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虎視眈眈と

いつも何人かの仲の良い女友達と旅していた。「女だらけで、喧嘩したりしないですか?」よく言われたが、喧嘩はしなかったし、いつも楽しかった。友人達には、本当は、不満があったのかもしれないが。

学生時代から今まで、なんども何度も寝食を共にし、職業も同じ。戦友のように思っていた。好きな事、嫌いな事もお互いに言い合えて、家族のように気を遣わない関係だった。そんな人達に出会えた事を、今でも感謝している。

旅行の時、私は、キレイな景色を求めて撮影していた。友人達は、人物を、主に、面白い写真を求めて撮影していた。

とくに、寝顔である。

私は、どこでも寝れてしまう。熟睡すると、口をあけ、よだれを垂らしたり、白目になったりする。恥ずかしくて、見られたくないのに、その寝顔を友人達は、虎視眈眈と狙っているのだ。最悪な鼻フックを仕掛けたりして、ニヤニヤ笑いながら、撮影出来た事を内緒にする。

出来上がった写真をみて、「この顔!」大笑いするのだ。「やめてよ、恥ずかしい。また撮られてた、油断してた。いつ撮られたのだろう?」正直、悪趣味と思いつつも、私の寝顔も、友人の寝顔も面白かったし、私も楽しんでいた。

アジアの航空会社の飛行機に乗っていた時の事。渡されたおしぼりが、とても熱かった。「あっっつ!なんでこんなに熱いんだろうね?」

私は、また熟睡してしまっていた。

寝ている私の頭の中に、言葉が響く。「あつい?あつい?熱い?熱い!熱い!!あっっっつい!!!」手を払って、飛び起きた。

一部始終見ていた友人が、隣の席でニヤニヤ笑っている。

あーやられた。イタズラされたのだ。

添乗員さんから、渡された、火傷しないであろうギリギリの熱々の蒸しタオルのようなおしぼりを、手の甲に乗せられていたのだ。

「あー面白かった。添乗員さんが、渡してって言うから」友人は、しれっと笑いながら言った。

熟睡してると、気がつかないんだな。皮膚からの触感は、中々頭に伝わらないんだな。言葉は聞こえているのに、頭が理解しない、頭が体に指令を出してくれない、体が動かない。時間差で、だいぶ遅れて、やっと体が動く。という、中々できない体験をした。「ひどい」けれども、面白い!一緒に笑ってしまった。

「あの時さ」この話をするたびに、笑い転げてしまう。

こんな悪趣味なイタズラが楽しかったし、いつもくだらない事で、笑っていた。こんな事が連続の旅だったから、私は、友人との旅が大好きだったのだ。

ここまで、貴重なお時間を!ありがとうございます。あなたが、読んで下さる事が、奇跡のように思います。くだらない話ばかりですが、笑って楽しんでくれると嬉しいです。また、来て下さいね!