皆で合唱、ハモリなし-空想会話
「うっ、うんうん。なんだか喉の調子悪いな。」
「私はやる気万作よ。」
「どうして僕、歌わないといけないの?
ただ浜にあげられただけなのに。」
「仕方ないじゃない。
中身もう鳥に食べられちゃったんだから。
ここは人間の空想に付き合うほかないのよ。」
「そうそう。ただ浜辺で寝そべっているより、私たち見て楽しんでもらえるほうがいいでしょ。」
「多分、私たちが歌えばみんなももっと楽しくなるわよ。」
「でも、やっぱり面倒。
僕はもう少し殻だけになった事実に悲傷したいよ。」
「私はもう殻だけになって数日、経つの。
もう吹っ切れたし、今を楽しみたいの。
付き合いなさいよ。その後、悲しみに暮れてよね。」
「うーん、もう仕方がないなぁ。少しだけだよ。」
「私はいつでもやる気万作よ。」
「それじゃ行くわよ・・・。」
「えっ?どう歌うの?」
「とりあえず「あぁ~」って互いに心地よい声を出しましょう。」
「いいわっ、それいいわ。」
「そんな声だせるなかなぁ、身もなしに。」
「そんなことやってみないとわからないじゃないの。」
「・・・・・・・・。」
「いくわよ。」
「いつでもやる気万作よ。」
「あ~」
「あ~」
「あ~」
「見事、バラバラだわ。」
「気持ちがいいほどバラバラだわ。」
「そりゃそうよ。歌に込める思いもちがけりゃ、音合わせもない。」
「でもいいじゃない、なんだか気持ちがいいわ。」
「あぁっ、僕声だせた。なんだか楽しい。」
「そうでしょ、そうでしょ。
そういうものなのよ、何か行動すれば気が変わるの。」
「もう一度やってもいいよ。」
「もちろん。」
「待ってました、やる気万作よ。」
「あ~」
「あ~」
「あ~」
「お母さん、今日はなんだか浜辺が騒がしいね。」
「そうね、変なうめき声が聞こえるわ。薄気味悪いわね。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
皆で合唱、ハモリなし
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