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僕たちは「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」に生きている

そもそも経済とは、物々交換から始まりその歴史の中で物を交換する価値の担保や尺度としてお金が発明されました。 ヒトは便利さをお金で買ってると言っても過言ではありません。しかしこの直近5年くらいでしょうか。ネットやSNSの普及で、それがガラリと変わってしまったように感じます。

「お金で交換できる経済」「お金だけで交換しない経済」の2つの経済圏。

前者は従来からの資本主義経済であり、物々交換に比べて効率的で便利ですがお金に振り回されたり価値が変動したりします。

後者は「無形資産も含めた物々交換」でお金に依存しません。近年では緩い(低体温型の)コミュニティにも顕著に見られます。もともと地域コミュニティに向いていますが、流動性が低いので効果が限定的です。

この2つの経済は単なる補完関係なのでしょうか。この直近5年くらいのネットやSNSの普及による価値観の変化に伴って、関係性の風向きが変わったように感じます。

この構造変化は私達にどのような影響があるのか。新しい未来はどう作ればいいのか。未来のためのアウトプット5,000字超😊超ニッチなハナシですがどうぞお付き合いください。



1:そもそも経済って何? 

一般的には財やサービスを生産・消費・分配する活動の総体と考えられます。しかしこの定義では「お金だけで交換しない経済圏」が見えにくくなります。家族や地域コミュニティとの関係や、ボランティアや寄付といった社会貢献は、お金では計れない価値があります。

SNSやブログなどのネット上でのコミュニケーションや情報共有は「知恵」や「感情を交換する場」であり、それらは無形資産であり、新しい経済活動と言っていいのではないでしょうか。

経済とは・・・
人々が「幸せ」を生み出すために財やサービスを生産・消費・分配する活動の総体であるということ。「幸せ」とは、お金だけではなく健康や教育や文化や環境など様々な要素から成り立っています。

つまり「幸せ」を生み出すためには「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」の両方の必要感が深まっています。ネットやSNSが普及したことで、経済の意味も変化してきたのだと思うのですが、その理由をもう少し深掘りしたいと思います。


2:SNS以前と以後で変化した消費とは? 

ネットやSNSが普及で変化した消費側について、SNS利用の以前と以後でどのように価値観が変化したのでしょう。

◆SNS以前の消費の特徴
お金で交換できる商品やサービスが主流でした。消費者は自分のニーズや欲望に応じて商品やサービスを購入しました。「お金」が価値の尺度であり、「交換」が関係性の基盤でした。
これを乱暴に例えて言うなら、有名人が行く西麻布のフレンチに行けば満たされるような価値観です。つまり「体験価値」が大事でした。

◆SNS以後の消費の特徴
お金だけで交換しない商品やサービスが増えました。消費者は「推し」などの感情や美意識や価値観に応じて商品やサービスを選びます。企業は信頼や感動などエンゲージメントを高めるために商品やサービスを開発・販売するようになりました。この消費活動では「知恵」が価値の尺度で「共有」が関係性の基盤になってます。
これを乱暴に例えて言うなら、有名人が行く西麻布のフレンチで食べることに加えて、Instagramでいいね!されるのが悦びに変容しました。つまり「体験だけ」から「体験と共感の両方」へ価値がシフトしたのです。



3:生産者側の変化は?

では、消費側とは反対側の生産者側はどう変化したのか?「需要を産みだす方法」はどのような変化をしたのでしょうか。

需要(ニーズ)とは多種多様にありますが、最近わたしは「ソーシャルアパートメント」というお手伝いさん付きのシェアハウスに住んでいます。というわけで、不動産業を例に取り上げたいと思います。

「ソーシャルアパートメント」や「サービスレジデンス」と呼ばれる新しい住宅形態には、住民同士が共有スペースや設備を利用してイベントなどを開催したりすることで、コミュニティを形成することを基本機能として装備しています。

従来の住居に求める「快適さ」や「安全」だけでなく「つながり」や「学び」の機会を提供しているわけです。

需要の変化

転職や副業が一般的になって人間関係のあり方も変わりました。住むための要件や価値観が根本的に多様化した影響が大きいと考えられます。

このような新しい知恵が生み出す商品やサービスは「人々の心に訴えるもの」(共感)だと言えます。

入退居者・歓送迎会の様子

都会に失われた「つながり」を感じる空間には、緩さのなかに「共感」が生まれているのを感じます。それは田舎特有の閉塞感や窮屈さを感じさせるものとは違います。参加したくなければ、共有空間に行かなければいいのです。この「共感」はフラットで選択する自由があります。

