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言葉の発達を支える保育

どうもしろやぎ保育書房です(本日の動画解説はこちら

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今日は、
言葉の発達を支える保育、について見ていきたいと思います。
特に0,1,2歳児。初語が出て、一語文を使い、二語文。そして多語文へ。と「言葉を使う力」が伸びていく時期。
この時期の、言葉の力の育て方についてお話したいと思います。
まず、こどもの言葉の発達には「大事な原則」というものがあります。
言語聴覚士の中川信子さんは、このように言います。

こどもの発達というのは、
子どもの生まれつきの力と、周囲の環境の相互作用で促進される

『『教育保育の現在・過去・未来を結ぶ論点』「ことばの育ちと支援」中川信子著

つまり、
子ども自身の力も大切だけど、同じぐらい、周囲の大人の関わりが大事だ、ということです。
じゃあ、言葉を伸ばすために、どうやって大人は子どもたちと関わるべきなのか。
まずはそもそもの「言葉」というものについての理解が必要です。

 わたしたち大人が「言葉」について考え始めるとき、どうしても「子どもの発話」つまり「子どもが声に出す言葉」、に注目しがちです。

しかし、本来「言葉」には3つの特性というものがあります。

特性の1つ目が「話し言葉」これは、声に出す、音声言語、外言語のことです。
そして2つ目の特性は「言語知識」内言語です。
この2つの言葉は、発達心理学では、「外言」「内言」としてピアジェやヴィゴツキーの理論が知られています。
そして、3つ目の特性は「コミュニケーション意欲」です。伝えたいと思う気持ちのことですね。

 例えばりんごを見たことも、聞いたこともないという子は、
 言葉の2つ目の特性「言語知識」がない状況なので、1つ目の言葉の特性「発話」をすることはありません。
 また、「りんご」というものを知っていて、「りんご」と発音できる能力が備わっていたとしても、伝えたいと思う相手がそこにいないと「りんご」とは言わないのです。
 
 このように、言葉の3つの特性は相関関係にあり、さらに、人と人の関係性の中にあってこそ成り立つものだと考えられます。
 
 わたしたちは、子どもの言葉の育ちを見るとき、どんなことを話すか。だけでなく、その子の中に、どんな「言葉」が育まれてきているのか、
コミュニケーションの意欲がどれくらい育ってきているか、を良く見ていく必要があるということです。

 はい。このように3つの「言葉」の特性、を理解したら、次はどのように関わっていくのが良いのか、を考えます。

「言葉」は人と人との関係性、コミュニケーションの中で成り立つ、と先ほどお話いたしました。しかし、子どもとの関わり方、を考えたとき、どんな「言葉がけ」をすればいいのか。と考える方が多いのではないでしょうか。
 しかし、コミュニケーションに大切なのは、自分が話しかけることよりも、むしろ、相手の話をよく聞くことだと言われています。相手の話を聞いて、相手のことをよく見て、理解しようと努力して、そして言葉を返す。
 これは子どもに対しても同じです。

 もちろん、「言葉がけ」も大切です。しかし、まずは、耳を傾けて、子どもの言葉を聞いてみます。
 言葉になっていなくてもいいんです。どんな音を発しているか、どんな表情で、何を伝えようとしているのか。
 じっくりと聞いてみる。
 そして、子どもの様子を見て、今どんな気持ちなのか、どんな事を考えているのか、を推し量ります。
 そうすることで、子どもの気持に沿った言葉を返すことができるようになります。
 自分の気持ちに沿った言葉を返してくれる「大人」がいると、子どもたちの中には「もっと思いを伝えたい」「もっと気持ちを伝えたい」というコミュニケーションの意欲が育っていきます。

 そもそも「言葉」というのは、人間の「大脳」が受け持つ、非常に高次な機能です。 
 この「大脳」とは、脳全体の80%を締め、考えたり、感じたり、話したり、記憶したり、といった脳の中で最も幅広い機能を担っている部分です。
 この「大脳」の働きが、言葉の発達には非常に重要なのですが、実は、この大脳の働きは「脳幹」と「大脳辺縁系」といった、大脳とはまた別の「2つの器官」によって支えられているのです。

「脳幹」というのは、大脳を支える木の幹のような形をしていて、そのまままっすぐに脊髄へとつながっています。見たり聞いたりする神経、呼吸したり、心臓を動かしたり。つまり「身体のはたらき」を司る器官なんですね。
一方の「大脳辺縁系」というのは、「心のはたらき」を司る器官で、これは大脳の内側に備わっています。

 このことから、言葉の育ちを考えるときは、言葉の機能を司る「大脳」だけでなく、「脳幹」そして「大脳辺縁系」の育ちも支える。ということが必要になります。

 つまり、「脳幹」が司る「身体」が健康であること。
「大脳辺縁系」が司る「心」が安定していること。
 この、心と体の育ちを支えることも、言葉の育ちを支えるためには、非常に重要だということなんですね。
 言い換えると、言葉の育ちにとって大事なことは、即、子どもの育ちにとって大事なことだ、と言えるのです。

 では、脳幹の育ちを支える、身体の育ちを支える、というのは、どういったことでしょうか。
 まずは、規則正しい生活が大事です。
 生活リズムを整えることは、人の育ちの土台を整えることになるからです。

