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塩野秋
2021年9月5日 15:42
リリの電話 白山リリは町でいちばん嫌われている女の子だ。果樹農家がいくつか並ぶ山の付近の、誰が見てもボロ小屋としか思えない小さなアバラ小屋に住んでいて、片親で父親は酒浸りで、職も就かない、町の中でも有名な鼻つまみものだ。 それなのに、リリはクソがつくほど美少女だ。 亜麻色の長くて軽やかな髪、長いまつ毛に囲われたガラス細工みたいに透き通った瞳。白い肌に小さくて細い顎。身長は中学三年生らしい平
2019年7月14日 02:13
最後のステラ 星は、歌っているらしい。 ただそれは、人間には聞こえないヘルツで発されている。音楽、と言う概念を商売にしている唯一の動物に聞こえないなんて、皮肉だな、と思う。犬や猫、人間以外には聞こえているのではないだろうか。そう疑う。 星の歌はきっと、強くて、光のようにツンとして、それから柔らかくなって届く。そんな響きを持っている。もしも聞こえたのなら、彼女のような声だろう。 ぼくた
2019年3月20日 01:31
街は荒廃していく。 怪人の破壊行為に対する修復は日に日に間に合わなくなっていき、支援物資の供給も少なく、住める場所は制限されていった。 唯一の希望と言える魔法少女ルミネは、ただ一人、瓦礫の中で立ち上がる。目の前の怪人クモウを倒すため。 ルミネと同じくらいの年齢に見えるクモウは、人間とは明らかに違う凶悪な節足を持っている。黒く尖る八つの足を自在に操り、彼は一歩も動かず、ルミネを、街を、傷つけ