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男子寮の秘め事と、消せない跡

私の幼少期は、なんだかんだで平和だったと思う。
何不自由なく暮らせていた。

鬱々としがちな毎日は、中学校から始まる。
私は、親の反対を押し切って私立の全寮制中学校へ進学した。きょうだい3人はみんな通った学校だったため、彼らと共通点を持ちたいという気持ちから志望した。

親が反対したのは、学費がめちゃくちゃ高いからだ。それでも最後には通わせてくれた両親。社会人になったいま考えると、そのありがたさをひしひしと感じる。

中学校でも、基本的にゲイである自覚は持たなかった。しかし、入学してしばらくすると、ある3年生の先輩が私をかわいがってくれるようになった。

そのA先輩は、線が細くて色白で、切れ長の目。スポーツ万能で、女子に大人気だった。いつから、どういうふうに始まったのかはもう覚えていない。たぶん、年端のいかない少年同士のじゃれあいがきっかけになったんだろう。先輩の部屋に毎晩のように遊びに行っては、彼のベッドで「プロレスごっこ」という体裁のペッティングをするようになったのだ。

当時の私は、かっこいい先輩からかわいがられることが嬉しい気持ちと、思春期を迎えてさらに勢いづいてきた性欲を刺激される喜びとを楽しんでいたと思う。そこに明確な恋愛感情はなかった。

2年生になったときには同じ部屋の先輩と消灯後にふざけながら、後背位でアナルに挿入を試みるような体制で、身体をくっつけたりすることもしばしばあった。そこにも恋愛感情はなかった。これは男子寮あるあるなのかもしれない。

私の恋心は、同学年の女子生徒に向けられていた。が、自信も度胸もなかったので、なにもアクションを起こすことはできなかった。そうこうしているうちに、その子は私の親友とつきあいはじめていた。

中学入学直後くらいから、私を大いに悩ませたのがニキビだった。これがもう大変で、特大のおできが顔中にできまくるような症状だった。全寮制で、9時消灯・6時起床、食堂で用意されたバランスの良い食事、適度な運動もしていた。落ち着く気配はまるでなく、このニキビ症は高校生・大学生くらいまで猛威をふるってくれた。そのおかげで、私の顔にはニキビ跡が多数残ってしまった。

ふとした瞬間、鏡や写真にうつる自分の顔を見て、ひどく落ち込むのは日常茶飯事。社会人になっても、この鬱々とした気持ちとはずっと付き合うことになる。今はだいぶ楽になったけど、それでもため息をつきたくなる瞬間がまだある。見た目のコンプレックスは、根が深いものだ。

ニキビ肌以外は、順調だった中学生活。
一番勉強に励んだのも、この頃だった。全寮制でテレビや雑誌などの娯楽が禁止されていたから、勉強しかやることがなかった。そのおかげで、卒業後に進学した高校では、1発目のテストで学年2位になることができるのだが、続きはまた今度。

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