白梅

主に熟年層に向けて、日本の古典芸能へのお誘いです。歌舞伎が中心となりますが。芸能に限ら…

白梅

主に熟年層に向けて、日本の古典芸能へのお誘いです。歌舞伎が中心となりますが。芸能に限らず、日本の古典を深掘りすることは、日本史の謎に迫ることでもあります。日本の古典芸能を深掘りすることで、「来し方」先人の思いを受け止めつつ、目指すべき「行く末」を考えていけたらと思います。

マガジン

  • 白梅の芝居見物記 歌舞伎

    歌舞伎を観劇した感想を集めました。

  • 白梅の芝居よもやまばなし

    歌舞伎を見物した際に、いろいろ感じた思いや願い、考えていることを中心にまとめました。

  • 歌舞伎とは如何なる演劇か

    歌舞伎に関して、長年考えてきた私なりの捉え方をコンパクトにまとめてみました

  • 古典解読 清和源氏の謎に迫る

    日本の歴史を考える上で、清和源氏とは如何なる氏族であるか考えることは大変重要です。そこを捉えてはじめて日本の戦国時代から天下統一にかけての動きがわかるからです。古典解読の方法に目を向けながら、日本の古典芸能から、歴史の謎に迫っていきたいと思います。

  • 浄瑠璃姫物語 附 小野のお通

    近世演劇(歌舞伎・人形浄瑠璃・能の一部)には、観ても読んでも、解読できない部分がたくさんあります。そのわからない部分に、実は歴史の裏側につながる出来事が暗示されています。それを解き明かしていくこと、それは「日本の歴史の謎」に迫ることでもあります。『浄瑠璃姫物語』と「小野のお通」から、「本能寺の変」につながる謎を追っていきたいと思います。

最近の記事

『引窓』『七福神』『夏祭浪花鑑』

辰 四月大歌舞伎 昼 <白梅の芝居見物記> 双蝶々曲輪日記 引窓  今回の舞台では、歌舞伎の義太夫狂言を見た時に今まであまり感じることがなかった、新しい感覚の舞台を拝見させていただいたように、私には感じられました。  いつも見慣れた義太夫狂言らしい味わいとは異なり、近代劇を見ている感覚の一幕とでも言えるかもしれません。それは新鮮な感覚でもあり、これからの舞台の一つの在り方といっていいのかもしれないとも思われました。  渡辺保氏がおっしゃっておられるように、前半は芝居気たっ

    • 『於染久松色読販』『神田祭』『四季』

      辰 四月大歌舞伎 夜 <白梅の芝居見物記> 於染久松色読販売 土手のお六・鬼門の喜兵衛  芝居そのものの評に関しては、「今月の芝居ー渡辺保の歌舞伎劇評」を是非参考にして頂きたいと思います。私自身、大変多くを学ばせていただきました。  と、それだけではあまりに安易かと、南北作品に関して最近感じていることを少しだけ書いてみたいと思います。  本作が1970年代の第二次鶴屋南北ブームの流れの中で復活されたこと、第二次のブームがどのような背景の中で起こってきたのかは、山本吉之助氏

      • 『三本の糸』 第二回 中村福助・児太郎の会 <白梅の芝居見物記>

         3月27日、東京国際フォーラム・ホールCにて、第二回中村福助・児太郎の会が開催されました。  会場自体が大きいのでどんな舞台になるのかとは思っていましたが、自主公演の枠を越えた、かなり大がかりな公演となっていました。  観劇後気がついたのですが、文化庁の子供文化芸術活動支援事業の参加作品だったようです。  「生きる」というテーマで、福助丈、児太郎丈が数年にわたり温めてきた企画とのことですが、実際の準備期間は1年半くらいと確かSNSでおっしゃっていたかと思います。  短い準

        • 『傾城道成寺』『喜撰』 附<歌舞伎の「世界」と「趣向」 古典とどう向き合っていくか>

          辰 三月大歌舞伎 <白梅の芝居見物記> 傾城道成寺 雀右衛門丈への思い  今回、四世中村雀右衛門十三回忌追善狂言として、傾城道成寺が昼の二番目として上演されました。  私が歌舞伎を見始めた頃は、女方と言えば六世中村歌右衛門丈と七代目尾上梅幸丈がまず上げられる時代でした。  ただすでにお二人とも華やかな美しさで魅せる女形のピークは過ぎていたかと思います。お二人に関しては、厳しさや強さを持った立女方として、または世話物における女房や品格ある立役として、尊敬の念を抱ける芸境を

