YA【握り拳の中の夢】(9月号)
島田家の週末は、土日のどちらか、家族そろって、母方の祖母の家へ遊びに行くことになっていた。
父の運転するワンボックスカーの後部座席で、郁也は寝ぐせのついた頭をかきながらつぶやく。
「友だちと遊びに行きたいんだけどさ……」
助手席の母に、サイドミラーの中でにらまれる。
母はもはや儀式とも呼べる週末の実家訪問を、欠かさない。自分が世間一般の人と同様に幸せな家庭を築いているのよ、と祖母に見せることで安心させる為に。
これは、兄、純也の持論だが、郁也もそう思う。
その高校