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【ミカタをつくる広報の力学】 #51 周年をブランディングに活用する

前回は周年事業の基礎知識について書きましたが、今回はブランディングへの活用について書きたいと思います。

周年事業では、今までの歴史やこれからのビジョンを語ったりできるので、ブランディングの要素が詰まっているのです。カップ麺ブランドの例も交えて、周年事業に適したストーリーのアウトプットについて書いていきます。


※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、コンセプトがわかりやすいかと思います。


周年を使ってブランディング

1971年に世界初のカップ麺が日本で生まれてから、今年で50周年なわけですが、先日、そのブランドが「世界累計500億食」を達成したというニュースを見ました。世界の販売国数も100ヵ国。実にキレイな数字が並んだものだと思います。

100ヵ国で500億食を販売するだけでもスゴイことなのに、そこに数字まで並ぶのは圧倒的なインパクトになります。PR手法もさることながら、ブランディングに関しても「さすが」というほかはありません。

実績を報じることで、「50年もの間、100ヵ国で、500億食を売り上げる、すごいブランド」ということが伝えられます。

こうした実績アピールは、消費財ではもちろんですが、実はB2Bサービスの方がより成果を生みます。
消費者は嗜好性やフィーリングで購買を決めますが、法人の場合は機能性やパフォーマンスで選択するため、販売実績やシェアは「多くの企業が評価した」ことの証しであり、客観的な判断基準になるからです。

周年でアピールすべきは、ただ単に長く続けてきたのではなく、「長く愛され続けてきた」というファクトです。

長期間にわたって同じ商品を売り続けられるということは、機能性に加えて独自性や優位性がなくてはならないでしょうし、業界内でのポジションの獲得やアイデンティティの樹立など、ブランドもそれなりに育っているのではないかと思うわけです。

これは紛れもなくブランディングであり、確かなパーセプションを得る絶好の機会。しかも、B2BもB2Cも、大手も中小も関係なく、すべての企業が展開できる「壮大な自己紹介」と考えましょう。


ターゲティングは社内から

私のラボでは、ブランディングに『ISM構造』という概念を使用しております。ブランディングで合意形成をするときは「社内→社会→市場」という順番が良いですよ、という概念です。
ビジョン、ミッション、バリューをターゲット別にアウトプットしただけなので、細かい説明は省略します。

重要なのは、周年事業でブランディングを行う際のターゲット。
もちろんPRとして実施するので社会全体なのですが、順番は先ほど書いたように「社内から」が良いと思っています。

なぜなら社内で共感が得られていないことを社外にアピールすると、社員が疎外感を覚えてしまうから。

周年が迎えられるのも、愛され続けてきたのも、実績を残せたのも、最初に社員ありきだと思うので、まずは社内で合意形成してから、社会、市場へとアウトプットしていくと良いのではないかと考えるわけです。

社内で共感を得る周年事業とは、何をすれば良いのか。

一般的には、年史や記念品を配ったり、記念式典を開催したりといったものが挙げられると思いますが、より多くの共感を得られるのは「社内コンテスト」ではないかと思います。

私が在籍していた印刷会社でも100周年を迎えましたが、震災の年だったため派手な周年事業は自粛を決定。印刷会社なので記念誌には力を入れましたが、それとは別に、100周年のスローガンを社内公募しました。

グランプリを受賞した作品は、名刺や会社案内など、すべてのコーポレートツールに掲出され、考案者は表彰されます。

この企画の良いところは、スローガンを作成するために、改めて自分の会社のことを考える機会になる点と、ロゴデザインなどは専門家でないと無理ですが、スローガンなら誰でも書けるという点。

予選は事務局で行いますが、最終選考は候補の中から社員全員の投票によって決めるという点も良かったと思います。
自分たちの会社のスローガンを、自分たち考えて、自分たちで選んだ、という当事者意識が強くなります。

もちろん制作されたツールは対外的なものなので、そこから社会や市場へとアウトプットされていきます。


アウトプットは特設サイトがおすすめ

社史・年史や記念誌の発行、スローガンや周年ロゴの制作という施策は、今まで歩んできた自社の歴史を振り返り、これからも一歩一歩、新たな歴史を刻んでいくという意志の表明です。

そこには企業を取り巻く背景、創業者や歴代経営者の思い、製品開発の足跡などの様々なストーリーがあって、周年事業というのはそれらのストーリーを、多くの人に披露できる貴重な機会ではないでしょうか。

ここで肝心のアウトプット。
これまでさんざん社史・年史だの記念品だのイベントだのと書いてきましたが、個人的にはウェブ上での「周年特設サイト」の開設をおすすめします。

ウェブサイトの場合は、紙媒体と違ってページ数が限られていないことや、周年の一年間を通じて新たな情報を追加していける点でも優れています。

もちろん情報が追加されるたびにSNSに発表して誘引することもできますし、動画をアップしたり、他サイトにリンクを貼ることも自由自在。
最近ではVRや3Dモデリングなどを駆使して、展示ブースをリアルに再現することも可能なので、リモートで楽しんでもらう際にも適しています。

冒頭で触れたカップ麺のブランドも、50周年の特設サイトを開設していますが、サイト内では製品の秘密や製造工程、商品リニューアル、サステナビリティなども紹介しています。

ちなみにこのカップ麺は、周年記念ムックの発売や、同じく50周年を迎える高級ホテルとのコラボなど、話題づくりのための企画も充実していますが、それに関してはまた別の機会にしたいと思います。


おわりに

今回は、周年事業のブランディングへの活用について、カップ麺ブランドの例も交えて書きました。

最後にはDX的な話になってしまいましたが、やっぱりデジタルのポテンシャルは高いと感じます。

そして今回も企画の話はほとんど書けず、肝心のコンテンツについてご紹介できませんでした。なので周年の話はまだ続きそうな気がしますが、どうぞお付き合いのほど(笑)


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。



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