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【詩】鬼子


「鬼子」


ひとは言う ありのままの姿を見せてと
それがどんな意味なのかも知らずに

自分と同じようにかわいいだろうと信じている
愛せるから大丈夫と信じている
鬼なんて存在しないと、信じている

そう思える幸せを守るために
鬼は鬼であることを隠しているんだぜ

傷つけたくないから隠しているのに
ひとはやたら暴こうとしてくる
そしてわかった途端、
傷つけられたと喚き散らかす
ひとの方がよっぽど恐ろしいと思ってしまうよ

キレイなものを見たくなる。
そういうものはいつだって
束の間の幸福を見させてくれるから
ひとの悲しみに共感したことがないこと
だれも愛したことがないこと
死なないように生きていること
いつも自分を隠していること
見ているときだけは、それらを見事に忘れさせてくれる
ひとは見る資格なんざないと言うだろから 
陰に隠れて見ているのさ

ひとよ、安易にありのままを求めてはいけないよ。
相手が鬼であった場合、
自分が喰おうとしてしまっていることになるのだから。

これはひとが鬼を喰わないための方法
ひとはひとを喰わない だが鬼のことは無意識に喰っている

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