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ゼロから学ぶストレス#1【ストレスとは?】

アメリカのある田舎町に、アーノルドという56歳の男性が住んでいました。彼は6年前に心臓発作を経験して以来、重い物を持ち上げることができなくなりました。

ある日、アーノルドは、近所に住むフィリップという5歳の男の子が公園のそばで巨大な鉄パイプの下敷きになっているのを見つけました。彼はすぐさま駆けつけ、パイプを持ち上げて男の子を助け出しました。

アーノルドはその時、鉄パイプの重さを150キロくらいに感じたと言いました。しかし、実際の重さはなんと800キロを超えていました。そのあと、駆け付けた警察官や記者たちが一斉にパイプを持ち上げようとしましたが、できなかったそうです。

日本でもたまにこういう信じられない話を聞きますよね。そして私たちはこういう現象を「火事場の馬鹿力」なんて呼んだりします。

これこそが、ストレスの本来の役割です。

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ストレスとは反応

「ストレス」という言葉は、1950年代にハンス・セリエという生理学者が行った、動物を使った生理学的研究によって有名になりました。

セリエ博士はストレスを「外部環境からの刺激や要求に対する生物の反応」と定義しました。

そして、ストレスを引き起こす刺激や要求のことを「ストレッサー」と名付けました。

刺激や要求というのは、ギャップやズレと言い換えると分かりやすいかもしれません。自分が心地良いと思っていた環境や物事に変化が起きると、自分と環境の間にズレが生じますよね。そのズレを埋めようとする動きがストレス反応です。

私たちは普段、「仕事がストレスだ」とか「ストレスが溜まる」というふうに、反応もその原因もまとめてストレスと呼んでいます。

便宜上ここでは、ストレス反応、ストレッサー、ストレスと3つを分けて使います。

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ストレス反応の役割

ここで少し生理学的な観点からストレス反応を見てみましょう。

人間をはじめとする哺乳類の体には、命が危険にさらされるような刺激や要求に直面すると、生物の持つリソース(内的な資質や力)を総動員してその変化に適応し、健康や生命を維持しようとするメカニズムが備わっています。それがストレス反応です。

具体的には、体内にホルモンや化学物質が放出され、瞬時に生理的な変化が起きます。すると一時的に身体機能が上昇します。

集中力は上がり、視覚や聴覚などの感覚器官は敏感になります。心肺機能は強化され、素早く、強く動けるように筋肉は緊張します。免疫力も上がります。

この一連の反応のことを、闘争・逃走反応(fight or flight reaction)とも呼びます。身を守るために、危険と戦うか、それとも逃げるかということです。最初に紹介した男性の話は、まさにこのストレス反応によって危機を回避した一例です。

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ストレス反応の代償

元々、ストレス反応は一時的な命の危険を生き延びるためのサバイバルシステムです。

物理的な危険(例えばサーベルタイガー)が去ると、ストレス反応は収まり、ホルモンの分泌は止まり、体は自然と回復モードに移るようになっています。

ところが、現代の私たちは心理的な危険(例えば営業のノルマ)に長期間さらされているため、ストレス反応が継続してまたは頻繁に起きています

すると、ホルモンや神経系が正常に機能しなくなり、さまざまな病気を招くことになります。

例えば、ストレスホルモンの過剰な分泌は、心臓病の原因になるコレステロール値の上昇や高血圧を招きます。血糖値を上昇させるので糖尿病のリスクも高まります。

そのほか、コルチゾールというホルモンは脳の神経細胞を萎縮させることも分かっており、うつ病やアルツハイマー症の原因の一つと考えられています。

筋肉が緊張した状態が続くので、慢性的な肩こり、関節痛なども引き起こします。

ストレスが身体に良くないと言われるのは、慢性的なストレス反応が体にダメージを与えてしまうからです。

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まとめ

⬛︎ストレスとは、周りの変化と自分の間にできるズレを埋めようとする心と体の反応

⬛︎ストレス反応を引き起こす原因をストレッサーと呼ぶ

⬛︎ストレス反応を起こしているとき、体内では生理的な変化が起こる

⬛︎慢性的なストレス反応は体にダメージを与える


私たちは生きている限りストレスを避けることはできません。

しかし、ストレス反応の仕組みを知り、自分がストレッサーに対してどう対応しているのかを知ることで、自分が受けるストレスを緩和することができます。

次はストレッサーの種類について説明します。


最後までお読み下さりありがとうございました。



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