東京都練馬区で300年から続く農家の十?代目。 気がつけば就農して40年からになります。 紆余曲折を経てオッサンからジイサンになろうとしているとき、そろそ人生の終盤戦、冥土のみやげになにか残せるものはないかと考えまたところ、縁あって40歳代のころからいくつかの新聞や雑誌に寄稿させていただい文章があることに気づき、これをまとめ、どこかに掲載できないかと模索していたところ、娘から「note」なるものがあると聞き、よっしゃぁ〜 一朝挑戦してみるか!と相成った次第です。 さてさて
美味しいものを食べたい。 そう思ったとき、まず頭に浮かぶのはどんなことでしょう? 雑誌で紹介されたイタリア料理店。 有名シェフのいるフランス料理店。 あるいは行列のできるラーメン店でしょうか。 素材を活かし、さらにおいしく仕立てあげてくださる料理人の皆さんには頭がさがるばかりです。 さらに畑に足をはこぶと、夜露のついた朝摘みのトマト、キュウリやレタス。 畑で収穫したばかりのトウモロコシ、一皮むいたときの黄金色の輝き。 どんな料理でも、まず基本は選りすぐられた新鮮な素材
虫に手を焼く野菜作りをしていると、なんといっても害虫に手を焼く。「キャベツにつく虫は?」と尋ねると十中八九「アオムシ」という答えが帰ってくる。確かにアオムシもキャベツにとっては厄介な存在ではあるのだが、比べものにならないくらい被害を及ぼすのが「コナガ」や「ヨトウガ」といった蛾の仲間。 ご承知のとおり、かれらは夜行性で夜な夜なキャベツ畑のうえを飛び回り、しこたま卵を葉に産みつける。 一週間もすると、ふ化した幼虫がバリバリと葉を食い荒らすのだが、昼間は天敵の鳥などから身を守る
豚を迎え入れる (2007年当時)今年5月上旬から、練馬区立八坂中学校1年生の農業体験授業の一環で豚を飼いはじめた。 兼ねてより給食の食材として野菜を納入してきた学校である。高畠校長はじめ、飯島栄養士さん、学年主任の先生らと事前打ち合わせのすえ一日の計画をたてた。 収穫したほうれん草をすぐさま学校に届け、給食の材料として使うなど野菜収穫体験のあと、豚を迎え入れる「入豚式」なる儀式を行った。 カゴに入れられた20㎏ほどの子豚が生徒たちの前にやってくると、女子生徒たちから「か
都市農業振興基本法が制定され、6年になろうとしている。 高度経済成長期、バブル期に都市農地は無用の長物と扱われ、さっさと宅地にしてしまえとまでいわれ続けてきた。 次代の代わり際、日本農業新聞に寄稿したのが以下の原稿。 待たれる都市農業振興基本法の制定 「都市農業振興基本法」が議員立法により今国会で制定される見込みだ。私たち都市農業者が待ちわびた法律でもあり、是非とも早期成立を求めたい。 思い返せば、昭和から平成にかけてのバブル景気のころ、都市の農地は低未利用地とみなされ
人生にはいい出会いがあるもんだ1999年初冬、突然取材の話が飛び込んだ。 その人の手を見ることで、これまで歩んできた人生を垣間見ることはできないか?「手の記憶」と題し特集を組むことになったので、取材させてほしいとのことだった。 数日後、朝日新聞の大村美香記者が農園にやってきた。もちろん初対面。物腰やわらかくフレンドリーな印象。これまでやってきた農業の話をして欲しいという。 こんなことが記事になるのかなと思いつつ、なんとなく話し始めた。話すごとに質問が帰ってくる。なにか誘導
日本農業賞受賞に際し、受賞者を代表し一言お礼のご挨拶を申し上げます。 早春のうららかなこの良き日に身に余る栄誉を頂戴し、心から喜びをかみしめています。 いま、食に関する問題がなにかととりざたされる中で、食の安全・安心についての関心が高まっています。 一方、地球温暖化など環境への不安も広がっています。 これまでの20世紀における資源消費文明社会から環境と・食料が21世紀における世界的な重要課題となり、持続可能な社会のあり方が問われています。 私たち農業者は、古来営々と食
農作業も一段落のある晩、あの有名な岩波の大辞典「広辞苑」をめくっていたところ、あることばに目がとまった。・・・と同時に思わず息をのみこんでしまった。 百姓・・ ①一般の人民。公民。 ②農民 ③田舎ものをののしっていう語 そんなことはないはずと、翌日近所の図書館へ直行して何冊かの辞書を引いてみると、三省堂の「大辞林」、講談社の「日本語大辞典」にも同じような内容が書かれていた。 続けて開いた小学館の「大辞泉」にも ①農業に従事する人。農民。 ②農業をすること。 ③あか抜け