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衝動に駆られて... 生涯忘れられない冒険の実話

「母をたずねて三千里」というフジテレビのアニメをご存知でしょうか。あの宮崎駿と高畑勲という日本アニメーター界の2大巨匠が若かりし頃に辣腕を振るい頭角を現した昭和の名作です。

あらすじ
9歳のマルコ少年は、イタリアのジェノヴァでお母さんと暮らしていましたが、ある時お母さんはアルゼンチンの首都ブエノス・アイレスに出稼ぎに行ったまま音信不通になってしまいます。
マルコはお母さんに会いたい一心で、遠く離れた南米へ船で渡り、上陸した後も長い長い旅路をたった独り(とお供の猿)で進みます。
旅の途中で何度も危機に陥り、そこで出会った多くの人に助けられ、また時には助け、その優しさに触れながら成長していくマルコの姿が当時多くの視聴者の感動と涙を誘いました。

繰り返しの日常の中で、いつしか「自分は本当は何をしたいのか?」という内なる問いに蓋をしてしまってはいないでしょうか。

でも、人生はいつも順風満帆ではありません。
変化にさらされた時、どこかに潜んでいた感情がにわかに沸騰し、自分でも想像しなかったような大胆な行動に出ることがあります。

今日は、自分の思いを貫いて「冒険」に飛び出した2人のアジア人女性の実話を紹介します。


Episode 1  母をたずねて実写版

台湾は台北郊外の桃園市にある楊梅(ヤンメイ)。閑静でレトロなこの街の一角にある商店で、商品の包装などをして働く29歳の小茉(コマツ)が旦那さんと暮らしています。

小茉(イメージ)

来月日本に旅行に来る彼女が、「一生忘れられない」幼少期の冒険を語ってくれました。

まだ幼稚園に通っていた頃。
両親は大喧嘩をして離婚してしまいました。

母は実家に戻り、私は父に引き取られましたが、ずっと母のことが大好きでした。

保育時間が終わる頃、父が迎えに来てくれていましたが、それが母だったらと何度願ったことでしょう。家に帰っても、ずっと母のことを想っていました。

ある晩、これまでにないほど無性に母のことが恋しくて恋しくてたまらくなりました。目を閉じようとしても、まぶたの裏に優しい母の笑顔が浮かんで消えません。振り払おうとするほど、恋しさは募るばかりでした。

いてもたってもいられなくなった私は、衝動に駆られて行動に出ました。

私は、自分の小さな布団を抱いて、寝息を立てる父にバレないようにこっそりと家の裏口から抜け出しました。夜です。幼稚園児です。独りです。

その夜は人通りが多く、小さな私の前をたくさんの大きな人が行き交っていました。車もバイクも、地響きをさせながらバンバン通ります。正直、ものすごく怖かった。私の知っている人は誰もいなかったし、見慣れた景色ではなかったから。でも、母に会いたくてもう家を出てしまった。

不安で泣きたくなる気持ちをぐっと堪えて、私は歩き出しました。

どのくらい歩いたでしょう。疲れていたかもしれないし、きっと眠気もあったでしょう。そんな時、とても親切なおばさんに出会いました。

その方は、こんな夜ふけにたった独りむっつりと歩いている小さな女の子に気付いて足を止め、とても心配してくださって、何をしているのか、どこへ行くのかと膝を折って聞いてくれました。

なんと答えたか覚えてはいませんが、結局、私はその方の車に乗せてもらい、母のいる祖母の家に連れて行っていただくことができました

会いたくて会いたくて仕方のなかった母。その温もりに抱かれた時、私はきっとようやくホッとして泣きじゃくったと思います。

当時の私はなんて大胆なことをしたのでしょう笑

今考えても、よく家出したなと不思議な気がします。また、同時に、自分の勇気も感じます。幸い親切な女性が助けてくれたからよかったものの、もし悪い人につかまっていたら…

小さな私の大きな冒険は、生涯忘れられない思い出です。

「はじめてのおつかい」ならぬ、「はじめての家出」。しかも幼稚園児が。どれだけ心細く、街の喧騒が恐怖に思えたことでしょう。でも、絶対お母さんに会うんだという思慕の念が思いもよらぬ勇気を彼女に与えてくれたんですね。

ボクも小学生の時に一度家出したことがありますが、1時間もしないうちに戻って来て、家の裏の壁にもたれてしゃがみ込んでいました。情けない。


Episode 2 幸福への旅立ち

ベトナム北部。中国と国境を接する標高2500mを超える山々に囲まれた空中都市Lào Caiにある小さな山村Y Tý(読めない泣)。

ここで少数民族であるモン族・ハニ族と暮らしを共にする30歳のPhúc Hy(フッ・ヒー)「Phúc=幸福」と「Hy=希望」という彼女の名は、まさに彼女の人生とキャラクターそのもの。その数奇な冒険譚にしばし耳を傾けてみることにしましょう。

