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【ミカタをつくる広報の力学】 #53 記念日マーケティングを考える

前回の周年コンテンツの話でも少し触れましたが、今回は記念日マーケティングについて書きたいと思います。

365日すべての日が記念日になっている昨今、どうやって記念日をつくっていけば良いのか。記念日マーケティングのルーツや事例について書いていきます。


※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、コンセプトがわかりやすいかと思います。


記念日マーケティングとは

日本最初の記念日マーケティングは、平賀源内の「土用の丑の日に鰻を食べよう」だったと言われています。

「マーケティング」と言われているように、販促における「記念日」は購買アクションのトリガー(キッカケ)になりますが、PRにおいて活用する場合には、「意識変容」だけでなく「行動変容」まで期待できるということになります。

前回までご紹介した周年事業は、創立記念日や発売日、誕生日などからの年月を数えて「周年記念」として開催しますが、記念日マーケティングは、「何年経ったか」や起源そのものに関係なく、日付自体に「意味付け」をすることで成立します。

誰もが知る2月14日のバレンタインデーも、元々は、愛を説いたヴァレンティヌス司教が処刑された命日ですが、日本のチョコレート会社が仕掛けた広告戦略からチョコレートを贈る人なったのは有名な話。

つまり、バレンタインにチョコレートを贈るのは日本だけであり、ヴァレンティヌス司教との関連性も日付だけです。

それでもチョコレート全体の年間総売上の1割以上をバレンタインが占めていることは事実。今やマーケティングに欠かせない戦略であることは言うまでもありません。

近年よく聞くのは「肉の日」でしょうか。
焼き肉店やステーキハウスでは、毎月29日になると割引やポイントバックキャンペーンを開催します。「29=ニク」の語呂合わせも憶えやすいですが、多くの企業で給料日が25日に設定されていることから、経済的にも余裕がある時期と重なるため、需要を喚起して定着したのではないでしょうか。

独自のブランドによる成功パターンでは11月11日
スティックが4本並んでいる様から、某スティック菓子の記念日として知られていますが、その始まりは今から20年以上前。平成11年11月11日という6本並んだタイミングで日本記念日協会に登録されました。

一般社団法人日本記念日協会というのは、新しく制定された記念日の認定や登録を行う団体で、放送作家の方が立ち上げました。
ネットで調べてみると、番組のネタづくりとして記念日がフックになることから記念日の知識を蓄積していったそうです。

テレビ番組制作に携わる人の知恵が発端ですから、PRと相性が好いことは言うまでもないでしょう。


記念日は語呂合わせが多い

記念日に類するものは、昔から節句や年中行事として存在しており、「節目を示して気付きを与える」という意味がありました。なので記念日にも販促キャンペーンだけでなく、「啓発」を目的としているものが多くあります。

今年から制定された10月10日と11日の「デジタルの日」は、「政府と民間が共同して社会全体でデジタルを感じる」ための日だそうです。
やることを特に定めているわけではなく、デジタルを感じるために何をするかは各々に任せるということでしょう。

電子機器の特売をする量販店やオンラインイベントを開催するクラウド企業、ガチャを大盤振る舞いするゲームも出るかもしれません。
毎年この日には、デジタルについて考えましょう、ということなのだと思います。

ちなみに理由は、デジタル信号が「0」と「1」で表現されることから。

一般の人には馴染みの薄い概念かもしれませんが、コンピュータ関連に携わる人であればピンとくるでしょう。

記念日の設定には、デジタルの日や肉の日のような語呂合わせと、バレンタインのように何かの原因を起源にするものがあります。

過去に起きた出来事と関連して、その思い出や教訓を未来へと語り継ぐ場合は、原因を起源とした方が説得力がありますが、一般の人の興味喚起を考えると、語呂合わせの方が憶えやすいのではないでしょうか。

ですが語呂合わせの記念日もかなりの飽和状態で、最近は少しひねりのあるアイデアが必要になってきています。

私が聞いたもので秀逸だと思ったのは、「ショートケーキの日」「パイの日」

ショートケーキの日は毎月22日。
カレンダーでは、22の上に15(=イチゴ)が載っているから。

パイの日は3月14日。
円周率のπ(パイ)が「3.14」だから。

その日にケーキやパイを食べるかどうかは別として、この話、誰かに教えたくなりますよね。


記念日には根拠と説得力が必要

今や日本記念日協会に正式に登録されている記念日は2000にも上り、未登録のものも含めたら一体いくつあるのか。
365日すべてに何かしらの記念日が制定されていて、4年に1度しかない2月29日にまで記念日が制定されています。

活動がまともで他とカブらない場合には、登録料を払えば大体登録されます。ただ、記念日を登録したとしてもライバルが多すぎる現状なので、単に記念日を名乗っても効果はないでしょう。

そこで、「記念日を制定する根拠」が重要になってきます。

実は「土用の丑の日」には科学的な根拠と説得力があります。

「土用」は年に4回ある季節の変わり目で体調を崩しやすく、特に夏の土用は梅雨明けと重なるため、精が付くものを食べて体を労わるという習慣がありました。さらに日本では丑の日を特別な節句とする風習があり、「う」の付くものを好んで食べる。

夏にはコッテリした鰻が売れないと相談してきた鰻屋に、平賀源内はこれらの根拠で広告を勧めたわけです。

このエピソードでは「土用の丑の日に鰻を食べるべき理由」「毎年続けた方が良い理由」が説明されています。

同様に、私が記念日をつくるときにも、「その日を記念日にする理由」「毎年続ける意味」を重要視しています。

つまり、記念日かどうかよりも、「毎年同じタイミングですべきこと」として何を社会に発信すべきか、ということです。そこに納得感が無いと、共感を得ることができず、多くの人に繰り返し続けてもらえないからです。

なので、大体は以下のような要領で進めます。

①まずはムーブメントとして定着させたい事柄と普及対象とするターゲットを考えます。
②次に、毎年もしくは毎月繰り返すなら、どのタイミングが妥当かを考え、大体の時期を設定します。
③最後に、その時期の中で、関連する過去の出来事や語呂合わせができる日を探します。

もちろんケースバイケースで日付と語呂合わせを先に考えなくてはならない場合もありますが、過去の経験から言うと、そういうときは大体失敗してます(笑)


おわりに

今回は、記念日マーケティングを平賀源内に学んでみました(笑)

この丑の日の広告によって平賀源内は「日本最初のコピーライター」と言われていますが、実は「コピーライターの日」というのは、私が確認した限り、2つあります

一つは「万国著作権条約」の公布日である1月28日。
理由は著作権の「Copyright」と広告文の「Copywrite」の音が似ていたから。

もう一つは、11月11日。
スティック菓子と同様に、ペンが並んだように見えるから。
そして「ひとびとにヒットする一行」という言葉を意味しているそうです。

どちらも洒落た語呂合わせですが、2つも存在すると迷いますよね(笑)


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。



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