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【気になるシカケ研究所】気になるシカケのポスターで3000冊の寄付本を集めた話

この話は、以前会社に勤めていたときの話です。
営業部門の社員から「1ヶ月以内に、社内で出来るだけ多くの寄付本を集めてほしい」という依頼がありました。
さて、どうしたら集まるでしょうか。

【依頼背景】
仮設図書館に寄付する書籍を集めて!

この依頼があったのは、東日本大震災の翌年。
得意先企業が「被災地の避難所に仮設図書館をつくる」ということで、その企業の営業担当者Aさんから依頼がありました。
期限は1ヶ月。短いけれど出来るだけたくさん寄付したい、とのことでした。

【ミッション】
1ヶ月以内に出来るだけ多くの寄付本を集める

当時勤めていた会社は、社員数1500名くらいの印刷会社。
1ヵ月しかないので、全員に声をかけて回るのも難しそうです。
もちろん身近な人たちには声がけできますが、全社的には、ポスターとか社内サイネージで訴求するのが効率的。社員のうち2割の人が持ってきてくれれば300冊。一人2冊ずつだったら600冊になりますからね。

さて、どんなポスターが効果的でしょうか。
今回の課題を以下に整理します。

【課題】
ポスターで寄付本を集めるには?

課題1:まず、ポスターに気付いてもらえるか。

ポスターを貼っても見てもらえなければ意味がありません。最初の課題は、ポスターに気付いて「何だろう?」と興味を引くことができるかどうか

課題2:次に、内容をすぐに理解してもらえるか。

ポスターに気付いて読んでもらっても、意味が理解できなければ立ち去ってしまいます。2番目の課題は、「本を寄付してほしい」という内容がすぐに伝わるかどうか

課題3:最後に、書籍の寄付に協力してもらえるか。

最後の課題は、内容を読んで寄付してくれるかどうか

以上の3つが課題になります。
どうやって解決したら良いでしょうか。

【気になるシカケ】
ポスターに3つのリアリティ

それでは「解決編」です。

この案件で最も注意したことは「自分には関係ない」と思われないこと
つまり当事者としてのリアリティを感じてもらうため、ポスターには、より具体的な内容を表現しました。

①営業担当の写真を掲載

まず、「誰が誰に向けて言っているのか」が分かるように、営業担当Aさんの写真を入れて「ご協力お願いします!」と台詞を入れました。
知っている人の写真が入っていることで気が付きやすく、「自分には無関係」とも考えにくくなります。実際の同僚からのお願いですから、無視はしにくいでしょう。

②寄付があるたび書名を公表

シンプルに「寄付してください」と言われても、どんな本を寄付すれば良いのか、判別が付きにくいと思います。そこで、寄付された書名を公表することにしました。
そうすることで「マンガでも良いのか」とか、「絵本はまだ寄付されていないのか」とか、寄付するための具体的な手がかりになります。自発的な行動は難しいものですが、他の人の「前例」があると、一歩踏み出しやすくなるのではないでしょうか。

③定期的に集まった冊数を公表

集団行動に繋げるために、集まった冊数も公表していきました。
具体的な数字が見えることで、社内のムーブメントとしての大きさを実感でき、社員同士の会話のネタに発展する可能性もあります。

以上3つの具体性を表すシカケを施したポスターで、見る人の当事者意識と社内での話題性をつくろうというわけです。

こうして、Aさんの写真寄付された書籍名寄付冊数の情報が入ったポスターが掲示されました。

ポスターの表示は、寄付が増えるごとに「ただいま○○冊!」とカウントアップしていきます。
Aさんのセリフも、「ご協力お願いします!」から「こんなに集まりました!」や「ご協力ありがとうございます!」に。締め切りが近づくと、「あと○日です。最後までご協力お願いします!」と変化していきました。
もうほとんど選挙活動のような状態です(笑)

【シカケた結果】
1ヶ月で3000冊の寄付本が集まった

結果として、予想をはるかに上回る3000冊の寄付本を集めることができました。その期間わずか1ヶ月。平均すると1日あたり100冊ずつ集まった計算になります。
実際には、最初の反応はいまいちで、日を追うごとに認知が浸透していき、最後の週で追い上げました。

集まった3000冊の本は震災避難所の仮設図書館に寄付され、多くの人に読んでもらうことができました。
会社としても社会貢献できたので、シカケた甲斐がありました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。



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