#エッセイ『読む時間と書く私』／読む時間【#シロクマ文芸部】

◆小牧幸助（シロクマ文芸部・部長）さんの
「読む時間」から始まる小説・詩歌を書く企画に参加します。

※詳細は本文後に記載

747字、2分程度で読了可能なエッセイですので、
ぜひご一読ください。

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『読む時間と書く私』

　読む時間は、つらい。書く時間はあんなに楽しいのに。
いや、正確には「自由に書ける時間」は、楽しいといえるだろう。
依頼された内容で、字数や文体を指定されて請け負ったものを書く時間は、苦痛とまではいかないが、なかなかに不自由だから。

　推敲が大事なのは、わかっている。
現に、書く時間よりも倍以上の時間をかけて自分の文章を読む時間に充てている。
だからこそ……、その時間がつらい。

　書く時間は、自分の書くものに絶対的価値があると信じて、書き進める。
もちろん、自分の力量も重々承知の上なので、全能感に浸っているわけではない。
しかし、それでも、それなりの、幾許かの価値があると信じて疑わない。
疑っていたら、筆は一切進まなくなってしまうから。
少しずつ疑いが頭をもたげ始めたら、とにかく「書いてしまえ」と勢いづけるように励ます。

　一方で、読む時間になると「自分の」が消えて、客観的な目線になる。
たくさんの優れた読み物を知っているだけに、相対評価をしてしまう。
そうすると、書く時間に謙遜の上でうそぶいていた「自分の力量」さえ、過大評価だったと気づいてしまうのだ。

　読む時間に冷静になった心が「これは人に見せるべきものなのか」と問うてくる。でも、その恐れに屈したら、私は生涯無口で通さなければならず、心に抱えたものを吐き出す場所を失って、病気にでもなってしまいそうだ。

　一種の言い訳。これは、私の心の健康を保つためであり、誰かに評価を求めるものではない。……なら、非公開でもいいはずでは？
読む時間というクールダウンを経てもなお、誰かと繋がりたいのでは？
「あなたの書くものには幾許かの価値がある」と誰かに言われたいからでは？
または、自分を信じたいから……では？

　多くの矛盾を孕んだ、謎行為。
全てを自覚しつつ、今日も投稿ボタンを押す。

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#シロクマ文芸部 ／9/21発表・9/24〆切のお題
「読む時間」から始まる超短編小説（700字小説）でした。

文字数：747字（空白・改行を除く文字数）

◆小牧幸助（シロクマ文芸部・部長）さんの企画に
　参加させていただきました！
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想田翠／140字小説・短編小説　@shitatamerusoda

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◆前回の「秋が好き」から始まる超短編小説（140字小説）です。
　30秒程度で読了可能だと思いますので、ぜひご一読ください。↓

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　140字小説と1800字小説（5分程度で読了可能）、ぜひご一読ください。

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