七夕の飾り付けをするのも住人の心遣い

ハウスキーパーさんが毎日くることで、キッチンなどの共有部分をお掃除やメンテしてくれます。そのため家賃はシェアハウスより高めになるのですが、それが住む人をある意味で選択しているので、一定レベル以上のひとが住んでいるように思えます。たとえば、コミュニケーション力が高く思慮があるため共有部分での生活習慣の違いによる問題は起こり難い感じがしてます。

防音室で音楽演奏会をやるひとたち

それから、このような空間は、海外のヒトが日本で生活するのに向いていると思います。新しい「学び」や「共感」は「異なる」ことを楽しむことから生まれるのだと実感しています。

納涼・流しそうめん会をする人たち




4:なぜ「共感」に価値がシフトしたのか?

若い世代と話していると感じる価値観の変化に「意味」とか「共感」があるのですが、なぜ「共感」がないとお金を払うのが気が進まないのでしょうか。「共感」の構造を経済学の面から紐解きたいと思います。

下記図は、経済学の【需要と供給の図】です。この青線で描いた需要曲線と、需要量と供給量が交差するところで「値段」が決まります。

その時に「消費者余剰」があります。これは言い換えると「消費者が買ったときに感じる幸福度」と考えていいでしょう。図の水色で塗りつぶされた面積です。

このヒトは下の「紫で示した点」で買ったのですが「緑の点の価格」までお金を払ってもいいと思っている。つまり下の「紫の点」の価格で買えたのでラッキーな状態と言えます。

しかし現代の供給曲線は、下図のオレンジ色で示した線で、右肩が下がりでフラットになってきてます。「消費者が買ったときに感じる幸福度」(消費者余剰)が、ピンク色で塗りつぶされた部分になっています。さっきの水色より大きくなってるわけです。いわゆる「限界費用ゼロ社会」と呼ばれる現象です。

Amazonプライムに入っていれば月額500円で何本も見られるし、テレビがなくてもスマホでYouTubeのおもしろコンテンツが見きれないほどあります。勉強しようと思えばググってYouTube動画解説から学べるし、メルカリで売ったり、ジモティで集会できる部屋を探したり、インスタやTiktokで普段行かない街のランチを探してネット予約できます。こうやって考えると購買で得られるハッピー度は下がっているのも無理もない。

いままでの商品やサービスを「消費者が買ったときに感じる幸福度」(追加のハッピー度)が薄まっている理由は「青」と「ピンク」の面積の差にあるのではないかと言われています。

もう価格には意味がない?若者が「お金を払いたい」と思うものとは? 【尾原和啓×入山章栄】対談より引用

限界費用ゼロ社会とは・・・
モノやサービスを作るのにかかるお金がほぼなくなっていく社会のこと。例えば、手紙を書くのには紙やペンや切手が必要ですが、メールを送るのにはネットにつながったパソコンやスマホがあればいい。Wifiに繋げばメールを送るのにかかるお金はほとんどないので、限界費用はゼロに近いと言えます。このように、ネットやデジタル技術の発展によって、モノやサービスを作るのにかかるお金がどんどん少なくなっていく社会が限界費用ゼロ社会です。

ネットだけではありません。例えば、イオンや西友のお惣菜が激安いのは流通状態が良くなって大量販売が可能になったからでしょう。特に日本はこの30年間にほとんど経済成長していません。

そんな状況で20歳代は「こんな金額でこんなに恵まれているのが当たり前」という感覚で育っています。生まれた時からたくさんのコンテンツが無料で使えたり、安い値段で映画が見られたりしている。それが当たり前の時代に育っています。

「モノからコト消費」とは十年以上前から言われていますが、そうなるとコスパではなく「推し」とか「共感」とか「その意味」に価値観がシフトする理由はこの辺にあるのではないでしょうか。



5:お金だけで交換しない経済の役割は?

「お金で交換できる経済」(既存経済)の限界については多くの人が感じている事だと思います。コスパとは割り算です。割っても未来は生まれません。

「推し」とか「共感」とか「その意味」に価値観がシフトすると
「お金だけで交換しない経済」は「お金で交換できる経済」を補完する弱々しいものではなく、多くの人に幸せを増やす「チャンス(機会)」なのではないか?と感じることが多くなりました。

「お金で交換できる経済」(既存経済)と「お金だけで交換しない経済」(コミュニティ経済)が、いまより”太い”相互関係になると、新しい経済循環が生まれて「経済の器」が大きくなるのではないでしょうか。

経済は、本質的に資本主義経済に参加者や参加エリアを増やすこと、つまり「経済の器」を大きくすることで成長してきたからです。ただしココには柔らかいアタマが必要です。それは既存経済にどっぷりのアタマではなく、新しい真っさらなアタマが必要です。それを才能とセンスと呼ぶのでしょう。

