天草騒動 「18. 富岡の士不覚の事」
凡夫が心を傾けて一途に思い込むときは、理非もわからず思慮も無いものである。六人の浪士が計略をめぐらし、森、大矢野、千々輪、赤星、蘆塚は近郷五六里を手分けして大江村の椿事を触れ回り、弁に任せて切支丹宗の信仰を勧めたので、愚民どもは希代のことだと思い込んでしまった。
天草島の十四か村の百姓が次々と大江村の治兵衛の家に集まって参拝して、広い家の中が立錐の余地も無いほどであった。
年寄どもが協議して、「このように奇瑞を聞き伝えて日に日に参詣人が増えていくからには、仮殿をつく