【しまね女子ブログ】　水木彩也子vol.5

電車時間。波になろう。

子供の頃からよく電車に乗っていました。
小学校1年生の頃から劇団に通い始め、使っていたのは東急東横線。渋谷の一つ手前の代官山まで。

急行が止まらないから気を付けて。端っこに立って手すりを持つようにね。

高校生の時も東横線ユーザー。今度は反対の横浜方向へ。
部活、部活、テスト、部活。
ダンス部だったので耳のおともはその時に踊っていた音楽たちで、ついつい合わせて身体が動いて手だけで小さく踊ってしまったり。今でも街中でイヤフォンをしながら手をパタパタしている子たちをみると当時の香りを思い出させてくれて少しタイムスリップしたような気持ちになるのです。

大学生の頃は約2時間かけて埼玉の山のほうまで。駅を降りて雪が降っていた時には通学というより小旅行の気分で雪にときめく一方、どこまで来てしまったんだろうと少し苦笑い。
あの頃は電車に乗るのがつらい時期があって、一駅の間隔が短いところで約1分。お昼ご飯のおにぎりが人混みで潰されないように抱きしめながら長い長い60秒を心の中で数えたり、少し進んでは降りてまた次の電車に乗ってを繰り返しなかなか学校までたどり着かなかったこともありました。

役者の仕事の時に多かったのは始発で新宿集合。撮影に行く高揚感と緊張感のかたまりの私、それをつつむ早朝の澄んだ空気が一緒に電車へ乗り込むけれどそれもつかの間、新宿の街はとっくにぱっちり目を覚ましていて、あついかたまりは次の街の空気を纏って、そこからが一日の始まりでした。

私の通勤時間史上一番ハードだったのは役者を辞めてからのアルバイト生活の日々だったように思います。
新宿の某百貨店、銀座のジュエリーショップなどなど。
「東京の満員電車が過酷だ」
なんていうことはもう皆さん知っての通りですが、そう過酷なんです。
でも、それ以上に感心してしまうのがそこにいる全員がまるでその道のプロかのように一瞬にして自分にぴったりのスキマを見つけ、あのせまい箱の中におさまっていくこと。そうして駅につくたびに押し出され、押し込められ、少しでも抗うとあっという間に波にのまれ遭難します。だから、波にならなければ。波にならなければ。

人生の多くを費やしている電車時間ですが、大学に入るまではスマホもなかったしゆっくり本を読むスペースもあまりなく、いまいち何をして過ごしていたのかが思い出せません。
思い出すのは窓に映った自分や、トンネルを抜けた瞬間殺伐とした車内を一瞬にしてドラマチックにしてくれた夕日のオレンジ、そして最高のBGMだったエレカシの曲(好きなんです)。

今回は都会と島根の通勤風景を比べて島根っていいなって書こうと思っていたのですが、今振り返るとそんな日々も愛おしかったのだと思えてきました。

ただ、もう一度戻れるか。と聞かれると…どうでしょうか。
波になれるかな…。

今は松江から出雲方面へと行く電車時間。

こちらは人の会話もくすぐったいさざ波のようで心地よい穏やかな海です。
車窓に流れるのは湖や広い空や雄大な山、常に目の前に絵画のような景色が広がり思わず何度も手をとめてしまいましたが、やっとここまで書く事が出来ました。

いつか「あの時何をしていたんだっけ。」と思うことがあっても、この景色だけはきっとずっと永遠です。

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　担当者プロフィール

【水木 彩也子】
　東京で20年ほど役者をし引退。
　その後は「次の自分に出会うためにはもっと広い世界を見てからじゃないと」と思い日本一周の旅にでました。
　途中「1番好きな場所で暮らしたい」との想いからこころのふるさと島根県へiターン。
　現在はラジオのパーソナリティやテレビのリポーターをしながら島根の事をもっと知ってもらうため日々発信中。
　一人でも多くの方が自分の心地よい場所を求められたら素敵だなと思っています。

　Instagram → https://www.instagram.com/sayako.07

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