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犬好き&猫好きに…ミーガン・リクス『戦火の三匹 ロンドン大脱出』

 ときは1939年。
 ドイツ軍がポーランドへ侵攻し、イギリスがドイツに宣戦布告。
「また戦争が始まる…」とざわつくロンドンで、ある一家が自宅の庭に防空壕を掘っている場面から物語は始まります。
 一家の家族は、人間だけではありません。
 ジャックラッセル犬のバスター。
 ボーダーコリー犬のローズ。
 トラ猫のタイガー。
 一家に愛され、大切にされていた3匹は、戦争にほんろうされ、思わぬ旅に出ることに――。

 ミーガン・リクス『戦火の三匹 ロンドン大脱出』は、そんな3匹の旅を描きながら、開戦直後のイギリスのリアルを浮き彫りにしていく戦争児童文学です。

 私は猫も犬も大好き。
 なので、3匹の冒険の旅をはらはらしたり、ほほえましく思ったりしながら読みました。
 トラ猫のタイガーはどこまでも猫らしく、2匹の犬はそれぞれ対照的な性格ですが、ふしぎと3匹は仲良しです。
 そして、彼らにかかわっていく人間たちが、さまざまな角度から戦争というものを照らし出していきます。
 犬2匹と猫1匹の旅といえば、かつて映画化もされた『三匹荒野を行く』を思い出しますが、本作は別の物語です。

 この作品が生まれた背景には、あまり知られていない歴史的事実があると、作者はあとがきに記しています。その部分を引用しましょう。

 この作品の背景には、あまり知られていない歴史的事実があります。一九三九年九月に英国がドイツに対して宣戦を布告した直後のわずか四日間に、四十万匹以上の犬や猫が飼い主の依頼によって安楽死させられたという事実です。その後一九四〇年にかけて、さらに三十五万匹のペットが殺処分されています。
 安楽死させられたペットは計七十五万匹。この数字は、第二次世界大戦中に亡くなった英国の民間人死者数の十二・五倍を超えます。

ミーガン・リクス『戦火の三匹 ロンドン大脱出』あとがきより


 なんという痛ましい事実でしょうか。
 そのなかで、なんとかして難を逃れようと果敢に前に進んでいく3匹の姿に、尊いひとつの生き方を見た思いでした。

 犬好き、猫好きの方はぜひ…。


◇見出しのイラストは、みんなのフォトギャラリーから
mioartyさんの作品を使わせていただきました。
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