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【ホラー】黒い写真

あなたのスマホに、消したい写真は残っていませんか?

今回は、そんな呪われた写真にまつわる本格的な怪談話をお届けします。
夏休みに山に登った仲良しの女子大生三人。
素晴らしい風景を前に記念撮影をするのですが、主人公の美優の写真に異変が!
このあと三人が見舞われる恐ろしい顛末については……ここでは書けません。

これを聞いてスマホの写真を見ることができなくなっても当方は責任が取れません。
怖い話が苦手な方はお聞きにならないことをおすすめします。

*************
▶ジャンル:ホラー

▶出演

  • 美優:原田有紀(東北新社)

  • 紗里:吉田千恵(東北新社)

  • 七海:關明実(東北新社/OND°)

  • 藤田:花澤和彦(ティーエフシープラス)

  • 滝口:稲村忠憲(オムニバス・ジャパン)

▶スタッフ

  • 作/演出:山本憲司(東北新社/OND°)

  • プロデュース:田中見希子(東北新社)

  • 収録協力:映像テクノアカデミア

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『黒い写真』シナリオ

登場人物
 美優みゆ(21)大学生
 紗里さり(21)美優の友人
 七海ななみ(21)美優の友人
 藤田(49)警官
 滝口(27)警官

   険しい山道を登る足音。
美優「ほらあと一息だよ」
七海「あたしもうダメ~ー」
紗里「しっかりしなよ、七海!」
美優M「大学の仲良し三人組の私たちが登山をしたのは、夏休みの終わりのことでした。山頂に着くまでは何の変哲もない、ただただ平和で楽しい登山だったのです」
美優「着いたー!」
七海「やったー!」
紗里「疲れたー!」
   水筒の水をごくごく飲む。
紗里「美優、あたしにもちょうだい」
美優「はーい」
七海「ねえねえ、写真撮ろうよ。記念写真」
美優「いいよー」
紗里「ちょっとちょっと準備するから待って」
美優「じゃ行くよー」
   間髪置かずにシャッター音。
紗里「もぉー早いよ」
美優「紗里が遅いんだよ」
紗里「あたしー?」
美優「うそうそ。ちゃんと撮ろ」
七海「じゃああたし撮ってあげる」
美優「オッケー」
紗里「ちゃんと入ってる? 富士山、ねえ」
七海「もう大丈夫大丈夫。はいはい、笑顔くださーい」
   シャッター音。
紗里「どう?」
七海「おーいいの撮れたー」
美優「じゃあもっかいあたしが撮るね。行くよー!」
   シャッター音。
紗里「もー、美優、タイミング最悪」
七海「そうだよ。準備さしてよ!」
美優「……うん?」
紗里「美優?」
美優「……おかしいな」
紗里「何?」
美優「真っ黒。撮れてないかも」
七海「だからぁ、あんたシャッター早すぎなんだって。もう一回ね」
美優「うん。じゃあ行くよ。ハイ、チーズ」
紗里・七海「(口々に)古っ、昭和かよ!」
   シャッター音。
紗里「もう、ちゃんと撮れないの?」
美優「あれぇ……?」
七海「美優はヘタクソすぎるんだよ」
紗里「じゃああたしので撮る? じゃーん、13ゲットしました~」
七海「早っ。あ、ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」
紗里「りょうかーい」
   駆けていく足音。
美優「ちょっと紗里、二人で撮っていい?」
紗里「どした?」
   シャッター音。
美優「撮れてるよねー……押し方かなぁ」
紗里「なに?」
美優「それがさあ……」
紗里「ちゃんと撮れてたじゃん」
美優「あたしと紗里は写ってんじゃん。これね、紗里。これあたし。これはあたしと紗里。その前に紗里と七海を撮ったじゃん」
紗里「撮ったね。え、真っ黒」
美優「ね? 何で? 七海が写ってるはずのやつだけ真っ黒。なんで? なんで七海だけ写んないの?」
紗里「こわ(笑)、怖すぎ!(笑)」
   突然向こうから女性の悲鳴。騒ぎ。
美優「なんだろ」
紗里「人集まってるな。熊でも出たかな~」
美優「出ないでしょこんなとこ熊」
紗里「あれ、つーか七海は?」
美優「まだトイレ並んでんじゃない?」
