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オンライン留学後の人生とキャリア ―オンラインで海外大学院に行こう! マガジン #30

こんにちは。
岸 志帆莉です。

このマガジンでは、「オンラインで海外の大学院に行く」というテーマで定期的に情報をお届けしています。

ところで大学院への進学を考える方にとって、気になるのは大学院生活の「その後」の部分ではないでしょうか。

進学する前と後ではなにが変わったの?
大学院に進んでよかったことは?(逆にデメリットは?)
大学院の学びをその後どんなふうに生かしているの?

もちろん卒業後の道のりは十人十色ですが、オンライン留学に関してはいまだ社会にロールモデルが少なく、なかなかイメージしづらい現状があります。そこで今日は私自身の「その後」をシェアしたいと思います。あくまで個人の体験ではありますが、ひとつの例になればと思います。社会人として、親として、あるいは個人として、大学院での学びを生かせる場面はたくさんあります。

キャリア面の変化 ―仕事への生かし方

私は大学院を卒業後、会社員をしながら文筆業や大学での研究に携わってきました。いずれの立場でも、大学院で学んだことが役に立っていると感じます。

会社員としては、大学院での専攻が仕事に直結していたこともあり昨日学んだことを今日生かせる場面がたくさんありました。教育の世界では日々さまざまな実践が積み重ねられていて、学校の先生方と会話しているとそれらの実践がしばしば話題になります。入社当時はそんな会話についていくことすらできませんでしたが、大学院の学びを通して次第についていけるようになり、さらには自分から情報提供できる立場へと成長していきました。

そうしたなかで社内での立ち位置も変わっていきました。重要なコンペにプレゼンターとして参画したり、リサーチの知識を生かして社内調査の取りまとめを担ったり。学んでいるそばから成果を還元できることは大きな喜びでしたし、なによりチャンスが来たときに臆せず引き受けられる自分になれたことが私にとっては大きな変化でした。

さらに文筆業や大学での研究など、できることを少しずつ広げていった結果、社会での自分の居場所も広がっていきました。「自分はいったいどこへ向かってるんだろう? 」と思うこともありますが、それも含めて楽しいと感じていますし、なによりさまざまな形で求めてもらえるのはとても嬉しいことです。大学院への進学をきっかけに今の生き方につながる一歩を踏み出せたことは、とても幸運なことだったと思います。

親として ―家庭生活への活かし方

家庭生活や子育てに生かせることもたくさんあります。私自身は教育学を専攻したこともあり、子どもとの関わりにダイレクトに活かせる場面はたくさんあります。子育てをしていると日々選択の連続ですが、さまざまな情報に惑わされず、学んできた理論や実践をもとに意思決定できている実感があります。もちろん我が家はまだ子どもが小さいので今後いろんなことが起きてくるとは思いますが、知識があることで精神的な備えになっていると思います。

これからの子どもたちは、対面とオンラインを織り交ぜながら学んでいくことになります。オンライン授業を通して今の教育のあり方に触れることは親にとっても意義深いことです。

親が最新の技術に触れることで子育てにもよい影響が出るということは研究等でもわかっています。ハーバード大学の研究によれば、アメリカ国内の「イノベーター」(ここでは特許取得者)の多くは、幼少期からイノベーションに触れる機会が多い環境で育った人達だそうです*1。たとえばシリコンバレーのようにイノベーションが盛んな都市で育ったとか、身内に特許取得者がいる環境で育った子どもたちは、将来的に自身もイノベーターになる可能性が高いと示唆されています。

イノベーションといっても最先端の技術等である必要はありません。多様な人々と触れあうことも一種のイノベーションです。親自身がそうした環境に親しむことで、子どもの成長にもよい環境を整えることができます。近年「ロスト・アインシュタイン(失われたアインシュタイン)」といって、格差や制約により才能を生かせず大人になってしまう子どもたちの存在が問題になっています。しかしそうしたリスクを抱える子どもたちも、環境さえ整えば才能を開花できる可能性が高まります。さきほどの研究によれば、身内に特許取得者(とくに女性)がいる女の子は、将来自身も特許を取得する可能性が高まるそうです。身近な大人や育った環境は子どもにとってそれだけ大きな影響を及ぼすんですね。私たちの子どもをロスト・アインシュタインにしないためにも、まずは私たちがイノベーションに親しんでいたいものだと思います。

さらに親が学び続けること自体、子どもにとって何よりすばらしい教育になります。21世紀の社会はより複雑さを増していきます。子どもたちの7割がこの世にまだ存在しない職業に就くといわれる時代です。今後の社会を生き抜くうえで最も必要なのは学び続ける力だと私は思います。学び続ける力こそ、親が子どもに残せる最大のギフトかもしれません。たとえ大学院まで行かなくとも、親自身が楽しみながら学ぶ姿を見せ続けることができれば、子どもたちはその背中から大切なメッセージを受け継いでいくはずです。

自分自身とのパートナーシップ

このようにオンライン留学は様々なメリットをもたらしてくれましたが、私にとっての最大の収穫はもう少し内面的なところにあったと思っています。すこし大きなお話になってしまいますが、それは人生を生きていく上での基盤となる自分自身との信頼関係(パートナーシップ)です。

これまでにもお話ししてきたとおり、働きながら学習に向かう日々は試練の連続でした。自分の能力を疑ったことや、最後まで走り抜けられないかもしれないと思ったこともあります。そんなピンチを幾度も乗り越えてたどりついたのは、より深い自己理解と、自分自身に対する信頼でした。自分をより深く理解し、自分自身とよりよい関係を築けるようになったことこそが、私にとって大学院生活から得られた最大の収穫です。

この部分については、下の記事でさらに詳しく振り返っています。

今日は私自身の体験を振り返りつつ、オンライン留学の「その後」をテーマにお話ししてきました。皆さんがそれぞれに今後をイメージする一助になればうれしく思います。

参考文献:*1 Bell, A., Chetty, R., Jaravel, X., Petkova, N., & Van Reenen, J. (2019). Who becomes an inventor in America? The importance of exposure to innovation. The Quarterly Journal of Economics, 134(2), 647-713.

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