 そして、食事の時間を大切にします。特に、よく噛んで食べることを伝えましょう。
 人の口は食事の時、噛む、飲み込む、なめる、吸う、吹く、といった様々な動きをします。この動きはそのまま、口音機能と呼ばれる、口で音を出す機能の育ちにつながります。

 さらに、体の発達に沿った十分な運動が欠かせません。
 子どもに言葉を話してほしいから、と焦って関わるのではなく、体を使う遊びを通して、豊かなコミュニケーションを育んでいきます。発話させることにばかり集中するよりも、楽しく一緒に遊ぶことで、子どものコミュニケーションの力が育まれます。
 どんな遊びがいいのか。とうと、それは「追いかけっこ」であったり「お馬さんごっこ」であったり「いないいないばあ」「手遊び歌」、ぴょんぴょん飛んだり、くるくる回ったり。

昔から、子どもを喜ばせるために、大人が行ってきたあそびは(中略)一つづつに意味がある、どれも大切なあそび「ことばの育ちと支援」中川信子著

と中川信子さんは言います
 これらの遊びは感覚統合と呼ばれ、脳に流れ込む刺激の交通整理に有効です。

 次に大脳辺縁系の育ち、心の育ちを支えるには、何が大切なのかというと、
安定した親子関係安心できる周囲の環境です。

 子どもの貧困が社会問題の今、経済的な貧困だけが深刻な問題ではないと言われています。
 経済的貧困が引き起こす、愛情の貧困、体験の貧困、言葉の貧困が子どもの育ちに大きな影響をあたえています。
 このような状況の中、汐見稔幸さんは

あらためて子どもを愛情深く保護することの重要性が強調されなくてはならない『さあ子どもたちの未来の話をしませんか』汐見稔幸著

と言っています。
 2018年の3法令改定で重要視されたように、これからの保育施設では、より養護の行き届いた環境、保育者の愛情深い関わり、共感的で応答的な関わりを大切にしていくことが大切です。

 最後に大脳の育ち、言葉の育ちを支える関わりを見ていきましょう。
 まずは、体験することを大切にします。

体験したことのないものは、脳の中の「言葉の引き出し」に入れることができない「ことばの育ちと支援」中川信子著

と中川さんは言います。なるべく生の身体で、生の体験をして、そこに大人が適切な言葉を添えることで、子どもが体験したことと言葉が結びつきます。
 昔に比べ、家庭では、テレビやYoutubeなど、動画を見て過ごす時間が多くなっています。
 保育施設では可能な限り、見る、聞く、触る、味わう、そして感動する。といった五感を刺激する体験を保証したいところです。
 
 さらに、毎日の生活の中で自然に行われる「ことばがけ」ですが、先程話したように、子どものことを良く聞いて、よく見て言葉をかける、ということが大事です。
 急に何かを見せて「これはなに?」とか、「お名前は?」と質問するよりも、
子どもの視線の先にあるものは何かな?と様子を見て「あ、わんわんいるねぇ」「しょうぼうしゃだねぇ」と言葉を添える。
 または、子どもの行動を見て、「美味しいねえ」とか「たのしいねえ」といった言葉をかけ、子どもの気持ちを代弁するようにします。
子どもの中には「自分の気持を受け止めてもらえた!」という感情が生まれ、安心感に繋がり、そのまま発話意欲につながっていきます。
 

 はい、以上が言葉の育ちを支える関わり方でした。
 このような、身体のそだち、心のそだち、そして言葉がわかる、という全体的な育ちを通して、初めて発話に繋がっていきます。
 
 もちろん、言葉に関しては個人差も大きいです。”標準” 的に見ると、子どもは1歳半頃までには初語を話すと言われていますが、その ”標準” が親を苦しめていることもあります。
 これに対し、言語聴覚士の中川信子さんは、

実は、何が「標準」なのかは、はっきりと分かっていない 

といいます。
 「デンバー発達測定法」というもので見てみると、初語が早い子は8ヶ月、9ヶ月頃には25%、12ヶ月は50%、そして1歳6ヶ月では90%となっています。 言い換えると、10人に一人は1歳6ヶ月で初語が出ていないことになります。 そして初語の遅い早いの差は8ヶ月以上。2歳で話し始めた子、2歳半で話し始めた子がいても不思議ではありません。

言える言葉が多いか少ないか、他の子と比べてどうか。にこだわらなくていい

と中川さんは言います。

発話があるかよりも、大人が言うことがよくわかり、言葉だけでなく、ジェスチャー、表情を含めたコミュニケーションがスムーズにできているか        『はじめて出会う育児の百科』中川信子著

を見るべきなんですね。
 
 そして、これらの育ちを子どもの中に感じとれるなら、そのうち、言える言葉もついてくるそうです。
 発話させることに焦るのではなく、子どもの全体的な育ちをしっかり捉え、その子らしい育ち、ゆっくりとした育ちを支えていけたらいいな、と感じます。

今日は以上になります。

今日の参考文献は、『教育保育の現在・過去・未来を結ぶ論点』無藤隆、大豆生田啓友、松永静子編著、の中の「ことばの育ちと支援」中川信子著でした

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どうもありがとうございました。

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