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山陰の有名酒蔵の蔵人による酒の話【後編】


↑の中の人です。

前半の続きです、なになに??と思われた方は

まずひとつ前の記事をお読みください♪


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実は、麹作りは酒造のなかでもちょっと特殊な作業なのです。


酒造りは現代では冬に行われることが多く、それは低温の方が雑菌が繁殖しにくく、日本酒造りで重要な酵母(や乳酸菌)の管理がしやすいからです。


しかし、麹の発育適温は35度くらいだから、麹を作る部屋だけは冬でも夏の気温が保たれます

日本酒造りが産業として大きく発展するのは室町以降(特に江戸時代の元禄くらいから)ですが、

中世の時代には、酒造と麹作りは分業化されていたそうです。


各地に麹座という一種のギルドがあって、酒造りをしたければ、麹座から麹を買ってきて仕込む他なかったようです。

麹座は宗教勢力と結び付き既得権益化して、酒屋が勝手に自前で麹を作ろうとしたら、麹室をうち壊しにいくような過激なこともやっていたみたいですが、

麹を作る技能と酒を造る技能は微妙に異なるので、製造量がごく小さく酒造技術が未発達な時代では、分業にもある程度の合理性があったかもしれません。

現代ではヒーターで室温を30度前後に維持しますが、かつては麹が成長するときに発する熱で室温を保っていました(剣菱は未だに麹の発熱のみで室温を保つ方式でやっているようです。すごい!)。


初期は部屋の保温性を高めるために地下に麹室を作ることが多かったそうです。

しかし、地下だと湿気がたまりやすく、二酸化炭素も逃げにくいので窒息する危険もあります。


高すぎる湿度は麹の品質を悪化させるので、地下ではなく半地下や、藁や籾殻で保温した室が使われるようになりました。

麹の品質の変遷については、米の精米能力と深い関係があります。
麹カビという菌にとっては、ミネラルやタンパク質が多い方が生育しやすいので、玄米に近い方が良いのです。
しかし、ミネラルタンパク質は玄米の表面に多いので、玄米で麹を作ると表面のみで菌が繁殖し、特に糖化酵素が少なくなります。

胞子を作るためには良いので、現代でも種麹のメーカーは玄米で麹を作りますが、酒を造る際には玄米麹はあまり効率がよくありません。


しかし、麹の生育が旺盛にはなるので、雑菌におかされる危険性は少なく、仕込む米は白米でも麹はあえて玄米(片白)という場合が、元禄くらいでもあったようです。

場所によっては明治になっても足踏み式の人力精米機(唐臼)が使われていたので、精米が困難で玄米を使っていた事情もあるのでしょう。
「諸白(麹、掛け米共に白米の酒)」は江戸以前からありましたが、庶民の口にはいるようになったのは、水車精米を使えた灘酒が勃興した後のことです。

水車精米の精米歩合は85%程度だったそうですが、明治以降に機械式の精米歩合が導入されるようになると、一気に向上して60%以下にまでなります。


全国規模の日本酒品評会が始まると、そこで好成績を残した蔵の酒が一気に売れたことから、コンテスト向けの酒造りが加熱化します。


吟醸酒の誕生です。

戦前の吟醸造りの時代に、現代で使われている技術の多くが確立されました。


高精白米には欠かせない限定吸水、突きハゼ、低温長期発酵・・・・・・


米をできるだけ溶かして製造量を高めるのではなく、「酒質のために麹の力価をコントロールする」という概念が生まれたのは画期的でした。


戦中戦後は吟醸が一旦打ち捨てられて、なるべく多く酒を造るため、麹ではなく酵素液を使われるようになったりもしましたが、昭和末期から何度かにわたって訪れた地酒ブームによって、今では米と麹だけで作る純米酒がスタンダードになった感もあります。


現代では、麹についての研究が進み、糖化酵素が極端に高い菌種や、雑味や苦味の出にくい高性能な菌種が市販されています。

味わいの面だけでなく、つくる上でも一昔前より大分楽になったようです。


品質の向上はよくも悪くも画一化に繋がります。
最近は不味い酒には滅多に出会いません。

そろそろ麹の温度がきそうなので、麹室へ向かおうと思います。


長い長い暇潰しでした。

お付き合いいただきありがとうございました。

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#日本酒の歴史




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