        『引窓』『七福神』『夏祭浪花鑑』

        • 『於染久松色読販』『神田祭』『四季』

        • 『三本の糸』 第二回 中村福助・児太郎の会 <白梅の芝居見物記>

        • 『傾城道成寺』『喜撰』 附<歌舞伎の「世界」と「趣向」 古典とどう向き合っていくか>

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        • 白梅の芝居見物記 歌舞伎
          28本
        • 白梅の芝居よもやまばなし
          8本
        • 歌舞伎とは如何なる演劇か
          7本
        • 古典解読 清和源氏の謎に迫る
          3本
        • 浄瑠璃姫物語 附 小野のお通
          1本

        記事

          『伊勢音頭恋寝刃』<白梅の芝居見物記>を3/22投稿いたしましたが、万野に関して大きな訂正を行いました。読んで下さっている方がいらしたら、訂正お願いします

          『伊勢音頭恋寝刃』<白梅の芝居見物記>を3/22投稿いたしましたが、万野に関して大きな訂正を行いました。読んで下さっている方がいらしたら、訂正お願いします

          『伊勢音頭恋寝刃』 <白梅の芝居見物記>

          辰 歌舞伎座 三月大歌舞伎 夜  昼の部上演の本格的な歌舞伎の古典に関して、かなり気合いを入れて書かせて頂いた後で、『伊勢音頭』に頭と気持ちを切り替えることはなかなか困難でありました。  この作品が何故ここまで命脈を保ってきたのか。  どこにスポットが当たることで、今後も大切な作品として残すことが出来るのか‥。今の歌舞伎役者さんで残すことが果たして出来る芝居なのか‥。それ以前に、そもそも残す必要がある芝居と言えるのか‥。  そんなことを考えあぐねていたのですが‥。  結論は

          『伊勢音頭恋寝刃』 <白梅の芝居見物記>

          古典歌舞伎をどう見るか 『御浜御殿綱豊卿』<芝居見物記><日本人の死生観と忠義2>

          辰 歌舞伎座 三月大歌舞伎 昼 元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿  『元禄忠臣蔵』は、元禄赤穂事件を題材として昭和9年から昭和16年まで計10編11作が上演された真山青果の代表作で「新歌舞伎」と呼ばれるジャンルに属します。  その中の一編である『御浜御殿綱豊卿』が今歌舞伎座で上演されています。古典歌舞伎に興味のある方は、必見の舞台であると思います。  『元禄忠臣蔵』は発表当時あまりにも史実とかけ離れていると、青果はかなり批判を受けたようです。  その批判に対抗しきれず、戦争が終

          古典歌舞伎をどう見るか 『御浜御殿綱豊卿』<芝居見物記><日本人の死生観と忠義2>

          古典歌舞伎をどう見るか 『寺子屋』<芝居見物記><日本人の死生観と忠義1>

          辰 歌舞伎座 三月大歌舞伎 昼 古典としての歌舞伎に興味がある方には、今月の歌舞伎座での舞台は昼夜ともにおすすめしたい演目が並んでいます。  尾上菊五郎丈と片岡仁左衛門丈がどっしりと構え、歌舞伎界の中堅どころが丁寧に真摯に役に取り組んでいます。古典歌舞伎のなんたるかを考えさせ感じさせてくださる舞台だと思います。  こうした芝居を見ながら、歌舞伎とはなんだろう、古典とはなんだろうと考えるきっかけにもなるかと思われます。  今は便利に映像で簡単に見ることが出来ますが、実際にその

          古典歌舞伎をどう見るか 『寺子屋』<芝居見物記><日本人の死生観と忠義1>

          大阪 立春歌舞伎特別公演 夜

          『新版色讀売』『連獅子』『曾根崎心中』<白梅の芝居見物記> 『新版色讀売 ちょいのせ』 上方喜劇への期待  ”お染久松物”と呼ばれる作品群の一つである『新版色讀売』。  初演は文久2年(1862)江戸守田座で、今回当代の鴈治郎丈が演じた油屋番頭善六は、四代目市川小團次がつとめていました。  小團次は上方でしっかりと義太夫狂言を仕込まれた役者です。大坂の中ゥ芝居の名人達に師事しており、下積みから実力で大芝居の役者にのぼりつめて江戸下りを果たしました。「ちょいのせ」が小團次以後

          大阪 立春歌舞伎特別公演 夜

          大阪 立春歌舞伎特別公演 昼

           「大阪国際文化芸術プロジェクト」の一環として、「立春歌舞伎特別公演」が大阪松竹座で上演されました。  上方の文化芸術を世界に発信することを目的に、大阪府と大阪市が共同で今年度から始動したプロジェクトとのことです。  歌舞伎芝居が、古典に学び伝統を守りつつ、新しい世の中の活力や叡智を生み出すことの出来る発信拠点になっていけるとしたら、とても素晴らしいことではないでしょうか。  様々な取り組みによって、とにかく「行動」し「実現」していこうとする前向きな姿勢が、明日につながって

