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『シェイク』『サンボア』『東京』『ロックフィッシュ』—銀座の華は「数寄屋通り」(全国バー行脚⑭東京・銀座)

  神保町に続く東京編第2弾は銀座です。銀座は有名店が山ほどあって、右を向いても左を向いてもバーテンダーコンテストのタイトルホルダーがいるエリア。この際、私がいつもうろちょろしている数寄屋通り付近のバーに限定します。

■カンパリソーダの完成形『シェイク』

 数寄屋通りは、銀座方面と新橋方面を繋ぐ200~300mほどの通りです。銀座側から歩くと、右手には数寄屋橋公園、左手には東急プラザ。左右どちらにも飲食店の入ったビルが並び、バーの名店も軒を連ねています。その新橋寄りの地下一階にある『Bar Shake(バー シェイク)』は、ひょっとしたら私が最もたくさん飲ませてもらったバーかもしれません。

地下への階段の上で輝く看板

 シェイクの開業は2007年。元々は銀座の花椿通りにありましたが、数寄屋通りに移転しました。店内はカウンター10席程度と、4人掛けのテーブルが1卓。カウンターでは毎日、一輪の薔薇が咲いています。

 名物は「カンパリソーダ」で決まり。お客さんがみんなカンパリソーダを頼み、カウンターに赤い灯が並んだような情景になるのもよくあること。コクたっぷりなのに一気に飲めてしまう一杯で、界隈では「カンパリソーダの完成形」と呼ばれています。高名なオーナーバーテンダーのKさんは、バー界で「最もカンパリを売っている男」という話があったりなかったり。

これが完成形

 もちろんカンパリソーダだけの店ではないですよ。私はKさんがハードシェイクで作るダイキリが大好き。初めて飲んだ時、こんなに美味しいカクテルがあったのかと驚嘆しました。元々ダイキリは好きでしたが、それ以来「一番好きなショートカクテルはダイキリです」と迷わず言えるようになりました。強い、けれど柔らかい、冷たくて爽やか、そして何というか“ぎゅっと締まってる”。美味い! という逸品。書いてて飲みたくなってきた。

ダイキリ

 シェイクでは、ウイスキーもたくさん紹介してもらいましたし、地方に行く時はKさんにお勧めのバーを教えてもらったりと、お世話になりっぱなし。不覚にも眠ってしまい朝まで面倒をかけたことも(良くないですね)。各種カクテル、ウイスキー、居心地の良さ、どれも充実しています。

 なお、ここで長く働いていた女性バーテンダーのIさんは、今年の1月に独立を果たし、神田でバーを営んでいます。そちらの話はまた、別の機会に。

■銀座の灯を守り続けた『数寄屋橋サンボア』

 シェイクから銀座方面へ。数軒隣に建つ路面店が『数寄屋橋サンボア』です。サンボアは関西で生まれたのれん分けの店で、バー行脚⑩で京都に絞って紹介しましたが、そもそも私のサンボア好きは、この数寄屋橋店から始まりました。

 店内には椅子やテーブルもありますが、スタンディングのカウンターがメインと言って良いでしょう。ここでの最初の一杯は、みんな大好き氷なしハイボール。私と同い年のオーナーバーテンダーTさんが鮮やかに入れてくれます。

 Tさんは、常連も、お初の客も上手に受け入れてくれ、その時その時の要望でさっと美味しいカクテルを提案してくれます。ハイボールで有名な店ですが、臨機応変なカクテルも楽しみの一つです。

 お酒に合わせたチョコレートもお勧め。青森のチョコレート職人さんが手掛けている、バー専用チョコレート「アールガッド」シリーズを置いています。

 中でも特筆すべきは、その職人さんが作った「ハイボールに合うチョコ」。これ、実はアールガッドシリーズには入っていません。Tさんの特注です。アールガッドを取り入れているバーは他にもありますが、このハイボール対応チョコが置いてあるバーは日本で数寄屋橋サンボアのみ!

