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他人は変えられないが変わることはできる
「神よ、願わくばわたしに、変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ。」(ニーバーの祈り)
人生の悩みは対人関係の悩み
アドラー心理学の親、アルフレッド・アドラーは人間の悩みのほとんどは、対人関係の悩みに行き着くと言いました。
健康が悩みだという場合も、死を目の前にしたらそれは死ぬことにより家族や大事な人と会えなくなることが怖いのであって、もし世界に自分一人しか生きていなければ死は恐れるものではない、と言います。
お金が悩みだという場合も、周りと比べてお金がないことで買いたいものが変えない、やりたいことができないのがわかるから悩むのであって、比較対象が全て同じ行動しか取れないとしたら、買えないものがあってもどうにもならない事で仕方なくなり、お金があるかないかはそれ自体で悩みになり得ない、と言います。
すべての悩みは人と比較したり、人に見られたり、人からどう思われるか想像したり、孤独を感じたり、他者との関わりの中で生まれるというのです。
誰かにやってほしいことがあるのにやってくれない、お願いしたのにやってくれないという悩みも対人関係の中でよくある悩みでしょう。
相手が夫婦や親子など、身近な人であればあるほど、言った通りやってくれないことへのイライラは大きくなります。
「服を脱いだら脱ぎっぱなしにしないで!」「食べた後そのままにしないで!」など、よく聞く話ですね。
会社の職場でも、「頼んだのにやってくれない」「指示した通りにやってくれない」という問題は日常茶飯事です。
こんなとき、どうしたらこの悩みを解決できるのでしょう。
他人は変えられない
一番の解決方法は、「他人を変えるのをあきらめる」ということです。
それでは、解決にならない!と怒る方がいるかもしれませんが、これはあくまで自分の頭の中の話、考え方の話です。
そもそも他人は操り人形ではないので、手足を動かすことなどできないし、頭の中を操作することもできません。
アドラーは他人の行動を変えようするのは、相手を支配しようとしているのと同じと言います。
他人の行動を決めるのはその人自身なのであって、周りの人がどうこうできることではないのです。
「他人に行動を強要しようとした人が不幸になる」というこの世の法則があります。
相手が行動を改めてくれることを期待するから、イライラして怒りがこみ上げます。
しかし、最初から期待せずにあきらめてしまえば、腹が立つことはありません。期待することは不幸の始まりです。
幸せになる考え方とは、「何も求めない、何も望まない、何も期待せず今ある状況に満足して感謝する」ことなのです。
自分ができることに集中する
そこで、「相手が自らその行動を選択するために、私に何ができるか」という風に考えます。
できることは自分の言い方、伝え方、接し方を変えてみることです。
「いつも仕事が大変だよね。疲れてるのは見ててすごくわかっているけど、服を片付けてくれたらとても嬉しいよ。」と優しく接してみたり。
「このまま同じこと続けるなら我慢できない!もう家出て行くからね!」と激しく言ってみたり。
「こんな些細なことだけど、1日中家にいる私にはとても辛いのよ。」と泣いてみたり。
「床を散らかしておくと、先祖のご加護を受けられないらしいよ。」と説法を語ってみたり。
「服の脱ぎ方がカッコいいよね。そのまま洗濯カゴに脱いだらもっとカッコいいよ。」とほめてみたり。
自分の行動を変えることで、相手に何かの気づきやきっかけをもたらし、相手が自ら行動を変えてくれるようにするのです。
どの方法が通用するかは、相手の性格にもよるし、その時の相手の精神状態やタイミングにもよるし、やってみなければわかりません。
大事なのは、相手が動いてくれるまで、色々な方法を根気よく試していくということです。
うまく行かなければ他の言い方で伝えてみる、また違う言い方で伝えてみる、ということを繰り返すのです。
千手観音は、愛を持って千通りのあの手この手を使って救ってくださる慈悲深い観音菩薩です。
感情に流されて言うのではなく、工夫して意思をもって言うこと。自分のために言うのでなく、相手のために愛のある言葉で言うことが大切です。
ゲームを止めない子供に対して「そんなにゲームばかりしていたら、目が見えなくなっちゃうよ!」と言うのは、恐怖を煽ってそれを避けるように促そうという強要する伝え方ですが、「ゲームばかりして目が見えなくなったら、私はとても悲しいよ」と言うと愛のある言葉になります。
まずは自分を動かす
これは親子の家庭教育でも、職場のリーダーの人材育成でも同じです。
自分がコントロールできるのは自分のことだけで、相手はコントロールできません。
コントロールできないことをコントロールしようとすると、自分が苦しくなり不幸になります。
人はみなそれぞれ自らの人生の主人公です。
焦点を相手に置くのでなく、自分ができることに置くのです。
イギリスの諺にはこんな言葉があります。
「馬を水辺へ連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない。」
水を飲める環境を他の人が与えてくれているのに、本人が気づかなければ、または望まなければ、行動には移らないという例えです。
そう考えると、実は「他人についてのことは悩みじゃない」ことがわかります。
他人の行動は他人の問題です。
自分の行動の取り方、言い方を変えること、態度を変えること、表現を変えること、根気…、つまり、自分の動かし方が問題であり悩みなのです。
人を動かすために必要なのは、まず自分を動かすということです。
自分を動かすことができない人に、人を動かすことはできません。
相手をどうにかするのでなく、自分をどうにかするのです。
相手を変えるのではなく、自分を変えるのです。
自分は変わらないで人だけ変えようと言っても無理な話です。
自分を変えるとは、自分の性格や人格を変えるのではなく、千手観音のようにあの手この手でやり方を変えるということです。
自分のできることを見つけて、自分を努力して変えられる人が働きかけて、はじめて相手が自ら行動を変えることが起きます。
先に自分、後に相手。原因が自分、結果が相手。結果はどうなるかはわからない。しかし、チャレンジしなければ結果は生まれない。
このように考えて、自分自身の行動をあきらめずに変えて行くことが大切です。
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