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ルールメイキングによる社会課題解決の市場化事例

本記事は、ESG/SDGs/CSVに関しての個人的な学びのアウトプットです。

戦略的国際標準化加速事業:ルール形成の普及に向けた評価指標とその活用方法の開発に関する調査」(以下、基本的に本レポートと呼びます)という経産省の調査事業のレポートを読みながらの学びを共有します。

経営戦略の中で、ルール形成は、非市場戦略に位置づけられます。そのあたりについては、以下のnoteで記載しましたので、ご参照ください。

ルール形成のビジネスインパクト

本レポートでは、ルール形成のビジネスインパクトの例としてはNESTE社の次世代バイオディーゼル市場と、ダイキン社の中国における家庭用インバーターエアコン市場の例を挙げます。

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出典:経産省のこちらの資料より

それぞれのルール形成によるビジネスインパクトは以下のように試算されています。

<ルール形成によるビジネスインパクトの例>
次世代バイオディーゼル市場:約2,750億円(21.19億ユーロ)
家庭用インバーターエアコン市場:約1,920億円
*いずれも5年間のルール形成による市場規模の累計効果

事例に共通する「社会問題解決」という軸

どちらの事例にも共通していることは、CO2削減という社会問題の解決を掲げ、他社と連携しつつ、自社に有利なルールを形成したことにあります(詳細は本レポートをご参照ください。

逆に、大義名分(社会問題解決の軸)がなく、ルール形成が失敗に終わった事例として、Uber社による配車サービス規制、電子タバコメーカーによる販売ルール変更の失敗も紹介されています。

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出典:経産省のこちらの資料より

社会課題解決の市場化という視点

社会課題は、そもそも市場での解決が難しい、つまり収益化が難しいため社会課題として残っています。その解決に向けてファイナンス方面からでてきたルール形成がESG投資なわけですね。本レポートでは、社会課題解決の市場化のプロセスを以下のように、A. アジェンダ構想力、B. 社会課題解決力、C. ルール形成力という3つの要素からなるとしています。

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出典:経産省のこちらの資料より

企業主導による「社会課題解決の市場化」の例

本レポートでは、企業主導による社会課題解決の市場化の例としてデュポン社のエチオピア市場参入と、ボッシュのインドにおけるABS義務化が紹介されています。

<デュポン社のエチオピア市場参入の概要>
社会課題:途上国における慢性的な食糧不足・栄養不足の蔓延
デュポンの狙い:食糧危機リスクの高い国における事業機会の創出
アプローチ:食糧危機リスク可視化のベンチマークツールを開発。世界食糧安全保障指数(GFSI)を策定。GFSIを活用し、エチオピア政府と連携
成果:現地の小規模農家への農薬使用法最新農耕法教育、現地企業との自社製品を使った原料による食品開発など(自社の農薬などの市場創出)
<ボッシュのインドにおけるABS義務化の概要>
社会課題:深刻な水準の交通事故死亡者
ボッシュの狙い:コスト増への抵抗から普及が進まないABSの装備義務化による市場の創出
アプローチ:国際NGO/NPOと協力した自社アジェンダの正当性担保。シンポジウムなどでの有効性の訴求。現地プレゼンス向上(業界団体の要職の獲得)によるコンセンサス形成
成果:インド自動車安全基準においてバス・トラック(インド国内年間約30万台販売)においてABS装備義務化

市場形成のパターン

本レポートでは、この後社会課題解決の市場化のプロセスを構成する、A. アジェンダ構想力、B. 社会課題解決力、C. ルール形成力の3つの要素の詳細と、それらを市場形成力指標としてどのように定量評価するかについて説明されています。

本noteでは、参考資料となっていた、市場形成のパターンというのがとても興味深かったので、そちらを取り上げたいと思います。

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出典:経産省のこちらの資料より

ここで紹介されている5つのパターンは、新規事業の構想を考える際の切り口としても非常に有効だと思います。新規事業って、既存事業の拡大である上記のパターン3のExpandになってしまいがちです。これは新規事業としては、こじんまりしがちですし、自社とカニバルことがハードルになってしまいがちです。

これを例えば、どこかの要素を尖らせて差別化しようと考えればそれはパターン4のCurve Outという発想になるでしょう。これって、抽象化して考えると、他の市場でいうところのあれとこれとそれも束ねられてしまうのでは?と発送できればパターン5のAggregateになるでしょう。

また、以下のnoteでまとめた「DXの思考法」で提示されたアーキテクチャ思考をもとにすると、デジタル化の進展によって、価値がパターン2のReconstructとパターン5のAggregateは同一線上の発想としてとらえる方が本質的かもしれません。

ということで、本日は、社会課題解決を市場化について、「戦略的国際標準化加速事業:ルール形成の普及に向けた評価指標とその活用方法の開発に関する調査」というレポートから、ルールメイキングによる社会課題解決の市場化事例についての学びを共有いたしました。

続編かきました

このほか、当方のESG/SDGs/CSV関連の記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。

ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。

Twitter: shinojackie



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