見出し画像

【セルフライナーノーツ】「BRAND-NEW YESTERDAY」80年代ポップスな歌詞を説明してみた

私の友だちでインディーズミュージシャンの「カザシュン」こと風間瞬
彼の新曲に歌詞提供しましたので、今回も完全に自己満足のセルフライナーノーツを書いていきます。

前回の『YOUR MOON』(2022年1月リリース)の後、2022年6月に彼は肺腺癌を患い、闘病やら何やらでレコーディングが出来なかったので、今回は2年半ぶりのリリースとなります。

肺腺癌の罹患を経験したカザシュンなりに思うところがあって、その心境や自身のこれからを表現する歌詞を書いてほしいとの依頼を受けました。

そのあたりの詳細については後ほど説明するとして、まずはお聴きください。
風間瞬で『BRAND-NEW YESTERDAY』

※本コラムに登場するアーティストの皆さまに関しては、敬称略にて失礼いたします m(__)m


『BRAND-NEW YESTERDAY』の曲と歌詞

『BRAND-NEW YESTERDAY』
 Lyrics by Shingo Tsuemura
 Music by Cattleman
 Arranged by Toru Taguchi

Glory 80’s days Dreamy 80’s nights
Shiny 80’s life I love 80’s mind
Glory 80’s days Dreamy 80’s nights
Once more

ハーバーライトが映し出すDiscothequeは
ウォーターフロントのAvenue
ダンスフロアーは胸騒ぎのWonderland
ディスティニーが目を覚ますDramatic Night

Twilight Cityは鮮やか 瑠璃色のキャンバス
遠く浮かぶ 都会の街灯りだけ
キールのグラス片手に 飛び込んだRendezvous
シャイなAngelとウィンク交わしたら Shangri-laのようさ

Glory 80’s days Dreamy 80’s nights
Shiny 80’s life I love 80’s mind
One more 80’s days One more 80’s nights
One more 80’s life One more 80’s mind

通り過ぎてくMemoryは眩くて
輝いてたPhotographさえ色褪せて
誰もが皆Juvenileに憧れて
Moonshineの甘い罠に酔いしれたまま

はしゃぎ過ぎた季節と 無くしたGeneration
醒めた素顔と孤独なカタルシスだけ
裏腹で邪な 虹色Loneliness
ムキにステレオタイプを繰り返す Time Machineのように

Glory 80’s days Dreamy 80’s nights
Shiny 80’s life I love 80’s mind
One more 80’s days One more 80’s nights
One more 80’s life One more 80’s mind

Good bye 80’s Days Good bye 80’s Nights
Good bye 80’s Life Good bye 80’s Mind
One More 80’s Days Next 80’s Nights
Oh Brand-new 80’s Life I’ll Make Once More

Curiosityが誘う風まかせのラビリンス
扉開いた瞬間が Brand-new Day and Night
わがままも気まぐれも どこまでもEndless  
街を彩るスイッチを手にしたら Cinema Starのようさ

闘病生活への応援ソング?

まずは経緯から。

私の友人である「カザシュン」こと風間瞬は、2022年6月に肺腺癌を患い闘病生活に入りました。
詳しくは彼のYouTubeをご覧いただくとして、良くも悪くも自分の命と向き合うことなったそうです。

そんな状況において私は彼から作詞を依頼され、『NOSTALGIC FUTURE』という仮タイトルとともにカラオケ音源が送られてきました。
そして彼からのメッセージ。

どうしても、こういう生と死を見つめざるを得ない状況になると、走馬灯のように昔のことを思い返していきがち……なものだけど、俺はやっぱそれはイヤで〜

甘酸っぱい80'sのノスタルジックな香りを思い返しつつ、いや、でも俺はそんな回顧よりも10年後の未来が見たい(=生きたい)と思うから、なんか暗喩でそういうマインド入れられたらいいな、とか。