紗里「ねえ、ちょっと見に行ってみない?」
美優「えーいいよ……」
  駆ける足音。
紗里「すごい人だかり。見える?」
美優「エーッ!!」
紗里「美優……? いやーーーっ!」
美優M「崖の下にあったのは、手足があり得ない方向にぐにゃぐにゃに曲がって血まみれで死んだ、七海の姿だったのです」
   警察署内。
   足音近づく。
藤田「県警の藤田です。こっちは滝口」
滝口「どうも」
美優・紗里「よろしくお願いします……」
藤田「大変だったね」
美優「はい……」
藤田「さっき君たちから聞いた話を大体まとめたんで、悪いんだけどもう一回確認してくれるかな」
紗里「はい」
美優「あの……」
藤田「何?」
美優「信じてもらえないかもしれないんですけど……」
紗里「やめときなよ美優」
藤田「いいんだよ。何でも話してみて」
紗里「いえ、信じてもらえないと思うんで」
藤田「話してみなきゃわかんないよ」
紗里「いえ、結構で──」
美優「写真、撮ったんです」
紗里「美優!」
藤田「写真?」
美優「なんでかわかんないんですけど、あたしたち三人のうち七海だけ……死んだ七海だけが写ってないんです。真っ黒で……」
藤田「あー……なるほどなるほど。そりゃあ大変だったね」
美優「ほんとなんです!」
藤田「うん。あとはじゃあこの滝口が君たちの話を聞いてくれるから、ね。(滝口に)あとよろしく」
   足音、行く。
紗里「すいません……変な話して」
滝口「俺、信じますよ」
美優「え?」
滝口「だってウソついてる顔じゃないもんね、君たち」
美優「はい」
滝口「見せてくれますか?」
美優「あ、はい」
滝口「うん……うん……たしかに……」
美優「でしょ?」
滝口「でもアプリの調子がおかしくてたまたま彼女だけ写らなかったっていう可能性もありますよね」
紗里「やっぱり信じてくれてないよ」
滝口「いや、信じないわけじゃないんだ。ただ……そんな風に自分のせいみたいに思わないほうがいいんじゃないかなって。きっと偶然ですよ」
美優「そうですね……ありがとうございます」
滝口「ちょっと貸して」
   シャッター音。
滝口「ありゃ~、俺もだ。ほら」
美優「え?」
滝口「俺写してみたの。ね、ほら、俺も真っ黒。こんなこと、全然あるでしょ?」
美優「ほんとですね(かすかに笑う)」
紗里「美優のせいじゃないんだからさ。気にしないほうがいいよ」
美優「そうだね……滝口さん、ありがとうございました」
滝口「うん。それじゃあ俺は、君たちの車の手配してくるから。(小声)外、マスコミすごいからね」
   足音、行く。
紗里「なんかいい人だね」
美優「うん……」
   ×     ×     ×
   騒ぎ。
   走り回る足音。
紗里「なんかあったのかな」
美優「え……?」
   足音が来る。
藤田「ちょっと君たち、部屋、戻って待っててくれる? あとで送ってあげるから」
美優「どうかしたんですか?」
藤田「いやー、さっきの若い警官いたでしょ、滝口」
紗里「滝口さんどうしたんですか?」
藤田「言いにくいんだけどさ……実は、マスコミの車を誘導してたんだけど……」
美優「はい」
藤田「車が暴走して壁に挟まれちゃって、こうグチャッて」
美優・紗里「エーッ!」
藤田「即死だな、ありゃ」
美優・紗里「……」
藤田「シャレになんないよなー、署内で事故なんて。ね、だからちょっと待ってて」
紗里「うそだ……うそだ……」
美優「やだやだやだやだやだーっ!」
   救急車の音、去っていく。
美優M「その日以来、私は自分のスマホで写真を撮ることができなくなりました。私のスマホで真っ黒に写ってしまった人は死ぬのです。そして、真っ黒な写真たちは、削除しようとしてもなぜか消すことができないのです……」
                              〈終〉

シナリオの著作権は、山本憲司に帰属します。
無許可での転載・複製・改変等の行為は固く禁じます。
このシナリオを使用しての音声・映像作品の制作はご自由にどうぞ。
ただし、以下のクレジットを表記してください。(作品内、もしくは詳細欄など)
【脚本:山本憲司】
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