神様の暇つぶし、わたしと同い年の主人公について。
時間とは何か、記憶とは何か
時間は記憶を濾過していく。
そんな冒頭で始まる、20歳の女子大生の年上の写真家との、ひと夏の恋。
父を亡くして間もない藤子は、父と昔なじみの男、全さんと出会う。
2人は交流を深めるにつれ、肉体関係をもつようになる。
藤子が惹かれた全さんと、全さんが惹かれた藤子の描かれ方。
そこには、年齢の差という障害を越えたものがあった。
どうしても忘れられない、あのひと。
時間が解決してくれるのを待つべきか、はたまた濾された思い出をはがすべきか。
……そんなことを考えてしまう物語だった。
夏を感じながら、ページをめくる
物語の設定は夏なので当然ではあるが、夏という言葉を使わずこんなにも『夏』を表現できるのか、と感嘆した。
千早茜先生の作品を読むのは、これで3度目。
読むたびに、はっと気づかされる。
1つの場面をこんなにも美しい文章で描写できるのか、と。
わたしも物書きなので、心惹かれた表現はメモを取って勉強をさせてもらっている。
数年後にもう一度読みたい
藤子と同い年のわたしは、作中の藤子の一連の心情変化の中で、いくつか共感できる部分があった。
小説を読んでいるうちは藤子になった気分で、年上の全さんに対するイメージをふくらませていたが、きっと、何年か後に見たときは、別の印象を抱くだろうと思った。
何年か後、もしくは何十年後、今よりもっと色々なものを見て聞いたわたしは、全さんという人物に対して、何を思うだろうか。
1つの作品を、何十年にも渡って楽しむ。
そんなふれあい方もしてみたい、今日この頃(o^―^o)。。
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