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これからオンライン留学に踏み出すあなたへ ―オンラインで海外大学院に行こう! マガジン #46

こんにちは。
岸 志帆莉です。

このマガジンではオンライン留学というテーマについてさまざまな角度から綴ってきました。

「オンラインで海外大学院に学ぶ」といういまだ謎に満ちた学びの世界について、少しでも知っていただくきっかけになったならうれしく思います。

私がこのマガジンを連載してきた背景にはいくつかの想いがあります。今日はそんなところを振り返りつつ、これからオンライン留学に踏み出す皆さまへ応援のメッセージをお送りしたいと思います。

テクノロジー×学びに目覚めた原体験

このマガジンでも繰り返し述べてきましたが、私は「オンライン学習はあらゆる人に優しくインクルーシブな学び方」だと思っています。今回このマガジンを書こうと思ったのは、そんなオンライン学習のよさをひとりでも多くの方に知っていただきたいという思いからです。

冒頭の考えに至った背景には、子どものころの原体験があります。いきなり個人的な話になりますが、私は幼いころ東京から西日本の小さな港町に引っ越しました。その町には英語と数学を教える個人塾がいくつかありましたが、都会にあるような全教科に対応した予備校はありませんでした。そのため英語と数学以外は学校の授業を除いてほぼ自習に頼るしかありませんでした。都会に暮らす子たちに比べて教育面でも情報面でもひしひしと後れを感じるなか、頼りになったのが当時少しずつ登場しはじめていたオンライン書店です。

はじめてオンライン書店を利用したときのことをいまでも覚えています。半信半疑でウェブサイトの注文ボタンを押した数日後、ポストを開けたら本当に書籍が届いていました。都会の子たちが使っている本が、こんな辺境の町までたった数日の間に届いてしまうなんて――。その事実に驚き、いたく感動しました。このときに直感したことがあります。いずれ本だけでなく、学びそのものがインターネットで瞬時に届くような時代が来るかもしれない。世界中どこに住んでいようと、都会に住んでいようと地方に住んでいようと、たとえ経済的に恵まれなくとも、誰しもが質の高い教育を平等に受けられる時代が来るかもしれない――。

皆さんもご存じの通り、その直感は現実のものとなりました。今やインターネットで学校にすら通える時代です。社会人になり、オンラインで大学院にまで通えることを知ったときの驚きと興奮。それは、高校時代に自宅のポストにオンライン書店から本が届いたあのときの感動と重なります。私にとってオンラインの可能性を信じるに至ったひとつの原体験であり、このマガジンを書くに至った熱狂の原点でもあります。

オンラインが当たり前になった今でも、日々その威力を実感しています。とくに子育てがはじまってから、インターネットの力を実感することがさらに増えました。

出産するまでは、都内を中心にさまざまなイベントや講演会などに出かけていました。しかし子どもを産んだ途端、そういうものにすっかり縁遠くなってしまいました。というのも、ビジネスマン向けのイベントや講演会等は夜間に都心部で開催されるものが多く、子育てをしているとなかなか参加することができないのです。ライブやコンサートなども同様です。そういった輝かしいものごとすべてが別世界の出来事になってしまったようで、世の中から取り残されたような感覚を抱きました。

そこへコロナ禍をきっかけにリモート社会が到来しました。イベントなどが軒並みオンラインに移行し、さまざまな集まりや勉強会にもオンラインで気軽に参加できるようになりました。感染症の脅威が一刻もはやく落ち着くことを願う一方、自宅にいながらこれだけ多くの機会につながることができる時代が来たことに純粋に驚きを覚えたものです。
 
このマガジンはどちらかというと、さまざまな制約によりチャンスにつながりにくい人々の存在を胸に書きました。育児や介護といった大切な役割を抱える人や、地方や遠隔地に暮らす人。あるいは何かしらのハンディキャップを抱える人や、大きな挫折を経験した人――。私自身、過去に地方に暮らしながら都会との情報格差を身にしみて感じたり、失業や体調不良などの挫折も経験してきました。もちろん災害やコロナといった社会問題も私の価値観に強く影響しています。さらにマイノリティとして外国に暮らしたことや、子育てがはじまってから心のどこかで感じるようになった、社会からどこか切り離されたような感覚――。それらを現在進行系で経験しているひとりの人間として、自問自答を続けながらマガジンを執筆してきました。

