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「コミュニティ」と飲食店(6.共有編)

IT業界でユーザーコミュニティの立ち上げに関わってきなかで、これまでなんとなく感じてきた

「コミュニティ」と飲食店は似ている

ということを、要素分解して考えてみることにしました。コミュニティの理想形は、飲食店の理想形と似ているのではないか?その仮説を検証する試みです。今回の「共有」とは、飲食店の評価を他の人にSNSで共有する場合を想定して考えてみます。SNSが普及した現代では「ULSSAS」モデルと言われる客自身が自分のSNSアカウントで「共有」する行動が行われることが多くなったためです。

評価の共有

飲食店を後にして評価を共有する際、どんなことが考えられるでしょうか。自分が飲食店をSNSで共有する行動を、コミュニティと比較してみます。

"インスタグラマー"の共有

飲食店での体験をSNSで共有する人の多くは、プラットフォームとしてInstagram、Facebook、Xなどを用います。特に「グルメ投稿」としてシェアがあるのはInstagramでしょう。ある調査では飲食店がSNS集客を行う際のメディアの6割がInstagramでした。グルメ用SNS=Instagramという現状が伺えます。

ではこの"インスタグラマー"による飲食店の投稿には、どんな動機があるでしょうか。

・注目を集めたい(利己的欲求)
・ファンを集めたい(利己的欲求)
・記録をつけたい(利己的欲求)
・人の役にたちたい(利他的欲求)
・街の役にたちたい(利他的欲求)

などが考えられますが、そのきっかけは利己・利他の欲求があり、それを満たす「ツール」としてSNSを用いていることが多いといえます。逆にいえば、自分か他人に「メリット」がなければ「共有」が起きないともいえます。

コミュニティでの「共有」

それでは、コミュニティで「共有」が起きるときを想定してみます。オンライン・オフラインのイベント(Meetupやカンファレンス)が行われたときに、

・リアルタイム実況(Xなど)
・参加レポート(ブログ、Facebookなど)

の共有がSNSを介して行われることが多いと認識しています。コミュニティは「個」の活動のため、会社の同僚や上司、知人に口頭で伝えることは機会としてはそう多くないのではないでしょうか(会社全体としてコミュニティ活動に協賛している等を除く)。このため、コミュニティでの共有とはあくまで「個人の感想」が述べられる場であるといえます。

ギブ&テイク

企業活動で何らかのセミナーやイベントを行った際の「アンケート」回収率は非常に低いと一般的に言われています。10%とも、1%とも言われます。これをコミュニティに置き換えると、

・提供側(極少数の"ギバー")
・享受側(多くの"テイカー")


とその構成比率には大きな開きがあり「相互扶助」の性質をもつコミュニティ(これはIT業界に限らず地域コミュニティ等でも同一)とすれば、

享受する側は何らかの”ギブ”をすべき

ともいえます。このことから、リアルタイム実況や(会場実施の場合)笑いや声などのリアクション、事後のイベントレポートなどで

提供側と享受側のギブ&テイク

の状態が理想的だといえるでしょう。実際にコミュニティを運営したり、イベントを主催したりするとわかることですが「非常に多くの対応事項」が発生します。そして多くのコミュニティが営利を目的にしたものでないため、

何もギブしない人
飲食だけ目的の人

は同じであると言える側面もあります。飲食目的の人は悪質性が高いのでよく話題にのぼりますが、実はコミュニティにおける提供側と享受側はフラットな関係性である(べき)という観点を持つことが大切でしょう。

ただし、その「ギブ」の仕方がわからない、怖いという人もいます。SNS投稿でのプライバシー管理は人によって価値観が異なりますし「自分にはブログなんてとても無理」という人もいると思います。そんなときは過去に好評だった #note がありますのでよろしければご覧ください。どんな小さなことでも「行動=アクション」することから、全ては始まります。

コミュニティ(やイベント)は、実質コスト的には「無料」です。しかし、「おカネに換算できない価値の交換」という観点でみれば、享受側も何からかの「ギブ」をコミュニティに対して行えば良い関係性が長く保てるのではないでしょうか。コミュニティが滞る原因に、運営(提供)側が「すっかり疲れてしまった」ということも多いからです。コミュニティの”栄養源”は、享受側からも「何らかが返ってくる」という双方向のやりとりなのです。

コミュニティ経済

前述の「おカネに換算できない価値の交換」という表現については、池松潤 @jun_ikematsu 氏の #note に着想を得ました。このなかで池松氏は「SNS以後の消費の特徴」を「体験だけ」から「体験と共感の両方」へ価値がシフトしたと説明しています。

「共有」まとめ

今回の考察をまとめると、以下のようになります。

・個人のSNS投稿は利己・利他的な欲求が動機
・コミュニティでは提供者側が圧倒的な「ギバー」
・享受する側も「ギバー」を意識すると対等になる

飲食店とコミュニティが似ている、とすれば「美味しかったです」の言葉や「Instagramや口コミサイトへの投稿」「リピートする」などの「小さなギバー行為」がなによりの”報酬”であるように、コミュニティ運営者もまた「SNS共有」「レポート&投稿」「誰かを連れてくる」などの実質的なアウトプットがあると嬉しいものです。

美味しかったと言うのは恥ずかしいけど
イベント参加レポートは大変だけど

それが提供者側にはなによりも嬉しいのです。ぜひ「共有」行為という小さなギバーになってみることをおすすめします。

これまでの考察(1.認知編 2. 関心編 3.入店編 4.実食編 5. 会計編) もよろしければご覧ください。

#コミュニティデザイナー
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