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帰ってきたよ、森の中-皆野アルプスを行く破風山ハイキング⑨

無料駐車場には多くの車が停車していたが、山では誰の姿も見当たらない。

良かった。

森はすぐに坂道となり、びっしり緑が二人を囲んでくれる。最初は大きな声で話ながら熊警戒を図っていたが、もともと森との対話を楽しみたい二人は気づけば話すのを止め各々の時間を楽しんでいた。ポケットに入れた小銭は相変わらず音を出すこともないので、たまに手をパンパンと叩き“熊用心”。

ある時、のんはどうして自分がこんなにも森を求めてしまうのか、瞑想してみた。

内面の奥へ奥へと集中し、ゼロに気を合わせ問うてみる。するとある感覚が体へと広がり、その理由を教えてもらった。

東京での生活はパソコンに向かっている時間が長い。外出してれば目的地へと向かい人混みを避けるため前に集中して歩く。友人と対話をするときも料理を食べる時も生活の認識が前面180度に限られてしまう。しかし森に入ると川や鳥や虫の声は全面から聞こえ、前へと進みながらも横に流れる川や木々にも興味を示し、四方を感じ取りこもうとする。

来た道を振り返り、木々を見ようと顔を上にあげ、全身で自分が森の中にいると感じられる。そう、森の中にいると360度体全身を使って情報を得ていることに気づく。

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さらに人の気配がない。

敏感なのんは人の思いや念に飲まれやすい。相手が求めるものをわかりすぎることは長所であり短所であり、神経をすり減らす結果となる。皆が同じことに集中している時は気の流れが単純で良いが、人の思いは十人十色。楽しいと感じることも、不安と思うことも皆異なり、それがのんの気へと流れてくる。取り込まないようにとシャットアウトしながら生きるのはそう簡単な作業じゃない時もある。

しかし森にはそれがない。森に生きる多くの存在はシンプルに、純粋な好奇心を持って生きている。お邪魔させてもらっているのんのほうがよっぽど複雑な存在でシンプルなエネルギーに囲まれ、解放へと促してもらっている。体はこの解放と赦しに触れることを望んでいる。それが森が与えてくれる恵みなのだ。

今、二人は森にいる、エネルギーが望む全てを与えてくれる森に。体全身360度で体感する。

杉の合間に落葉樹が育ち、葉に太陽が差し込み明るさを増している。異なる者同士が見せる共存の美に目を奪われる。たぁはいつもの如くのんの20mほど後ろを歩いている。

喜びを全身に感じ、ついどんどん進んでしまうのんに対し、たぁはゆっくりと自分が見たいものを見て、感じたいものを取り込みながら自分のペースでゆっくり登る。のんの気配を先にとらえておくことが彼なりの安全対策。

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ハイキングではコースの流れとだいたいの現在地を把握しておくことはとても大切。天狗山までは上りがずっと続くことを知っているのでずっと続く登り道も想定内と進んでいける。たまに道にごろついている岩さえ気を付けていれば歩きやすい道で、歩が止まることもない。

道幅はゆったりお一人様分、二人で並ぶことが出来ないおかげで簡単に自らの世界に入り浸る。川の流れる音が耳に届く。

欲張りはのんは全てを収めておきたいと写真を撮りまくる。視覚で得られる豊かさの他にここでしから得られない空気さえも画像に残したいと。


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