          大阪 立春歌舞伎特別公演 昼

          猿若祭 十八世中村勘三郎十三回忌追善 夜

          『猿若江戸の初櫓』『すし屋』『連獅子』 <白梅の芝居見物記> 猿若江戸の初櫓  初世である猿若勘三郎が江戸で初めて幕府の許可を得、櫓をあげてから四百年。猿若役を弱冠12才の勘太郎丈にまかせての祝儀幕。  新しい猿若の誕生を福助丈、芝翫丈ほか若手役者たちが顔をそろえて、明るく賑々しい一幕となっています。   十七世も十八世も泉下でさぞ喜んでいらっしゃることと思います。  そんな祝儀幕に対して欲張りとは思いますが、歌舞伎の弥栄を願って、さらなるブラッシュアップは出来ないものか

          猿若祭 十八世中村勘三郎十三回忌追善 夜

          猿若祭 十八世中村勘三郎十三回忌追善 昼

          『野崎村』『釣女』『籠釣瓶』<白梅の芝居見物記> 十八世が逝去し、すでに十年以上の歳月が流れているとは‥。まだ実感がわきません。役者としてはこれからという時にこの世を去らなければならなかった無念を思えば、今もって涙が出てきます。  舞台映像を見て懐かしく思い返すなどとは、まだ到底思えないのが正直なところです。  ただ、今回の猿若祭を拝見していて、新しい中村屋一門の歴史が力強く踏み出されていることを実感し、新しい時代の幕開けに立ち会っているかのごとき充足感を得ることができまし

          猿若祭 十八世中村勘三郎十三回忌追善 昼

          辰 初春 京鹿子娘道成寺

          新時代の『娘道成寺』 <白梅の芝居見物記> 衝撃的な娘道成寺  正月の歌舞伎座、前半が中村壱太郎丈、後半が尾上右近丈により『娘道成寺』が上演されました。  正月の歌舞伎座で、ダブルキャストとは言え三十そこそこの若手により、歌舞伎舞踊の大曲中の大曲が上演される。そのこと自体が、歌舞伎界にとってひとつの事件であった、といっても過言ではないと思います。  この大曲は、座頭もしくは座頭予備軍とも言える実力があってこそ、上演可能な作品である、と言えるからです。  ただ、さほどの重大

          辰 初春 京鹿子娘道成寺

          辰 国立劇場 初春歌舞伎 2

          『葛の葉子別れ』『勢獅子』 <白梅の芝居見物記> 芦屋道満大内鑑 葛の葉子別れ  いい芝居だな、と改めて思わせていただける舞台でした。  間口の広さが、大芝居としての格や大きさなどを要求する必要がなく、この芝居の本来の面白さに目を向けさせていただけたからかもしれません。  作品世界を身近に感じながら見物出来たことが、より深くその世界に入っていくことの出来る要因だったのかもしれません。  中村梅枝丈の若さと美しさ、そしてケレンを生かした演出が、丁度よく効果を発揮する芝居空間

          辰 国立劇場 初春歌舞伎 2

          辰 国立劇場 初春歌舞伎 1

          『石切梶原』 <白梅の芝居見物記> 三宅坂の劇場が休場する中、本年は初台の新国立劇場中劇場で、国立劇場の初春芝居が行われました。  音響は悪くはないのですが、歌舞伎芝居に向いているかと言えば、とてもそうとは言い難い劇場です。花道も申し訳程度に付いているに過ぎません。巡業などで地方のホールにおいて上演される芝居に近いと言えるように思います。  ただ、幕が開いてしまえば、やはり歌舞伎役者あっての芝居。劇場云々より、そこでどんな芝居が上演されるのかが重要であることを実感します。

          辰 国立劇場 初春歌舞伎 1

          辰 新春浅草歌舞伎 第2部

          『熊谷陣屋』『流星』『魚屋宗五郎』 <白梅の芝居見物記> 一谷嫩軍記 熊谷陣屋  初役で挑む同世代の若い役者達による舞台は、とてもいい物でした。  役者の芸や役者の魅力で見せるというより、作品本来の物語性に改めて出逢うような、清々しい感動を覚えさせてくれるのが大きな魅力となって、胸に迫ってくるのを感じました。  二代目の播磨屋を失ってしまった歌舞伎界ですが、この名作と改めて出逢ったような新鮮な感動を与えてくれる舞台で、この初春、必見の舞台となっていると、私は思います。  

          辰 新春浅草歌舞伎 第2部