オンライン学習はチャンスを得にくい人たちが機会につながり、学びを通して生活の向上を図ることを可能にする手段だと私は信じています。海外の大学で学ぶことがすべての人にとって正解だとは思いませんが、このマガジンを入り口にひとりでも多くの人がオンライン学習と出会い、よりよい人生への一歩を踏み出すきっかけとなれば。そのような思いで執筆してきました。

「駅チカ」に住むからこそ遠回りを

最後に、ここまでお読みくださったあなたへひとつお伝えしたいことがあります。オンラインで学んでいるからこそ、遠回りや途中下車も大切にしてほしいということです。

今では耳にしない日はない「オンライン」という単語ですが、その語源は意外と知られていません。オックスフォード英英辞典によれば、オンライン(online)という言葉はもともと「鉄道の沿線上」を意味しました。語中の「ライン」とはすなわち鉄道の線路のことです。現代だと、都心部に暮らす人たちにとっては「駅チカ」に住むことや、地方の人にとっては鉄道駅のある町に住むような感覚に近いかもしれません。

この語義が生まれたのは19世紀頃と考えられていますが、当時「オンライン」に住む人たちはある種の特権階級と考えられていました。鉄道でさまざまな場所にアクセスすることができ、情報をいち早く得ることができたからです。人々の行き来があるため、出会いやネットワークも増えます。オンラインに暮らす人たちはとても恵まれた人たちと考えられてきました。

しかし21世紀の今では、私たちみんながオンラインの住人です。今の時代、インターネットに接続さえすれば瞬時に世界中の情報にアクセスできます。実際に移動しなくてもいろいろな場所に行き、いろいろな人に会うことができます。それを人生に生かさない手はありません。

一方、途中下車をすることで見える景色もたくさんあります。私自身、遠回りによって得られたものはたくさんあります。失業を経験したからこそ教育学というテーマと出会い、オンライン留学という得難い経験をすることができました。回り道の途中で出会った景色が将来につながるということはあるものです。そこで起こった出来事があなたのその後を方向づけるかもしれません。そこで出会った人々が将来あなたを助けてくれるかもしれません。そして長い目で見たとき、人生を何倍にも豊かに広げてくれるかもしれません。そう考えれば、遠回りも悪くないものだと感じます。

このマガジンでもお伝えしてきたとおり、社会人にとって最高の教室は社会のなかです。オンラインで学んでいるからこそ、積極的に外へ出て、社会に生きながら学んでいただきたいと思います。

大学院はゴールではなくはじまり

最後にもうひとつお伝えしたいことがあります。

大学院を修了することはゴールではありません。むしろはじまりです。

これも以前にお伝えしたことではありますが、単に大学院の卒業証書を手にしただけではきっと何も変わりません。それはただチケットを手にしただけの状態にすぎないからです。そのチケットを持ってどこに行くか、そしてどのように行くかが最も大切なことです。

私は大学の卒業証書は青春18きっぷのようなものだと思います。そのきっぷを手にしただけでは、自分が果たしてどこへ行けるのか、あるいはどのようなルートで行けるのかもわかりません。でも歩き出せば必ずどこかへ行けます。目的地へ行けるかもしれません。もともとの目的地よりもっと素晴らしい場所に行けるかもしれません。あるいは想像すらしなかったような場所へ辿り着けるかもしれません。すべてはその後の行動にかかっています。大学院進学とは、その長い旅路へのチケットを手に入れることだと思います。

私自身、大学院を卒業した後も学ぶことは尽きません。とくにオンライン学習の世界は進化が早く、日々さまざまな変化が起こっています。そして新たな可能性も増え続けています。私自身、そんなオンラインという世界の留学生であり続けたいと思っています。

なおマガジンの執筆にあたっては、できるだけ最新の情報に留意し、取材や調査を重ねて正確な内容を心がけてきました。しかしながら、もしも誤記や誤った情報などがあった場合は、すべて筆者である私の浅学の責任によるところです。なにとぞご指摘を仰ぎたいと思います。

大学院が終わった後も、学びは一生続きます。その旅路が皆様にとって楽しく実り多きものであることを陰ながら願っています。そしてこのマガジンをお読みくださった皆様がどのような道を選択されるとしても、その未来が晴れやかなものであるよう心から願っています。

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このたび、私のnoteで連載してきた「オンラインで海外大学院に行こう!」マガジンが書籍になりました。

この本では、マガジンからの選りすぐりの記事に加え、新たな書き下ろしコンテンツやワークシート等を豊富に追加しています。皆さまの行動を全力で後押しする内容へとパワーアップしていますので、よろしければチェックしてみてください。
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