第1話 「百姓」創権の運動を
農作業も一段落のある晩、あの有名な岩波の大辞典「広辞苑」をめくっていたところ、あることばに目がとまった。・・・と同時に思わず息をのみこんでしまった。
百姓・・
①一般の人民。公民。
②農民
③田舎ものをののしっていう語
そんなことはないはずと、翌日近所の図書館へ直行して何冊かの辞書を引いてみると、三省堂の「大辞林」、講談社の「日本語大辞典」にも同じような内容が書かれていた。
続けて開いた小学館の「大辞泉」にも
①農業に従事する人。農民。
②農業をすること。
③あか抜けない人や情趣を解さないひとをののしっていう語。
そうだ。そうだったのだ。新聞や放送では確かにあまり使われていないところをみると、どうやら「百姓」ということばは差別用語、放送禁止用語にあてはまるらしい。
そういえば、どこかの元農家の親父が酒の席で話していたのを思い出した。
「俺は人に百姓とだけは言われたくなかった。百姓をやめたくて造園会社を興し、社長になったのだからと・・・」
さてさて、全国の百姓を誇りとし、このことばを勲章とする多くの百姓貴兄はどう感じられただろうか。百姓が「田舎ものをののしっていう語。あか抜けないダサイやつの総称」の意のままにしておいてよいのであろうか。
俺は提案したい。
権威主義の象徴、良識の府と豪語する大辞典のすべてから③の訳を排除して「自然を慈しみ、ひとびとの生きる糧を生みだす仕事」とでも改めてもらう運動を起こしてはいかがかと。
(百姓天国1997年4月寄稿)
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