銀の輔

路上ペンギン写真家。東京の街角にペンギン(銀の輔)を置いて写真を撮ってます。 http…

銀の輔

路上ペンギン写真家。東京の街角にペンギン(銀の輔)を置いて写真を撮ってます。 https://500px.com/p/shiosenbe?view=photos

最近の記事

元海の街

 有明界隈の埋立地は草茫々の時代からたまに訪れていた。まだホンダレブルという250ccバイクに乗っていた頃だったので、日曜日はゴーストタウンになる豊洲から新木場や有明方面は、信号も少ないし、近所で快適に走れるエリアだったんだ。秋になるとススキを取りに行ったりもしてた。  ただ当時の有明は革の上下でまっちり決めた走り屋たちがビュンビュン走ってて、結構なギャラリーも集まって、そしてちょっと離れた陰にパトカーも待機してる、アメリカンタイプのバイクなんか鼻にも引っ掛けない、そんな隠れ

    • 街場のコーヒーゼリー

      平日の昼下がり、まぁ朝っぱらでもいいんだけど、ご近所の集会所と化している喫茶店が好きだなぁ。昭和レトロ(大嫌いな言葉)じゃなくても下町風情(もっと嫌いな言葉)じゃなくても良くて、「◯◯さんまだ来ない?」とかブツブツ言いながらおばちゃんが入ってきてね、「アタシ冷たいの」な〜んて注文する訳です。  案外年格好の似た女性店主なことも多くて、お客さんと何が違うかっていうと、普段着っていうよりちょいと小洒落た小綺麗な服装でね、男性店主だったらベストなんか着てる。さらに言えばご夫婦ってこ

      • カト

        毎度お馴染み京セラ美術館のカフェで昼酒宴をした時。京野菜満載のワンプレートは必ずお品書きが付く。食材の産地、パンやサルシッチャなどの加工品、製品の時には店名が記載された、いわばヒトサラ履歴書みたいなもん。 これまであまり気に留めず、ただ美味しく食べてた漬物(大抵は刻んだしば漬け)のお品書きを初めてちゃんと見た。ちょびっとなんだけど紫蘇の風味、塩分を控えた味わいがクラフトビールにも合うんですわ。  加藤順漬物店ねぇ…、住所を見たらここから徒歩圏内。んじゃ行ってみようと、ほろ酔

        • 無思想町徘徊紙 Pしんぶん その9

          今日も銀座に行かなくちゃ  飲食店やブランドショップや喫茶店は沢山あるし、ありとあらゆるお店がひしめく銀座ですけど、どんな街にも、そのひとつしかない店やスポットってのがあるから、きっと銀座だってあるはずなんです。  そう思ってパッと思いつくのは、一丁目の青汁スタンド。戸建ての小さな店で、売りますものは青汁オンリー。実は僕もご贔屓でして、青汁が美味しいこと、季節で甘味や風味が変わることをここで知りました。なかなかの人気店で、早朝、店先に大きな外車を停めて、ササッと飲みに来る紳

          心に響く言葉

          最近一番心に響いた言葉  断捨離は、断じて捨てない離さない。  そこまで意固地に処分しない訳じゃない。蔵書は10分の1にしたし、卒業アルバムや文集、アルバムは全て捨てた。高校時代からためこんできた映画のチラシや芝居の筋書き、30数年定期購読してきた月刊誌、アホみたいに買い続けたバッグも服も随時処分してる。  でもそれはたまたま置き場所が無いから捨てた訳で、身辺整理だの終活だのが理由ではない。そもそも人生の終わりはいつ来るか分からない。明日かも知れないし何十年後かも知れない

          心に響く言葉

          縁を結ぶ図書館

           深川の八幡様とお不動様の間に『深川えんみち』って複合福祉施設がありましてね、タウン誌深川の編集部から聞いてはいたんだけど、こないだ散歩の達人で取材したんですよ。そこにエンミチ文庫という私設図書館が出来たんです。 各棚のオーナーさんは、みんなに読んで貰いたいと思う本を、工夫を凝らして並べています。ひとつの棚は小さいけど、個性豊かな小宇宙が詰め込まれてる。マメな人はしょっちゅう本を入れ替えに来てるんですよ。その辺のことは散達に書いたんですが、もう一目惚れして、すぐ借りちゃったん

          縁を結ぶ図書館

          無思想町徘徊紙・Pしんぶん その8

          荒川土手に行きましょう どこぞの街を歩いてた時、ふと通り過ぎたバスの行く先表示板に「荒川土手」という魅惑の四文字を見て、これは行かねばならぬ、乗らねばならぬと思い立ったら東京駅丸の内側北口停留所。午後になれば一時間に一本あるやなしやの貴重路線の人となり、数人の始発客を乗せてオフィス街をゆるり走り出す。  大手町から神田橋を渡って錦町と進めば、会社員を主として意外と乗客は増え始め、駿河台を登って御茶ノ水橋に着くと吊り革客も多数となり、こんなに人気なら増便すりゃいいのにと、混み

          無思想町徘徊紙・Pしんぶん その8

          枝豆の季節です

           豆はようがす。いよいよ枝豆の季節になってきた。まだちょっと高いし、旬の頃に比べると味も香りも薄いけど、最初から最後まで食べたい派です。  最近は枝無し袋詰めタイプが幅を利かせて、こっちも楽だからつい日和っちゃう。でも少し安かったし、何だか沢山ついてそうな気がして、久々に枝付き枝豆を買った。テーブルに新聞紙を広げて、キッチンバサミでチョキチョキやってたら、ふと親父のことを思い出した。いつからそうなった記憶もないけど、我が家で枝豆を切るのは親父の役目だった。おふくろが夕飯の支