あと、トキシヅオさんというカメラマンの「ノスタルジックな未来」という写真集があって、そこにあった以下の言葉もなにかしらのインスピレーション。

「生と死、夢と現実と、ノスタルジックな過去と未来は、互いに矛盾するものではない、それは一瞬の時間の流れでもある。」

で、カザシュンからの歌詞のオーダーは以下の通り。

①ノリとテーマは「80年代」
②懐古主義のようで実は未来への憧れ
③いつもの言葉遊びギミック

例によってムチャブリ。
ならば思いっきり楽しんじゃいましょう(笑)

こちらはてっきり闘病ソングだと思っていたわけですが、送られてきたのは80年代ポップスの雰囲気漂う、なんとも軽やかな曲。
1980年代という過去を想いつつも懐かしみたくはない。むしろ未来が見たいんだ、と。
だから仮タイトルが『NOSTALGIC FUTURE』なのね。

では今回は、1980年代を彩るアーティストたちの言葉にオマージュして書いていくとしましょう。
オーダー内容を見ているとつい忘れそうですが、一応「彼への応援」も忘れずに入れたいと思います(笑)

何度も繰り返すコーラス部分は英語で

曲を聴いてみると、始まって早々の歌い出し。
2番終わりでは同じメロディが歌メロと被っているので、コーラスなのでしょう。

コーラスは5文字の繰り返し。
5文字の日本語をリズム良く繰り返すと、アイドル歌謡っぽいうえに少々クドくなります。
なのでここは思い切って英語に。その方が、80年代ポップスっぽくなるし、繰り返してもあまりクドくない。

コーラス部分を直訳すると、「栄華の80年代の日々、夢のような80年代の夜、輝かしい80年代の生き様、私は80年代の精神を愛している」となります。最後に「Once more」、つまり「もう一度」。
ザックリ言うと、「あの華やかだった80年代よ、もう一度」と、当時を懐かしむようなコーラスから入ります。

コーラスの内容は、1番、2番、リフレインと進むにつれて徐々に変わっていくのですが、それは追々説明していきます。

歌詞は80年代ポップスへのオマージュ

カザシュンとの打ち合わせでは「サカナクションの『忘れられないの』みたいなノリでいきたいよね」という話も出ていたので、杉山清貴&オメガトライブの曲に使われているワードをたっぷり盛り込むことにしました。

「フォトグラフ」とか「トワイライト」とか、「そこ英語にする必要ある?」と聞きたくなるような、ナウでポップなワーディング(笑)
お気付きの方も多いかと思いますが、「キールのグラス」『ふたりの夏物語』に出てくるワードです。

他にも、PRINCESS PRINCESSBOØWYなど、様々なアーティストの80年代の楽曲から拝借しているので、元ネタを考えながら聴くとまた違った楽しみ方ができます。

全体を通して80年代のワードを引用していますが、実は一つだけ1979年の曲へのオマージュを込めました。
それも後ほど説明します。

1番の解説

Glory 80’s days Dreamy 80’s nights
Shiny 80’s life I love 80’s mind
Glory 80’s days Dreamy 80’s nights
Once more

ハーバーライトが映し出すDiscothequeは
ウォーターフロントのAvenue
ダンスフロアーは胸騒ぎのWonderland
ディスティニーが目を覚ますDramatic Night

Twilight Cityは鮮やか 瑠璃色のキャンバス
遠く浮かぶ 都会の街灯りだけ
キールのグラス片手に 飛び込んだRendezvous
シャイなAngelとウィンク交わしたら Shangri-laのようさ

1番の舞台は、華やかなりし1980年代後半の東京。
バブルの象徴とも言われたMZA有明のディスコシーン。

夜になりつつある瑠璃色の夕景をバックに、ハーバーライトと街灯りが浮かぶ湾岸のダンスフロアー。
当時流行したキールロワイヤルで乾杯、ウインク交わしたら君と恋に落ちちゃうよ。

