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金メダルはビタミンEのおかげ

 前回は、ビタミンCについて書きましたが、今回はビタミンEについて、スポーツの話に絡めて紹介してみます。参考書籍は、三石巌先生の「ビタミンE健康法」です。

1.ビタミンEの効用


 ビタミンEの基本的作用は、①抗酸化 ②細胞情報伝達 ③生体膜安定化 と言われ、「若返りビタミン」(全身の細胞の死亡率低下、性ホルモンの増産)とも呼ばれています。生体膜にフィットし、13種類のビタミンの中で生体に最も多く存在する脂溶性抗酸化物質です。

ビタミンを摂る前に、全ての体内活動のベースとなる代謝を活発にするために、主酵素であるタンパク質の十分な摂取が推奨されていることは強調したいと思います。

本来、ビタミン一般の役割は補酵素だが、ビタミンEは細胞の傷害を救う作用がある。このような2つの作用を持つビタミン(ビタミン様物質)は、ビタミンE,C,B2,コエンザイムQ10がある。補酵素作用は、主酵素があって始めて実現する。主酵素がタンパク質であることからすれば、補酵素が役割を果たすためには十分なタンパク質がなければならない。

2.(酸素を必要とする激しい)スポーツにビタミンEは効く


 ビタミンEの抗酸化作用、つまり活性酸素の中毒を防ぎ、不飽和脂肪酸の自動酸化を防ぐことは、誰にとっても十分な価値がある。
不飽和脂肪酸の自動酸化が大量の酸素を食うことはすでに述べた。一方スポーツのような激しい筋肉の運動も、大量の酸素を要求する。従って、不飽和脂肪酸の自動酸化と筋肉とは、酸素の奪い合いをすることになる。もしここで、不飽和脂肪酸の要求を全面的にカットすることができれば、筋肉は大いに助かるだろう。そこにおいて、ビタミンEは決定的な役割を演じることができるのだ。

 酸素不足の状態での競技を強いられた1968年のメキシコオリンピック(会場のメキシコシティは標高2240mの高地)では、各国選手は低酸素を戦うためにビタミンEを利用しました。日本選手団は15000錠のビタミンE剤をもって大会に臨んでいます(三岩先生は、それでは十分でなかったと語っています)

 オーストラリア代表の水泳陣は世界記録をいくつも出したが、オリンピックの半年前から、選手に揚げ物を禁じて、大量のビタミンEを与えた。(揚げ物を断つことで、不飽和脂肪酸の量を低く抑えれば、酸素の無駄を節約できる)

 生体内で酸素を要求する臓器は、筋肉だけではありません。また、様々なスポーツにビタミンEが使われて、効果を上げている理由は、酸素節約のみならず、筋肉を収縮させるエネルギーの源泉に関わっているとします。

 持続的に、いわば定常的に筋肉の収縮、すなわち、マラソン、サイクリング、水泳等のようなスポーツにおける筋肉の収縮に要するエネルギーは、血中脂肪酸や筋肉内グリコーゲンから供給される。これに反して、短距離走におけるスタート、野球の投手の投球、跳躍における踏切り等のような、瞬間的に行われる筋肉の収縮エネルギーは、筋肉内クレアチンリン酸から供給される。従って、これの蓄積量の多いことは瞬発力を強大にするための条件になるが、ビタミンEはこれを可能にする。 このことは、ビタミンE欠乏状態に置かれた人の尿に、クレアチンリン酸が発見されるという事実によって証明されたといえよう。

3.食生活で気をつけるべきこと

 ビタミンEの役割は、不飽和脂肪酸が過酸化して、過酸化脂質の合成が抑えられ、酸素の浪費を防ぐこと。これについて、本書ではこのように紹介されています。

 実を言うと、不飽和脂肪酸の自動酸化を抑制する作業は、ビタミンEの独占ではない。みかんに含まれるクエン酸、ごまに含まれるセサモール、野菜や果物に含まれるビタミンC,生姜に含まれるジンゲロン、コーヒーに含まれるコーヒー酸、緑茶に含まれるクロロゲン酸、紅茶や野菜に含まれるフラボンなどにも、それはある。
 この点からみると、不飽和脂肪酸の多いサバやサンマなどの料理、揚げ物などに生姜を添えるような習慣も、食後に緑茶・コーヒー・紅茶等を飲む習慣もそれなりに評価はできる。しかし、それらの酸化抑制物質の摂取量はあまりに少ない。意識的に服用するビタミンEと比較したら、量の点で全く問題にならない。

この記載が、メガビタミン主義につながっていきますが、また別の機会に。


抗酸化作用を発揮して、不飽和脂肪酸に水素原子を提供した後のビタミンEは、システイン(アミノ酸の1種)から水素をもらって直ちにもとに戻り、不飽和脂肪酸の酸化抑制に、再び乗り出すのである。システインは、メチオニンと共に含硫アミノ酸と呼ばれ、日本人の食習慣ではとかく不足する。
 含硫アミノ酸の給源としては、麩、湯葉、高野豆腐、たらこ、いくらなどがあるが、手近な点でも量の点でも、卵に勝るものはない。システインがなかったら、せっかくのビタミンEもフルに動けないと考えて良い。


(補足)

※ 本書では、抗酸化物質の筆頭として、セレンも紹介されてます。

この半金属(セレン)はもともと土壌に含まれている関係上、作物に吸収される性質を持っている。無論、このセレンの土壌中濃度は地域によって異なるが、我が国にはこれが極端に少ない地域はないと言われている。しかし、我々の体内では不足しがちなミネラルのひとつとされている。セレンの含有率の特に高い食品の例は、朝鮮人参・ネギ・ニンニク・ごまである。この半金属の次にくる抗酸化物質はビタミンEである。ビタミンEの抗酸化作用の強さは、セレンの1/100に足りないが、安全な点に特色がある。



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