ハイボールを専用のチョコと共に
こちらはスプリングバンクにお勧めの味噌風味チョコ。

 そして、語りたいエピソードがあります。コロナ禍、バーは悪役のような位置付けにされ、銀座は大打撃を受けました。時短営業はまだしも、最も厳しかったのは飲食店での「酒類提供の禁止=“禁酒令”」でしょう。言わずもがな、バーには致命傷です。

 そんな時、数寄屋橋サンボアは「完全ノンアル営業」を掲げ、扉を開き続けました。お酒を並べたバックバーの前に、「KEEP OUT」を示すような黄色いテープを貼って「お酒は出しません」の意思表示。提供するのはノンアルビールやモクテル(ノンアルカクテル)です。

 私もこの時期、ノンアルジントニックやノンアルマティーニを堪能させていただきました。このジントニックは、ノンアルのジンに、ソーダは甘めのカナダトニック、そこに「ジュニパーベリー酢」も使っているそうです。試行錯誤をして生まれたこうしたモクテルは財産と言えるでしょう。

■駆けつけのブラッディメアリー『BAR東京』

 さらに銀座方面へ歩き、右手に再び路面店。『BAR東京』があります。

 自動ドアをくぐると、その中にもう一枚の重厚なドア。開いて右手に伸びるカウンターは分厚くどっしり。左手にはテーブル席も複数設置。一見して高級感の溢れるつくりで、格調高いオーセンティックな内装は「THE 銀座」のイメージです。

 こちらのお勧めはブラッディメアリー。私はトマトジュースがそれほど好きではないのですが、それでもここに来たら飲まずにはいられない。旨みと深みが合わさって、お酒の形をした冷製スープのようにも思える抜群のカクテルです。トマトジュースだけでなく、お酒が苦手な人にもこれは勧めたい。

ここでは「とりあえずブラッディメアリー」

 東京は、オーナーバーテンダーのYさん、店を中心的に回すことも多いMさん、そして女性バーテンダーのAさんが中心。最近は、最若手の男性のAさんもいらっしゃいます。ちなみに女性のAさん、今年5月の「第8回なでしこカップ」の優勝者になりました。

バーショーの中で行われた「なでしこカップ」

 重い扉、その中に広がる、しっとりしつつも豪奢なつくり。初めて行く人は緊張するかもしれませんが、接客はむしろ“極めて”フレンドリー。楽しみたい夜にも、格好つけたい夜にもお勧めの店です。

■最高のバー飯がここにある『ロックフィッシュ』

 ここで、くるりと回れ右をして、新橋方面に戻ります。シェイクを通り過ぎてすぐ、数寄屋通りの終わり近くの左手に「ニューギンザビル1号館」の入り口があります。エレベーターで7階へ。『ROCK FISH(ロックフィッシュ)』に到着です。

 カウンターはスタンディングですが、広めのテーブル席もあります。お勧めはサンボア同様、氷なしハイボール。キンキン。うん、美味い。ロックフィッシュで飲むのはこればかりです。

 そして特筆すべきは、フードメニューの充実ぶり。オーナーのMさんはバー飯に凝り凝りで、つまみの本をたくさん出しています。なかでもこれ。私がこちらに伺うのは、この「酒盗ビーフン」を食べたくなった時と言っても過言ではありません。これまで食べたバー飯の中で一番好きです。

酒盗ビーフン

 ビーフンはほかにも、アオサビーフン、しらすとジェノベーゼのビーフン、桜エビと明太子のビーフンを用意(時期によって違います)。ピザも充実しており、こちらはニシンの切り込みを使った「青森ピザ」。お気に入りの逸品です。

青森ピザ

 ほかにも「スコッチ・エッグ」など、有名なおつまみが目白押し。ハイボールと共にいただきましょう。

 数寄屋通りには、まだまだほかにも、内装がひたすら格好良い『LITTLE SMITH(リトルスミス)』や、ひょっとしたら銀座でもっとも有名な超メジャーの『バー保志』など、通いたい名店がずらり。きりがないのでやめます。(了)


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