こんな恥ずかしい内容を、小粋なカタカナ英語で誤魔化すのが80年代の流儀。
1番では杉山清貴&オメガトライブの楽曲を中心にワードを引用して、都会的で煌びやかな雰囲気を描写しています。

先ほど紹介した「キールのグラス」の他に、「ドラマティックナイト」『ガラスのPALM TREE』から、「Twilight City」『Twilight Bay City』から引用。どちらも杉山清貴&オメガトライブの楽曲です。

2番の解説

Glory 80’s days Dreamy 80’s nights
Shiny 80’s life I love 80’s mind
One more 80’s days One more 80’s nights
One more 80’s life One more 80’s mind

通り過ぎてくMemoryは眩くて
輝いてたPhotographさえ色褪せて
誰もが皆Juvenileに憧れて
Moonshineの甘い罠に酔いしれたまま

はしゃぎ過ぎた季節と 無くしたGeneration
醒めた素顔と孤独なカタルシスだけ
裏腹で邪な 虹色Loneliness
ムキにステレオタイプを繰り返す Time Machineのように

1番が終わるとコーラスが変化。
「One more 80’s days One more 80’s nights ~」と、もう一回80年代に戻ってほしいという心境の描写に変わります。

同時に歌詞のテイストも変化して、2番は少し後ろ暗さや空虚な気分が前に出てくる感じに。
元ネタも、カザシュンがリスペクトするBOØWYの楽曲を中心に、大人っぽくてシニカルな雰囲気を描いています。

昔の眩しい想い出を写した写真が色褪せても、若き日を懐かしむような戯言に甘える毎日。
はしゃいでいた80年代と、その後の失われた時代。憧れと現実の間で矛盾を抱える孤独な自分。
それでも判で押したように、過去への憧憬と無機質な毎日を繰り返すしかない。

2番の舞台は、80年代から数十年の失われた時代を経た現在

「Moonshine」というワードは、BOØWYの『MARIONETTE』から引用。
月光や密造酒という意味もありますが、ここでは「戯言」の意味で使っています。
「Loneliness」はいろんな楽曲で使われていると思いますが、私はBOØWYの『季節が君だけを変える』から引用しました。

ちなみに最後の「ムキに」は、①近視眼になる「ムキに」、②無期限の「無期に」、③無機質の「無機に」のトリプルミーニングです。
過去にこだわって、近視眼になって、延々と無期限に何度も、無機質にタイムループを繰り返す、という意味です。

1番とは真逆の、挫折たっぷりのネガティブな歌詞です。
これで終わったら救いが無いので、もちろんリフレインで巻き返しますよ(笑)

リフレインの解説

さて、最後のリフレインの解説の前に、以下の2つの点に注意して、もう一度歌詞を見てみてください。

①歌詞の中に風間瞬が隠れています
②リフレインの舞台はいつでしょうか

Glory 80’s days Dreamy 80’s nights
Shiny 80’s life I love 80’s mind
One more 80’s days One more 80’s nights
One more 80’s life One more 80’s mind

Good bye 80’s Days Good bye 80’s Nights
Good bye 80’s Life Good bye 80’s Mind
One More 80’s Days Next 80’s Nights
Oh Brand-new 80’s Life I’ll Make Once More

Curiosityが誘う風まかせのラビリンス
扉開いた瞬間が Brand-new Day and Night
わがままも気まぐれも どこまでもEndless  
街を彩るスイッチを手にしたら Cinema Starのようさ

風間瞬は見つかったでしょうか(笑)
昔あったCMソングの都市伝説みたいなシカケですが、彼の応援ソングなので、もちろん故意に入れてあります。
これで「言葉遊びギミック」のオーダーにもお応えできました。

2番の終わりと被る最後のコーラス。
前半では輝いていた80年代を懐かしみ再来を願うものの、後半では「Good bye 80’s Days」と別れを告げます。
そして過去にしがみつくのではなく、未来を向いて進もうと決意。

