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鋸山に行って来たよ-09

これまでのお話

登り続けると壁のようなものが現れ、カップルがセルフィ撮影をしている。彼らが撮り終えるまでしばらく待ってから進むと、細い道の両側は直角に切り取られていた。

「わぁ」

こりゃぁ、カップルが撮影したくなる気持ちがわかるよ。

波打つ壁には苔が成長し、細い枝や葉が部分々々に顔を出していた。

「仏像ですか」

変わった風景に心を奪われていたら、突然後ろから話しかけられてびっくりして振り返るとあのきゃぴきゃぴ三人組がいた。

「仏像じゃないよ。それは日本寺だから」

とりあえず後ろが詰まっていることに気づいたので早々に写真を撮ってたぁが待つメインコースへと戻る。

上った先の案内板に従い石切り場跡、岩舞台へと向かう。200m行った先には山とは思えない別世界が広がっていた。

でかすぎて写真撮るのも一苦労。階段を下って見上げるとさらに迫力が増す。

うへぇ~、こんなに高い位置からどんどん切り崩していったんだね。本当、人力ってすごい。

先には別の道があり、行ってみるとそこは先ほど覗いた直角の壁に続いていた。やっぱし苔と波打つ岩のコラボはたまらない。

鋸山には「ラピュタの壁」と言われる場所があるけど、もう既にその雰囲気に飲まれている。

壁の細道に入って振り返るとちょうど石切り場跡を見上げているたぁがいた。

彼が見上げている景色がコレ。

マジで、でかいよ。

ロープウェイでも登れる場所のせいか、ちょっとおしゃれな服装に山を登るには不向きなカジュアルシューズの人もいるけど、上へと続く階段は荒く滑りやすい箇所もあるから、ちゃんとハイキングシューズを履いてきた私たちは偉い。

上り進める別の石切り場跡が出てきた。そこはレンガで下を支えて倉庫にようになっていたから中に入りたかったけど、立ち入り禁止になっていたので危なくない範囲で写真を撮る。

人は徐々に増え、それに反して道は狭くなってきたので向かいから人が来ると互いに道を譲り合う。

つい見事な石切り場跡ばかりに目が行ってしまうけど標高が多少高くなかった今、ここから見える海の景色は美しい。

周辺は枯れ木ばかりかと思いきや黄緑色の葉の中にちらほら花を付けている子もいてそのコラレーションだってたまらない。満開シーズンに来たらまた別の雰囲気を与えてくるのだろう。

上に行くにつれ段差は大きくなり急でバランスを崩しやすい階段道が続き、途中に案内板がない小さな堀跡がたまに目に留まる。

階段を上り続けてきたその先は

やっぱり階段。

既に結構な階段を上って来ただけに本来であれば心が折れてもいい場面だけど、心地よい温度で青い空の下歩いているのがとてつもなく気持ちが良い。

春がやってくる

そう思わせてくれるから、息を弾ませている自分がなんだかとても嬉しい。

春先ハイキングなので薄い服を重ね着していたことが功を奏し、すっかりTシャツの二人。

「ロンパン熱い」

夏用の薄手のパンツなのに赤ちゃんのように温度が高いたぁは汗を掻き、首にはタオルを巻いている。

遠くの景色を見ようと振り返ると“でーん”と富士山がそびえたっていた。それに気づいたらもうその姿を見ずにはいられず、ちょくちょく振り返る日本人の性。

13時6分、展望台前に到着。既に多くの人が休憩していて若干混み合っている。

案内板によれば左に曲がって50m歩けば「東京湾を望む展望台」があるらしい。手元の地図にはこの辺に「地球が丸く見える展望台」とある。

同じものか?

とりあえず行ってみよう。

木々が邪魔しない広がるお空が見えてきて、その先は見事な海景色。そして我が誇り、マウント富士。

絶景ポイントだけど人が多い。ベンチは埋まり座れる場所はない。頂上を目指しながら一緒に歩いている有志の姿もある。混み合う場所が苦手なたぁの顔は曇っている。長年一緒にいるからその表情だけで彼の思いは敏感な私に即伝わる。

「降りようか。人、多いもんね」

「うん」

階段を下っているときゃぴきゃぴ三人組がやって来たからちょっと声をかけてみる。

「綺麗な景色ですよ」

改めて展望前の案内板とにらめっこ。

今、私たちはちゃんと目標として歩いた場所にいるのかしら。

鋸山山頂まで400mとある。手持ちの地図と見合わせながら頭を整理する。

やっぱりかぁ。

日本寺方向に歩いていたつもりなのに、どこかで道を誤ったようで山頂のほうへと来てしまった。道を戻らないと。

「滑りやすい岩階段を下りたくないって言いながら上ってきたのに、下らないといけなくなった」

文句は忘れず、口にしてストレス発散してから歩きだす。

岩場階段を前に上り進めてきたけど、下りでは何度も振り返ってみた海が目の前にある。段差が大きい岩階段は滑りやすいから景色に見惚れず注意が必要。

石切り場跡近くまで戻ると日本寺の看板が見えてきた。

誤って結構上ってきちゃったな。

「日本寺」と書かれた看板に従い進むと石切り場跡の下まで進み、苔宿る波状岩の壁の細道を向けると石切り場跡に来た。

なんだ、この道行けば、急な階段ショートカット出来たんだ。

今更、気づいても次訪れた時にはこの知識は綺麗に忘れられているんだろうな。



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