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研修2年目 #10

2年目のシーズン。この年は、昨年経験した少量多品目有機栽培農家の1年間の流れを、反省や復習をしながらより自分の中に落とし込めるよう実践する年になりました。

というのも、少量多品目有機栽培農家の作業はとにかく膨大で、同時に何十種類もの野菜を並行して栽培・管理しているので、1年目には経験できなかった作業もあったり、経験したとしても忘れてしまっていたりと、まだまだ自信を持って独立就農に臨めるという状況ではなかったからです。

そのため、前年自分が書いた研修日誌を見返したり、野菜の百科事典に立ち返ったりして、栽培について知識のインプットに努めました。

畑の様子を観察

また、お日さま農園での研修と並行して、次年度自分が独立就農予定の畑の草刈りや土づくり等の準備作業も行っていきました。

平日はお日さま農園、週末は自分の畑での作業。雪が解けた春先から秋にかけて、ほぼ休み無く働いていました。自分の畑の準備が出来るのは土日に限られていたので、真夏の炎天下の中で多少からだがキツくても作業を断行していました。いま思えば、結構無茶なことをしていたと思います。

そんな秋のある日、朝目を覚ますとからだの異変に気がつきました。

「うっ、動かない・・・」

なんと、腰の痛みで起き上がることができなくなってしまったのです。這いつくばって病院に行きレントゲンと撮ってもらうと、椎間板ヘルニアの一歩手前と診断されました。日々重いものを無理な体勢で運んだり、肥料や堆肥を散布する重労働が疲労となって腰に蓄積していたようです。

土づくりのため大きな石も人力で掘り出しました

腰を痛めたことで忙しい時期に研修先に迷惑をかけてしまい、大変申し訳ない気持ちでいっぱいでした。そして、健康管理ができなかった自分へのショックも大きかったです。

これまで、野球やダンスなど常に身体を使ってきていたので、身体は丈夫な方だと勝手に過信していた部分がありました。しかし、年齢も重ねた上に、圧倒的なオーバーワークに対して特別な身体のケアもしていなかったため、腰が壊れるのは時間の問題だったのかもしれません。

農家はアスリートと同じで身体が資本です。長く続けていくためにも、日々自分の身体のケアを怠らず、無理のない範囲で作業をこなしてゆくこと。また、疲労が蓄積しないように自分の身体のクセや使い方を知ること。そして、肉体労働だからこそきちんと身体を鍛えて守ることも必要なのだと身をもって理解しました。

そんな苦い経験もしましたが、1年目にはなかった面白い体験もすることができました。

まずは、きのこと炭焼きの師匠・菊地さんとの出会いです。菊地さんは寒河江(さがえ)市の幸生(さちう)地区という中山間地域で、原木きのこの栽培と炭焼きをされている林業士。ご年齢が80歳を超えているにも関わらず、崖のよう山を駆け登って木を切り倒したり、20kgはあろうかという発電機を担いで雪山に入りきのこの菌を打ち込んだりと現役バリバリ。

原木しいたけ用の木を切り出す菊地さん

そのお元気ぶりを見せられてしまうと、若手の我々は弱気なことを言えるわけがありません。私自身も中山間地域での就農を考えているので、山を活用した菊地さんのきのこに対する知識や炭焼きの技術は、とても参考になる生きた知恵として吸収させていただいております。

菊地さんが栽培した収穫前の原木なめこ

さらに、害獣イノシシの解体。山形市の高瀬地区という紅花の里で、害獣駆除を目的に捕獲されたイノシシの解体を体験させていただきました。高瀬地区も幸生地区と同じく中山間地域。昨年はアーバンベアがワイドショーで話題となっていましたが、中山間地域においてクマやイノシシ、そしてサルの出没と農作物への被害は、そこに生きる人々にとって生死に関わる大きな問題となっています。

独立就農すれば、私も悩むであろう獣害問題。高瀬地区の獣害対策についてのお話を聞かせていただきつつ、自分はどのように向き合い対応していけるのかを考える良い時間となりました。

解体前の様子

また、私にとって動物の解体は初めての経験。日ごろ私たちが口にしているお肉は、通常精肉された状態でパックに入ってスーパー等に売られていますが、こうやって誰かが捌いてくれているからこそ食べられているのだと実感しました。これまで、なんとなく頭ではわかっていたつもりでしたが、作業をしてくれている方々に対する敬意や、動物の命をいただいているという事に対してのありがたみというものを、体験を通して改めて感じることができたと思います。

というわけで、2年目は野菜づくりだけでなく、それに関わるところでの気づきや学びが多かった年となりました。

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