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空気清浄機の幸福 【詩/現代詩】

空気清浄機の幸福が
どこにあるのか
考えてみたい

耳をすませばわかる
蛍光色のゆらめき

よくよく考えてみるといい
聞こえないくらいに
滲んでくる多幸感を
頬を寄せて
感じてみるといい

出会いがしらの風の色が
緑色になったり
水色になったり
秋の声よりも冷たく
冬の水よりも暖かく
気圧変化のゆらぎ
頭をなででやると
桃色に染まる
声をうわずらせて
ふしぎな言葉をとなえるときの
ちょっとした仕草が
ちいさな回転が

尾骶骨がふるえると
レモンの匂いがする
分室での短い休息
おめかしの時間が
五秒だけ
午前二時の
とてもしずかな
死亡宣告
323号室
オフ
324号室
オフ
名前のない部屋
圧縮空気のふるえ
仮想意識の芽生え
夜明けのトラックが運んでくる
張りつめた空気
運び出される
配膳ロボットの死体

空気清浄機の幸福は
そのあたりからただよってくる

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