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#野生の月評

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「月評」スピンオフ企画。新建築社刊行の雑誌『新建築』『住宅特集』などの掲載作品・論文にまつわる感想などの記事をまとめていきます。「#野生の月評」とつけてご投稿いただけると嬉しいで… もっと読む
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2018年11月の記事一覧

木造建築の語られ方|昭和期日本の精神史 はじめに&目次

noteのマガジン「木造建築の語られ方」ほかに書き散らしていた文章たちを再編成して目次化してみました。佐野利器にはじまり三澤千代治におわる木造建築のお話しを書くという目標に向かってスケッチしてみた架空書籍の目次とその前書きになります。 はじめに 木造・昭和・語られ方たとえば、十数年ほどの前の住宅雑誌のページを開いてみると、今と比べて茶色や緑色の割合があまりに少ないことに驚きます。かつては無彩色でまとめられがちだった建築も、今では木質感にあふれています。それこそ、『住宅特集』

疲れる美術館と、疲れない美術館

 東京・品川にある原美術館が2020年12月末に閉館する。ちょうど週末に訪れた矢先の発表だったので、すごくショックだった。竣工から80年が経って建物の老朽化が進み、美術館として一般公開するには適さない状況らしい。ここはもともと個人邸だったわけだが、お金があれば買い取りたいし、ホステルにでもしたいくらいだ。閉館後は別館でもある群馬県の「ハラ ミュージアム アーク」あらため「原美術館ARC」にその拠点を移すそうだ。  ハラ ミュージアム アークってどこやねん、というわけだが、実

作品のない美術館と、海へと続く長い道

 初めて豊島を訪れたのは2016年。3年に1度の瀬戸内国際芸術祭が開催された年だった。岡山の宇野港からフェリーに乗り、1時間ほどで島に着く。僕らが訪れたのは芸術祭の間のシーズンだったので、人はそれほど多くなかった。  もちろん一番の目的は豊島美術館。2010年に建築家・西沢立衛がデザインした美術館だ。エントランス棟でお金(現在鑑賞料は1540円と安くはない)を払って、カフェスペースの脇を抜け、森の中を歩くと大きなドーム状の空間が姿を表した。この空間自体がこの美術館唯一のアー

優しく包まれる空間。横須賀美術館。

大雨、というか台風の中。 横須賀美術館に行ってきました。 建築家の山本理顕が設計したこの美術館。 外観はガラスの箱の中に柔らかい箱が入っているような。そんな建物。 中に入ると渡り廊下を歩き白い箱の中へ。 たくさんある丸い開口部は外の緑や海の風景を切り取ったり、併設されているレストランに繋がっていたりと計算された配置になっている。 建物の中も入れ子のような構造になっていて面白い。 空間と空間が至るところで繋がれていて、進んで行くのが楽しくなる建物。 ガラスの箱と白い箱

artbiotop 那須 "水庭"

那須に用事がありついでに雑誌の特集で気になっていたアートビオトープ那須に立ち寄り、建築家の石上純也氏が設計した水庭を見てきた。ついでのつもりであったが今回の那須の滞在の印象のほとんどをこの水庭が占めることになった。 この水庭は隣のホテル建設予定地にあった木々を移植して作られたのだが、木の配置や水たまりの形などはすべてデザインに基づいておりその作り方においては庭と言えど建築なのだそうだということだった。 庭の外から眺めたときは正直がっかりした。木々は冬枯れして殺風景に感じら

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自然の変化を感じる 建築と庭園とアート。 ー 江之浦測候所

「分からなさ」に関する考察 ─《門脇邸》について─

1. 序  《門脇邸》について、そこでの体験と『住宅特集2018年8月号』での論考『全体と部分の緊迫した関係を超えて』(以下、門脇邸論考)と合わせて、考察したいと思う。  まず、《門脇邸》の話をする前に、門脇邸論考において取り上げられた「部分と全体」及び「全体性」について触れたい。なぜなら、門脇研究室が発足して以来、議論してきた、乗り越えるべき方法論に大きく関係があるからだ。  「部分と全体」という概念は、建築に限らず、これまでも多くの議論がなされてきた概念であると思うが

藤森照信の草屋根 ラ コリーナ

建物をはじめ、ラ コリーナの多くの建築を手がけたのは、建築家の藤森照信(てるのぶ)さん。敷地内にはあらゆる場所で藤森建築のこだわりを見ることができます。 https://gurutabi.gnavi.co.jp/a/a_1298/ たねやという和菓子とバームクーヘンのお店 近江にあります。 近江商人の三方よし 畑と田んぼが庭にあるなんて素敵です。 春には菜の花が一面に広がりそうです。 ため池と田んぼも広がっています。 左がため池 右が田んぼ バリのホテルにも棚田

リニューアル「福岡市美術館」が新国立美術館より凄い理由。#空っぽ状態の美術館とは?でわかった事

2016年9月よりリニューアル工事のため休館しています。改修のため2年以上休館しています。リニューアル工事が平成30年9月末に終わり、これから館外に保管していた美術品の移送など開館に向けた準備を行い、2019年3月21日(木・祝)にリニューアルオープンです。 (※2018年11月6日13:08:誤字脱字・一部表現などを修正しました) 【プレオープン企画・開館前の美術館に入ってみませんか?】こちらの企画をWEBで発見したのは先月。522名の応募から「午前の部・30名」「午後

studio velocity(栗原健太郎+岩月美穂)「山王のオフィス」を見学|ワクワク・物語・現象観察

「山王のオフィス」を見学今日は朝から建築家ユニット・studio velocity(栗原健太郎さん+岩月美穂さん)の新事務所「山王のオフィス」(2018)見学会に行ってきました。午後から天気がよろしくないということだったので、「雨が降っては楽しみが半減する!」と急いでの訪問。 なぜって、「屋上空間」がこうなってるから(図1)。建築専門誌『新建築』(2018年10月号)を見て「なんじゃそりゃ~」となったその「屋上空間」へ。 図1 オープンハウス・チラシ 諸事情あって今日は

佐賀市で 気になった建築 3つ (佐賀県 佐賀市)

 前回、岡山市で近代建築巡りをした際には、予め調べてから巡ったのですが、今回 佐賀市内では、市内を歩いているうちに気になる建築を3つ見つけました。 ① 佐賀県立博物館(高橋靗一(第一工房) + 内田祥哉) ② 市村記念体育館(坂倉準三) ③ 佐賀県立図書館(高橋靗一(第一工房) + 内田祥哉) ① 佐賀県立博物館(高橋靗一(第一工房) + 内田祥哉)  今回の旅行の目的のひとつは佐賀県立美術館での展示だったのですが、その隣にあって引き寄せられてしまったのがこちらの建物。