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古文は「萌え」に溢れている〜三宅香帆さん『妄想古文』〜

こんにちは。桜小路いをりです。

先日、三宅香帆さんの『(萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文』を読み終えました。

『枕草子』、『源氏物語』、『更級日記』、『とりかへばや物語』、『万葉集』……。
お堅くて難しく思える古文は、実は、現代に通じる「萌え」に溢れている(!)

文芸オタクな三宅香帆さんが、文学作品の内外の様々なカップリングに焦点を当てながら綴る「萌えすぎて」止まらない古文解説本です。

今年は古文を頑張りたい私に、バキュン!と刺さりまくった1冊でした。

私、三宅香帆さんの文章が大好きでして。

終始、仲の良いオタク友達とおしゃべりしているような気持ちで、ワクワクしながら読ませていただきました。

キャッチーな見出しと美麗な扉絵、親しみやすい軽やかな語り口、「萌えポイント」に全振りした解説は、まさしく読者を「古文沼」へ誘うカギ。

こんなにお膳立てしていただいたら、もう自ら飛び込まざるを得ません。
古文、あまりにも楽しい。そして萌える。

本書で激推しされているカップリングは、『枕草子』を書いた清少納言と、彼女が仕えた藤原定子。

その主従関係、特に、定子が清少納言に向ける信頼の厚さが印象的でした。

清少納言の、明るくからっとした性格も素敵。私も「推し」にしてしまいそうな二人です。

そういえば、次期大河ドラマ『光る君へ』は平安時代のお話なので、本書はその予習にもおすすめ。
(ちなみに、清少納言はファーストサマーウイカさん、定子は高畑充希さんが演じられるとのこと。個人的にイメージぴったりなお二人で、発表されたときは嬉しかったです)

また、個人的に、オタクとしてめちゃくちゃ共感したのは『更級日記』でした。

菅原孝標女が記した『更級日記』には、実は、『源氏物語』のオタ活ブログとしての側面があります。

物語に焦がれ、「物語がたくさんある京に行かせてください!」と仏像に祈るほどの文学少女だった孝標女。(既にこのエピソードだけで、めちゃくちゃ微笑ましい)

彼女のオタ活ブログ、もとい『更級日記』には、現代のオタク女子に通じる部分もたくさんあります。
三宅香帆さんと共に、「分かるよ〜」と共感できるポイントの数々、ぜひ本書で読んでみてください。

私は、古文に綴られている人物の想いやエピソードに共感するとき、特に、「この時代の人も、私たちと同じように、こんなことを思っていたんだな」と知る瞬間が大好きです。

時代も、育った環境も何もかもが違う。

でも、もっている感情や想いは、同じ。

そう思ったとき、古文に人肌の温もりや拍動を感じます。
この文章を綴ったのも、この文章に綴られているのも、紛れもなく「人間」なんだ、と。

『妄想古文』は、そんなふうに「古文が『人生』や『人間』を描いたものであることを『萌え』と共に教えてくれる」ような1冊だと思います。

古文って、いいな。

改めて、そう思わされる本でした。

だって、千年以上前に生きていた人の気持ちが、何気ない日常が、その人の言葉で残っていて、文法と単語さえ分かれば、すらすら読めちゃうんです。

それって、すごく尊いことなんじゃないかなと思います。

『(萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文』、ぜひお手に取ってみてください。

ちょっと取っつきにくい古文が、より身近に、より温かく、より鮮やかに感じられるはずです。

今回お借りした見出し画像は、和三盆の写真です。和風なイメージで選ばせていただきました。和三盆って、無性に「萌える」のは私だけでしょうか。あの優しい色合いと甘さが恋しくなる日が、時たまやってきます。

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