホンを押して
名前を名乗ると
職員の方が鉄の扉を
内側から開けてくれる

母が入院した病院や老健
そして最後に入院したICUでも
母は鉄の扉の内側にいた

鉄の扉は
扉の外の世界で
生きるのが難しい人や

扉の外の世界の
有害なものから
守らなくてはならない人の
ためのものだが

母が鉄の扉の内側にいることは
親しい人にも
容易に話せることではなかった

母が亡くなった夜

母が亡くなった夜

母が亡くなった夜

夜ベッドで寝ていると
目を閉じたまま
急に身体が10センチくらい真上に
宙に浮いた感じがした

そしていきなり
寝ている体の方向が
ガクッと90度変わり

寝たまま身体が浮いたまま
足の方向に
かなりのスピードで
部屋の端まで
ゴォーっと
進んでいった

だから
今、自分がいるのは
寝た時の場所から
かなり移動しているはずで

それを確認したいと思い
目を開けようとしたが
開け

もっとみる
書きかけの寄せ書き

書きかけの寄せ書き

「早く元気になりますように」
「またお会いするのを楽しみしています」

母が亡くなって
自宅に安置されている時に
グループホームの方が届けてくれた
母の顔写真が真ん中に貼られた
寄せ書きの色紙は

その死があまりにも急だったことを
物語るように
未完成で余白部分も多く

翌月の母の誕生日のために
どんなケーキを作ろうかと
考えていてくれていたことも
グループホームの方が
話してくれた

父の時もそ

もっとみる