なぜこんなハナシをするかと言うと「単なるアイデア」で成長するのは難しくて、あらゆるスポーツに形があるように、あたらしい経済にも「基本の形」は必要だと思うからです。


【経済の器を大きくする方法・案】

1:「お金だけで交換しない経済」が具体的な需要創造の案を増やす
(これはスタートアップを増やすだけとは限らない)
2:「お金で交換できる経済」(既存経済)が「お金だけで交換しない経済」(コミュニティ経済)を応援する。
(資本注入ではなく応援注入※という新しい手法を編み出す)
3:「お金で交換できる経済」(既存経済)と「お金だけで交換しない経済」(コミュニティ経済)が新しい関係になる。経済の器が大きくなる。
(新しい経済循環が発生する)

既存経済の資本を増やすとは、主に金融機関やベンチャーキャピタルなどから必要な資金を借り入れたり出資を受けたりすることです。この場合資本提供者は事業の成功に応じて金銭的なリターンを得ることが目的になります。

一方(クラウドファンディングなど)応援注入※を集めるとは、ネットを通じて多数の人に呼びかけ、趣旨に賛同した人から「お金の利便性を使って応援を集めること」です。リターンは多種多様でこの場合の特徴は共感や人間関係から生まれます。

この2者の関係は水と油のように感じるでしょうけど、株式型クラウドファンディングなど、その他にも多様な手法が生み出される予感がします。

【既存経済との中間機能】
ひろのぶと株式会社・田中泰延さんの会社が、株式投資型・クラウドファンディングで4千万円を27分で完売(資金応援調達)を見ていると、不特定多数の人々から少額ずつ応援(資金)を集める機能を活用するなど、「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」の中間機能が多様化していくのかもしれません。



6:大きな変化は10年単位で起こる

冒頭にお話したように、そもそも経済は物々交換から始まって、その歴史の中で物を交換する価値の担保や尺度としてお金が発明されました。 ヒトは便利さをお金で買ってると言っても過言ではありません。しかしこの直近5年ネットやSNSの普及でそれがガラリと変わってしまった感じがします。

この変化の特徴は以下の3つに言い表せるのではないでしょうか。

あえて半世紀生きてきた体験的な感覚を述べると。「お金で交換できる経済」(既存経済)が「お金だけで交換しない経済」(コミュニティ経済)の2つは、ネット販売が拡大してきた2006年頃の「リアル小売」と「ネット販売」の関係性に似ていると感じます。

当時こんな会話が博報堂の役員会で話されていた事を覚えています。「Amazonや楽天の広告宣伝費の伸びは凄い。でも1車種で70億円も売上る自動車会社の宣伝販促費にはまだまだ及ばない」。梅田望夫さん著「ウェブ進化論」がビジネスマンの必読書だった頃です。あれから13年後の2019年にテレビ広告がネット広告と逆転するとは誰が思ったでしょう。逆転するとしてももっと先のことだと思われていました。

ここから学べることは「大きな変化は10年単位で起こる」ということ。未来に投資しないとどうなるか。ということです。

電通「日本の広告費」より


「お金で交換できる経済」(既存経済)
の象徴である東証プライム市場(22年度)の1日平均・売買代金は3兆2,777億円。かたや「お金だけで交換しない経済圏」(コミュニティ経済)の統計数字はありませんが、比較にならないほど小さいでしょう。しかし「お金だけで交換しない経済圏」の伸び率は大きい。これは何を意味するのでしょうか。

あと8〜12年くらい(2030年代)すればコミュニティ経済はもの凄く大きくなるかもしれない。ならないかもしれない。誰にもわからない。だからこの記事をいま書いています。

半世紀にわたるビジネス変遷の現場を見てきた私には「変化は待つもの」ではなく「変化は起こすもの」だと感じます。つまりやったほうが早い。未来がどうなるかなんて誰にもわかりません。未来は自分たちで切り拓くものです。

未来は若者のためにありますが、その未来を切り拓くには「前提となる手法や知識」が必要です。そして鋭すぎる視座とも言える「神の視点」を持つこと。そして「オモロい」こと。それをシェアしたかった。

オマエいったいナニ言ってんだ状態かもしれませんが、皆さんはどう考えますか?

正解のないハナシをしましたが、これからもよい知恵を出して具体的に貢献できればいいなと思います。そして色んな方たちとディスカッションする機会が生まれたら嬉しいです。

貴重なお時間を割いてココまで読んで頂き感謝です。またリアルでnoteでお会いしましょう。

※続編を書きました▼


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