          枝豆の季節です

          Pしんぶん その7

          確定申告への道すがら思い出すことなど  旧聞で恐縮ですが、正しき個人事業主として確定申告に行って来ました。豊島税務署は西池袋の立教大学近所にあるので、池袋駅から歩いて行くんです。西池通いはもう四十数年前のこと、そりゃ街も変わります。  池袋駅から北口を出ると、かつて何軒もあった洋服屋は激減し、読めない看板の食材店やガールズバーの呼び込み女子が増え、そうだよ、池袋演芸場だって一番街の通りじゃなくて、その裏の細い道に入口があって、無限に続く階段を登って行ったなってね。その細道の

          Pしんぶん その7

          Pしんぶん その6

          神社長の町  勝ってくるぞと板橋区でお馴染みの、仕事終わりはすぐ北区と並んで二十三区屈指の魅惑タウンでありますよ。池袋辺りから区内随一の幹線道路たる川越街道を走ることしばし、幸せに包まれた板橋区幸町があるのです。幸町ですよ!東京でここと勝負できるのは、台東区寿くらいでしょうか。でもね、こちらには神様がついてるのだ。しかも社長さん。株式会社ゼウスですから、創業者にして未来永劫社長という万全の組織体制。   静かな住宅街の真ん中を貫くさいわい通りの、無闇に背の高い建物もなく、

          Pしんぶん その6

          無思想町徘徊紙 Pしんぶん その5

          横丁で大きいってどういうこと? 普通◯◯横丁と言えば、路地に毛が生えたような狭い道だろうと思うもの。かのプー横丁もきっと小ぢんまりした趣き深いとこに違いない。だから「大」を冠するのが既におかしいのに、「通り」まで付けちゃった大横丁通り実業会は、本郷三丁目駅近く、見目麗しき復興建築エチソウビルのちょい先、本郷通りからひょいと入って、抜ければ壱岐坂が白山通りにぶつかるちょい手前に出る一本道は、確かに横丁には少し広いけど、だからって大横丁かなぁ。  でも歩道にはプレート街路樹脇

          無思想町徘徊紙 Pしんぶん その5

          Pしんぶん その4

          ご近所駅前東西南北守護神巡り いにしえより国家中枢の四方は堅固に守らねばならない。鬼門だけ押さえりゃいいってものじゃない。ので東京もきっちり東西南北を冠する駅が守護神ばりに守ってる…かどうか知らないけど、そういうことにPしんぶんが決めた。ので、お手軽にサクッと巡るのであります。   東と言えば東京駅。世界中から老若男女が集結する玄関口、やや集まり過ぎなこの駅を睥睨するのは、我らが鉄道の父、井上勝。駅舎復原工事の時には、消滅か?と思ったけど、全日本鉄道的に神様ですからね、一見

          Pしんぶん その4

          東京逍遥 その4

           放ったらかしネガが酸っぱい臭いがし始めたら気をつけた方がいいよって教えてくれたのは、鳥越の洋食屋さんのご主人。下町の写真を撮り続けてる凄い人。本棚の上に積んだネガ箱を見るたびに、思い出すんだけど、まっいいかって後回しにしてきた。でも年明けはやる!って年末に宣言したので、平井の写真展でお世話になった恵比寿の写真屋さんに持ってった。「何本ですか?」、「300本です」。全て90年頃から撮ってきた銀の輔の街写真だ。おじさんが笑ってた。ナンバーふってないネガも結構見つかって、今度は僕

          東京逍遥 その4

          東京逍遥 その3

           去年見たかったけど間に合わなっかた『ファースト・カウ』をシネ・リーブルで見ねば、あぁこの映画館も随分久し振りだなと思ったんで、久し振りついでに池袋北口の伯爵に行った。初めて行った深夜、その怪しげで謎めいた雰囲気と客層に気圧され、東京では珍しいストロングスタイルのコーヒーを飲みながら、聞き耳を立てるひとときだったんだ。  でも朝は流石に普通で、それどころか喫茶巡りっぽい若者や外国人観光客が盛んに写真を撮っていて、あの頃だったらひと悶着起きるよなと思いつつ、エンドレスで流れる

          東京逍遥 その3

          東京逍遥

           神田明神は親父の実家が氏子で、両親も僕らもここで結婚式を挙げたこともあり、ご近所の氏神様と共に初詣に行くんだけど、今年は控えているもので、松が取れた今日、新年のご挨拶に。そもそも三が日に明神様へ行くには決死の覚悟が必要で、仕事始めを過ぎないと、ここで一日が終わっちゃうんだよね。なので、本日ゆるりと。  お昼をどうしたもんか?と思ったけど、カミさんの鶴の一声で池之端。外界から遮断された静かで穏やかな二間ぶち抜き空間、炉が切ってある奥の床の間には伊東深水の美人画掛け軸二幅、手

          東京逍遥

           お口くちゅくちゅモンダミン♪のメロディを聞いて降り立つ山手線神田駅から、ひょいと浮世小路を折れ、小津和紙の「久」が輝くビル方向、だからといって百兵衛さんのように長谷川町に出る訳もなく、かといって久蔵みたいに椙森神社にも行かず、伊場仙で国芳にも会わずに小舟町パークレットで、子どもたちが遊ぶ公園を窓越しに見ながらサワードウとクラフトビールという寸法。ごめんねマツムラ。  冷たい風にほろ酔いの心持ちよくうかうかと、昭和通りをひとまたぎ、神田駅から垣間見た日本橋を渡りつつ、揺れる