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「こうじ菌」と「酵母」  これを知らずして焼酎は語れぬ!!

蔵人です。
今日は麹と酵母について触れてみたいと思います。

毎回思い付きで書き留めるので話が飛び散ってすみません。
いかんせん性分なもので…(笑)

以前、和酒(清酒、焼酎)には「こうじ菌」「酵母」の2つの微生物の働きが不可欠とお話ししましたが、覚えていますか?
ここを掘り下げていくとなかなかダークな様相です。

■「こうじ菌」のはたらき

「こうじ菌」は我々人間と同じ呼吸して生きている生物です

焼酎を造る時、お米にこうじ菌をつけて【米こうじ】をつくります
その時、こうじ菌は蒸し米の表面にひっつき、酵素を出してデンプンを栄養にできる糖に分解し、それを成長と増殖に使います。

皆さんもご飯を噛んでいると甘くなると思いますが、人間の唾液にもこうじ菌のつくるものと同じ酵素が入っています。

蒸し米の表面にくっついた「こうじ菌」たち
こうやって見ると、少しかわいく見えるなぁ(笑)

あったかくてしめった理想の環境のもと、こうじ菌はどんどんどんどん増殖していきますが、あるところから人間は湿度を抑えていき、少しづつ乾燥した環境に調節していきます。

きっと「こうじ菌」からはこのようにみえているのだろう…

こうすることでこうじ菌は米の表面がさらに乾燥して住みにくくなり、
米粒中心部のまだ水分が残っているところに食い込み、
米全体にまんべんなく菌糸がいきわたります。

乾燥が続き、これ以上生きていけないという危機感を持つと
種を保存するために胞子を飛ばします。

逃げろ~と聞こえてきそう。

小さすぎて聞こえない断末魔がおき始めたくらいに、人間は

「いい麹だ…頃合いだな。」


といって水に沈めるのです。

(ここまでの過程を「製麹:せいきく」→「出麹:でこうじ、一次仕込み」といいます)

水に沈められ、水分が大量にある環境で復活しそうなこうじ菌ですが、
水中では呼吸できず生きていくことができません。

ですが、麹が作り出した酵素は水中でもデンプンを分解し続けます。
面白いのが、この酵素は

50~60度のこうじ菌も人間もやけどしてしまうようなお湯の中でも普通に作用すること。

主なくして働く酵素はいったいなんで?と疑問を抱かずにはいられません。

■ここで登場「酵母」

仕込水には「酵母」をいれています。
酵母は酸素がなくても生きていくことができるので、
水中であろうがへっちゃらです。

酵母は自分でデンプンを分解する能力はほとんど持ち合わせていません。
こうじ菌なきあと、どんどん分解されてできた糖をちゃっかり食べてアルコールと二酸化炭素を吐き出します。

ちなみに私は糖もアルコールも取り入れます。

こうして水の中の栄養は酵母の成長と増殖に使われ、糖分が減っていく代わりにアルコールの濃度が上昇していきますが、アルコール濃度が高くなるにつれて、

酵母は自身の出したアルコールによって成長が阻害され、やがて死んでしまいます。


隆盛を極めた酵母一族も盛者必衰、いつまでも健全にアルコールを出すことはできません。
これを絞ると清酒(日本酒)になり、蒸留すると焼酎になります。

ちなみに酵母はいきなり大量の糖を与えられるとたべきれず、
消化不良をおこしてアルコールをたくさん作れません。
原料のでんぷんを適度に糖に分解しながら酵母に与えるこの発酵方法は

「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」

といわれて、清酒が他の醸造酒(ビールやワインなど)と比べてアルコール度数が高いのはこの方法のおかげです。
世界的に見ても日本独自といえる画期的製法なんです。

目に見えない微生物を巧みに扱う先人の知恵は本当にすごいですよね。
微生物だよりながら、なんとも残酷な人間の所業。
お酒は有難く頂かなれければと考えさせられますね。



編集担当より

今回の「こうじ」と「酵母」の仕組みは、お酒業界では必ず学ぶこと!
でも、初めはよく理解できず、頭の中はぐちゃぐちゃでした(笑)
はっきりと目に見えるものではない、微生物を知るって難しいな‥
と思いました。

でも、こんな風にイラストになるとすんなり入ってくるんだな~(笑)
まだまだ、焼酎の世界は奥深い…

みなさんと一緒に編集担当も毎回、学んでおります!
理解が深まったところで、本日も美味しい焼酎を飲みましょう!



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