今一度、次の80年代を。新しい80年代を、もう一度自分自身でつくろう。

そしてリフレインでは、彼の実際のマインドと「過ぎた時代を懐かしんでも仕方ない」というメッセージ、未来への希望を表現しました。

どんなに先が見えなくても、好奇心の赴くままに進めば、そこには新しい一日が待っている。
わがままも気まぐれも、どこまでも叶えよう。次の新世界をつくるのは自分だ。映画の主役のように。

大病を患っても「生きて未来を見たい」という彼のメッセージを、そのまま歌詞に反映しました。落ち込んでいても仕方がない。自分の力で道を切り拓こう。という意志が感じられます。
次の80年代をつくるのは自分だ、という強い意志が。

全体として1980年代の楽曲から引用してきましたが、「街を彩るスイッチ」という歌詞は、沢田研二『TOKIO』へのオマージュです。
「やすらぎ知らない遊園地が スイッチひとつで真赤に燃えあがる」という歌詞をイメージしました。

『TOKIO』が世に出たのは1979年11月25日。沢田研二13作目のアルバム『TOKIO』の収録曲として発表されました。
そして1980年1月1日にシングル盤の『TOKIO』が発売。
午前0時の時報と共にパラシュートを背負った沢田研二がテレビに登場し、『TOKIO』を歌ったシーンを憶えている人もいるのではないでしょうか。

1979年の年末から1980年代の始まりを飾った曲『TOKIO』をオマージュすることで、80年代を改めてもう一回始めようという意味を込めています。

もう一曲は、サザンオールスターズ『ミス・ブランニュー・デイ』
こちらは分かりやすく「Brand-new Day and Night」という、ほぼそのままの引用。

『ミス・ブランニュー・デイ』という曲は、最初のレコードの発売は1984年ですが、それから8cmCD、12cmCD、ダウンロード配信、ストリーミング配信など、2019年までメディアを変えて何度も発売されています。
つまり「何度も復活した」楽曲なのです。

ちょっと闘病応援ソングっぽくなりました(笑)

最後に、「リフレインの舞台はいつでしょうか」という問題と、「懐古主義のようで実は未来への憧れ」というオーダーへの答えです。

One More 80’s Days Next 80’s Nights
Oh Brand-new 80’s Life I’ll Make Once More

「もう一つの80年代の日々、次の80年代の夜、最新の80年代の生き様、私がもう一度つくってやる」というコーラス。
1番が1980年代、2番が2020年代の現在。
そこから考えて「次の80年代」なので、2080年代のことを歌詞にしています(笑)

これ、ふざけているわけではなく、本当にカザシュンと話し合って決めた世界観。癌を克服して、2080年代まで生きて、未来のキラキラした80年代を見たいのだそうです。
これが「懐古主義のようで実は未来への憧れ」の正体。

人生100年時代ですからね。
iPS細胞など再生医療も進化していますから、2080年を迎えるのもそんなに無茶な話ではないかもしれません。

おわりに

「前回は平安歌人のパクリ、今回は80年代ポップスのパクリか!」と、お叱りを受けそうですが、パクリではなくオマージュですのでご容赦ください(笑)

今回は、闘病に臨んで生死を意識したカザシュンの「過去も良いけどやっぱり未来」という心境や希望と、80年代オマージュのメロディがあったので、過去の皮を被った未来の歌が出来ました。

レコーディングまで時間があったので、タイトルも「あーでもない、こーでもない」とギミックもたっぷり考えたのですが、最終的に『BRAND-NEW YESTERDAY』になりました。
意味的には「時代の先ゆく懐かしさ」といった感じでしょうか。
仮タイトルだった『NOSTALGIC FUTURE』の「ノスタルジックな未来」とは逆ですが、むしろ前向きになった気がします。

次の新曲はいつになるでしょうか。
2080年までは50年以上あるので、ゆっくりいきましょうか(笑)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?