父の愛人宅にて…【毒親・第4話】
父が元婚約者宅に転がり込んだから、家庭崩壊が始まった事は7歳の僕にも理解できた。
でも母が店なのかパトロン宅なのか…頻繁に外泊するようになってから、独りぼっちで家にいるのが辛かった…
家庭崩壊の引き金を引いたのは父だけど、結局は母も同じようなものだ。
世の中なにが正しいなんて解らない。
手段なんて選べない…生きていくために。
とにかく今は独り寂しく家で過ごすのが堪えられない。
だから父の誘いに乗って、愛人宅に行くことにした。
父の愛人は大手生保の営業員で、母と同じように派手な感じだった。
愛人には高校生の息子と中学生の娘がいた。
後に聞いた話だが、愛人は父との婚約を解消し大手企業勤務の男性と結婚した。
婚約解消の理由は愛人の両親からの意向だと聞いていた。
父は幼い頃に両親を病気で亡くしていて親戚宅で育てられた境遇もあり、大学へは進学せずに高校卒業と同時に就職した。
おそらく大企業勤務の男性と結婚したほうが将来安泰だと考えられたのだろう。
でも愛人の夫は妻子を置いて突然自殺した。
自殺理由は知らないが死因は焼身自殺で、残された愛人とその子供たちのショックは相当なものだったのだろう。
そこで愛人は父を頼り、よりが戻ったのだ。
父は馬鹿だ…
相談に乗る程度でとどめておけば、家庭崩壊なんて事にはならなかった。
愛は盲目とでもいうのだろうか…
そんな複雑は背景もあって、訪れた愛人宅は7歳の僕がみても違和感を感じるものだった。
愛人の夫の遺影の前で僕の父と愛人が楽しそうに会話し、
僕の弟は当時5歳ということもあり、それが異常な環境だと知るすべもなく愛人の娘に遊んでもらっている。
愛人の息子は、そんな異常な環境のなかで受験勉強をしている。
母の元で、独りで過ごすほうがマシだと思った。
何かしら理由をつけて、とにかく帰ろうと思った。
出来れば弟も連れて帰りたい。
でも弟には申し訳ないが、そんな良案が全く浮かばない。
愛人宅での夕食後、
「友達から借りているゲームを返すのを忘れていて、一旦家に帰りたい。」
というウソを父についた。
父は疑いもせず僕をクルマに載せ、母のアパートまで戻った。
母のアパート前でクルマを降りる時に、僕は父に言った。
「お父さんは間違ってる!」
父は一瞬悲しげな顔をしたが、何も言わず愛人宅へ戻っていった。
その様子をアパートのベランダから、たまたま帰宅していた母がみていた。
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