14歳の時にアルコールが原因で父を亡くして以来、女手一つで姉とともに育てられた私は、18歳で高校を卒業後、日系電子機器メーカーで5年間働きました。そこには言葉は交わすことはほとんどんなかったけれど、私の人生において「愛」と呼べる日本人男性との出会いもありました。

当時私は母と姉と暮らしていましたが、色々あって姉に娘ができた時、そのメーカーを退職しました。姉は小さな娘を家に残して遠くへ働きに出ることがしばしばあり、私は母を助けながら姪の世話をしなければならなかったのです。目が回るほど忙しく、リラクゼーションといえば、束の間近所をスクーターで走り回ることぐらいでした。

そんな日々のことで精一杯だったある時、どこでみたか「人生とは旅である」という言葉と出会いました。慣用句が大好きだった私はこの時、全身に電流が駆け巡るような衝撃を覚えました。そして、いつか一度は行ってみたい素敵な街を思い浮かべたのです。

Đà Lạt(ダラット)花の都と呼ばれる高原の町。
この町のことは以前からよく耳にしていましたが、なかなか訪れる機会に恵まれませんでした。 この街に思いを馳せるたびに、私の心は憧れで爆発しそうになりました。

一年後、私はついに行動を起こします。
2015年9月6日、午後3時20分。
雨が止み、母と姪がまだ眠っている間に私はそっと外に出ました。

憧れの地ダラットまで約340キロ
スクーターで向かいましたが、険しい地形のため、到着するのに丸5日かかりました。移動中はガムを食べ、水を飲んで上を凌ぎました。時折、道沿いの小学校や地元の人たちの家で休ませてもらいました。。

長い旅路の末ついにダラットに到着した瞬間は本当に最高でした!これまでの疲労が一気に吹き飛ぶくらい。
私はここに居たいだけいようと思い、ダラットの特産品(ジャム、お茶、ケーキなど)を扱う商店で売り子をしたり、XQダラット歴史村というところで住み込みで働きました

1年半という長い月日が経った頃、やはりさすがに母の様子が心配になり、実家に戻りましたが、ダラットで過ごした時間は実にかけがえのないものでした。私はそこで本当の自分というものを見つけることができたのです。


自分に自信がついた私は、一度は実家に戻ったものの、再び愛するスクーターで旅に出ることを決意しました。2017年9月のことでした。行き先はニャチャン。海岸線が長く、美しい島がたくさんある街です。

ニャチャンまでの道は平坦で、今回は4日で到着しました。途中、ファンラン(Phan Rang)とファンティエット(Phan Thiet)という2つの町を通過しましたが、疲れるといつも教会や寺院の境内で休憩していました。

ニャチャンに着き、この街のあらゆる美しさを堪能した私は、ある時、有名な観光寺院のレストランの求人広告を見かけました。(観光地なので寺院がこのレストランも運営しているのです)

ロンソン・パゴダと呼ばれるその寺院は、高い山の上にとても大きな仏像があるので、白仏寺院とも呼ばれています。ベジタリアンで、仏陀の教えが大好きなので、このレストランで働きたいと申し出たところウエイトレスとして受け入れてくれ、厨房で寝泊まりさせてもらえることになりました。

仕事中は、海に散歩に行き、どこかで静かに座って海を眺め、自分の魂の計り知れない平穏を満喫しました。勤務時間外には、修道士たちのために料理の手伝いもしました。このような良い行いをすることで、自分の人生にまた少し意味が出てくるような気がして、とても幸せな気分になったものです。仏様に頭を下げるのも好きで、良いことのために努力し続けるエネルギーが湧いてきます。

ニャチャンでのこれまたかけがえのない8ヶ月の滞在ののち、心配しながらもいつも私のやりたいことを後押ししてくれる愛する母のいる家に戻りました。

私の旅は、リラックスしたり、人生を楽しんだりするためではなく、自分の魂、意志、エネルギーを開発し、鍛えるためのものです。

自分が少しずつ成長するたびに、自分の中には無限のエネルギー源があり、それを解放したいと感じ、旅だけがその手助けをしてくれると感じます。
それは自分の中の本当の自分を見るだけでなく、人生における真の幸福への旅でもあります!常に良いことを目指し、努力し、自分自身と他人の喜びと幸福に貢献する。それが人生の本当の意味と価値であることに気づきました。

今私はY Týの美しい山村で、真の幸せの味を噛みしめています。



さて、今回のお話はいかがでしたか?

彼女たちの物語に触れて、あなたの中に眠っていた思い出や仕舞い込んでいた夢の端っこがもし見つかったとしたら、例え古ぼけてはいても、それはあなたにとって本当に価値のあるものかもしれません。

何か心動かされるものがあったらぜひスキしていただけると嬉しいです。
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