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更年期障害・・・体験エッセイ③

 この数年におよぶ私の心身の不調は、更年期障害のせいだったようだ。
 女性は閉経をはさんだ前後10年間ほど、女性ホルモンの急減少により、めまい・腰痛・眼の乾燥・不眠・倦怠感・憂うつなどさまざまな症状に悩まされるものらしい。更年期に関する知識と、早めに専門医療へかかることが大切だという。
 しかし、私は知識にとぼしく、代表的な症状であるホットフラッシュ(ほてりやのぼせ、発汗等)が全くなかったので、「更年期障害など無縁だ、ラッキー」と思っていたのだ。

 最初の異変は53歳、頭痛と吐き気だった。本づくりをサポートする本活工房を始めた翌年2016年のこと。単なる過労だと思っていたが、その後も時折り、ひどい頭痛が起きるようになる。すぐに眠れば短時間で消えるのだが、無理を続けると回復に2、3日かかりつらいのだ。

 そんな中、翌年は都城文化誌『霧』50周年100号の発行という大仕事に、編集責任者としてのぞんだ。
 99冊すべてに目を通して書く総括記事や、寄稿者別の索引も企画。みなさんからの原稿の入力と編集・校正、99号の続編の鼎談文も仕上げねばならない。200ページにおよぶ誌面は私のパソコンの中で作られる。膨大な作業となるが、翌年1月末の発行を厳守せねば補助金がもらえない。
 ボランティアながらも責任重大である。本活工房の新たな仕事は受けず、『霧』に専念すること1年間、心身と目の不調をかいくぐりながら刊行にこじつけた。

 そうして、消耗脱力ぎみの時に、〝都城市民会館存廃問題の再燃〟という大問題が勃発。と同時に、家族の悩ましい問題もかかえていたため、かなり精神的にはまいっていた。
 年々、頭痛の頻度は増し、倦怠感や不安感・不眠・考えがまとまらないといった症状も加わっていたが、当時は、自分に何が起きているのかよく分からないまま、つらい波の真っただ中に漂っていたように思う。

 それが更年期のせいだと自覚したのは一昨年のこと。先輩女史から
「きっと更年期による片頭痛よ。私は漢方薬を飲んだわ」
と教えられ、ネットで調べると、私はがっちり適合していた。
 この5年間、得体の知れない〝ままならなさ〟をかかえてきたが、ようやく対処法を見つけたのだった。女性保健薬として昔から有名な〝命の母〟を飲み始め、今も続けている。無理はせず早く寝るようにもした。もっと早く気づいて更年期対策ができていれば……と悔やまれる。

 女性の活躍をさまたげる要因の一つに更年期の症状があるという。統計によると、心身のつらい症状で〝昇進〟を辞退または検討する女性が4割、〝退職〟は5割に上るそうだ(働く女性の健康意識調査2021年・大塚製薬・45歳~59歳対象)。
 男性や職場での理解は浸透していないのが課題だという。更年期の女性は、仕事では活躍を望まれ、子どもの結婚や出産、家族の介護といった環境のストレスも多く、これらは症状を重くするそうだ。

 私も、家族の繰り返しの入院、娘の妊娠出産、同居の母との価値観の違いによるストレスなど幾重にも重なった。精神的な重荷をなんとかしたいと、社会教育や文化関連の役から次々に退かせてもらい、今は「図書館協議会委員」だけが残っている。
 去年は、長女の出産・育児支援で埼玉に1ヶ月半いた後、帰郷してから体調がすぐれず、半日勤務の食肉加工のパートも辞めざるを得なかった。作業場と外の寒暖差に自律神経がまいってしまい、朝は元気でも2時間後はくたくたに疲れるためだった。

 自律神経の失調により、気を失い倒れる経験も2度している。
 2019年、病院で夫の足について〝右足すね下切断〟と診断された直後に気絶。実は(糖尿病による血流不良で壊疽の危機、切断の可能性も。夫にどう言葉をかければ……)と悩み、数日間眠れていなかったのだ。夫は切断にNOを告げ、高濃度酸素療法の効果がでて、彼の足は今もある。

 2度目は昨年秋。コロナワクチン2回目接種の翌々日で熱も下がった時、台所で気を失い倒れた。右肩の先端を骨折し6週間の自宅療養。娘からは、「運転中でなくて良かったね」となぐさめられた。場所や打ち所によっては、命がなかったかもと思う。

 骨折により整形外科で骨粗しょう症の検査を受けると、私の骨密度はかなり高いと判明した。高校時代の卓球、若い頃のテニス、40代のバウンドテニス、そして魚の干物が好物という食生活の成果だろう。おかげで肩の骨折ですんだのだ・・・・・・と思うことにしよう。

 雑誌『婦人公論』で、ある女優さんが
「50代はどうしてあんなに心身の調子が悪かったのだろう。60代後半の今は、こんなに元気だ」
と語っていた。そう、女性の更年期には終わりが必ず来るのだ。それが救いである。

 きっと、私の更年期は終盤にきていて、脱出間近なのだと思う。無理さえしなければ、自律神経の調子もきっともどってくるだろう。さあ、やり残したことを、人生の締めくくりまでにぼつぼつとお片づけしていこうと思う。   
   2022年5月記

 

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