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疲れても止められない-皆野アルプスを行く破風山ハイキング⑲

男体拝とはすごい名前だ。ちゃんとした由来はあるのだろうが邪なのんは別のことを思う。たぁという男体を前についついセクハラしたくなるけどここはググっと自分の気持ちを抑える。

“拝み”だけありここからの景色も最高。ただここも岩の上、下を覗けは真っ逆さま。

高所恐怖症をあえて克服していないのんの足は自然と震える。

「足が震えちゃうよ。」

「じゃぁそこから離れればいいじゃん。」

「でも待ってあと少し。」

「あんまり端まで行かないで、気を付けて。」

ここから得られる恐怖の体感を少しでも写真に残しておきたいと欲張りのんは体を張る。

「撮ったっ!」

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そそくさと安全な場所へと戻りのんの度胸試しは終わった。それにしてもこのコースの絶景ポイントは足元が悪いものだ。

下り坂は枯れ葉が多く、木の根もびっしり不安定な足場が続く。安全の友、ロープを見つけたのんは「やったっ」とばかりに飛びつきしっかりと握る。「ちょっとこのロープ緩みがち?」と思いながらも深いことは気にせず身を任せていたのが良くなかった。足を軽く滑らせ力を込めてロープを握った瞬間。

スルルルル・・・・

ロープは体を支える代わりに力がかかる方向へと流れてしまった。

アレレレレ・・・・

バランスを崩し、そのまま尻もち。

「また尻もちついちゃった。」

「大丈夫。」

「うんっ、ここのロープ緩いから気を付けてね。」

まぁたぁなら同じような失敗はしないと思うが。

「歩きやすかった道が気づけば終わっていた。」

たぁの一言が胸にしみる。確かに、休憩舎を出た時はあんなに歩きやすかったのに、気づけばまた険しくなっていたものだ。

山靴の道コースの注意書きに通り、「ここ道?」と不安になるような細く傾斜のある道が多々出てくる。乾いていたり、岩場だったり足場良くないに+αがもれなくついてくる。

「誰が選んだこの辛いコース。」

「私ですよ、のんさん。」と自問自答。

最初は久々の森にテンションアゲアゲで来たものの、気を張る道続きに疲労も溜まる。

「もう止めたいなぁ。」

だけど…

「ハイキング、途中で止められない」

まだコースは1/3ほど残っている。こんな場所で終了を宣言しても、誰も迎えに来ず、“どこでもドア”で近郊の駅へとワープできるわけでもない。

がんばっている自分、嫌いじゃないよ。

自分を好きになるチャンスをのんは決して逃さない。

険しいながらも自然の美しさがいつでも二人を囲んでいる。疲れていても不意に周辺を見回した時の安堵感。ゴールでの達成感を胸にゆっくりでいいから前進しよう。

 目の前に現れる他の木任せの木。ねじ曲がり自ら立脚することなく木から木へと身を預け、堂々と道をまたいでいる。

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任せ木は依存を続けながらしっかりと太陽が浴びられる場所をゲットしている、憎めないヤツ。彼の仲間は先にもいた。人間社会も森の社会もさほど変わりはないのかもしれないな。

「もう歩くの飽きた。」

めずらしいたぁの弱音。珍しい。のんがやる気を取り戻ししばらくしてのことだった。静かに歩く彼の足にも疲労がたまりつま先とかかとに痛みを感じ始めたようだ。

のんは地図を取り出し、現在地確認。埼玉県と書かれた石碑が近くにあったよね。この辺が地図でいう二級基準点あたりかな?

「多分、あと1時間くらいだと思うよ。」

「それならがんばれそう。」


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