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「ぽたぽた焼きの正しい食べ方」

仕事中に小腹が空いた時、女性社員から差し出されるチョコやクッキーは、たまらなく心が満たされる。

それも美人社員からオシャレなスイーツなんて差し入れてもらえると…
(もしかして?)なんて淡い期待すらしてしまう。
それくらい男子の三大欲求はシンプルに発動する。

ある日、パソコンの画面とにらめっこしていた私に派遣社員のNさん(♀)が
「ぽたぽた焼き食べます?」と、なんともレトロなお菓子を差し出してきた。
「ありがとうございます」と、遠慮なくいただき袋を開けた。

あたりの社員に配り終えたNさんは近くの女性社員に
「ぽたぽた焼きの正しい食べ方、知ってます?」とカマし始めた。

すでに食べ終えていた私は…
(おいおい、待てよ。軽くレンジで温めるとカントリーマームが美味しくなります、みたいな、仕事中には不向きなくだらない事を言い出すんだろう。どうせ…。)
と、聞き耳を立てていた。

「甘くてザラザラした表面が舌のほうに来るように食べるんです。」
「下でなく舌」だという事は、すぐに理解ができた。
想定外の回答が来たため、ぼんやりと考え込んでしまった…。
(ちょっと待てよ。これ、地味に深いな…。
例えると、おっぱいが綺麗な女性の背中ばかり愛撫して、性交渉を終え
「あの子食べたよ」ってドヤ顔している男子高校生のようなものじゃないか!)と…。
もしかして、ぽたぽた焼きに対して、そんな失礼な抱き方をしていたやもしれない…。

「胃に入れば同じ、摂取したカロリーも同じ」
しかし、満足感はまるで違う。

美術館を出た後に「さっきの廊下にピカソの絵が飾ってあったの見たでしょ?」とドヤ顔で言われたら…。出口から慌てて逆走するだろう。

腸を逆流させるのはしんどいので、せめて最高に楽しんだ後に胃に落とし込みたい。
そう思うと今までの行動すべてに「正しい答えがあったのでは?」という仮説が立つ。

昨日、見た景色
昨日、食べたもの
昨日、嗅いだ匂い
それらは、正しく味わえていたのか。
ぽたぽたと思考が止まらないながらも、一つの答えを捻り出す。


「正しいかは分からないが、自分なりに試行錯誤を繰り返し、今を最大限楽しもうとする姿勢」これが大事なんじゃないか?
ふくよかな体型をしているNさんの見方が「怠け者」から「教えを乞うべき人」へと、ガラッと変わった。

ぽたぽた焼きに表裏があるように、目の前の事に対して見方を180度変えるだけで人生は急激に味わいを変える。

だから人生もお菓子もやめられないである。

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