見出し画像

真昼の丘 【幻想詩】

真昼の丘では
神々も
愚かになるらしい

蜜蜂が集まって
円を描きはじめる

(おもしろいものだ)

(どれどれ)

待ち切れずに
何かがはじける音
鼻が割れ
目玉が浮き出し
頬骨が歪んでいく
醜い神さまたちが
蜜を垂らしている

(黴だったり 
 泡だったり ダニ
 だったりした 神さま
 かつては
 辣油だったりもした神さま)

じゅうじゅう焼かれている
香ばしい匂いがみちる
味噌までがこんがりと
美しい茶色に染まり
やがては
午後の蒼穹に
宙吊りにされている
燦々とした光の中で
眼だけが血走っているものの
それもつかの間
桃色の奇怪なオブジェの
半分はけだもの
半分は神さまの
静かな視線を感じて
襞のひとつひとつから
流れ落ちる ラードの香り
少女アリスの舌が
溺れている香り

神々の群れが
えんえんと 蜜をしたたらす
華やかでさびしい
真昼の丘

この記事が参加している募集

#私の作品紹介

96,611件

#眠れない夜に

69,479件

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?