ボルネオ島の旅
独身の頃、友人たちと一緒に夏休みに海外へ旅することが私の生きがいだった。そのために一生懸命に働いていたといっても過言ではない。旅の始まりは女7人の大所帯だったが、結婚や引越しなどがきっかけで旅仲間から、ひとり外れふたり外れ、この時には女4人の旅となっていた。
「今年はどこに行く?」早い時には年始早々の1月頃、遅くてもゴールデンウィーク頃までには、その年の行先を決めていた。
とりあえず旅行代理店に赴き、旅したいところのパンフレットをそれぞれが漁り持ち寄りファミレスに集う。ファミレスでは、たいていお昼ご飯を食べデザートにフローズンヨーグルト風パフェを食べる。フローズンヨーグルト風パフェは、ブルーベリーやピーチなどの何種類かのヨーグルト味のアイスが盛り盛りのパフェであり、食後にこれらを楽しみつつ会合する、ことが私たちの常であった。
「北欧、行きたいねー」「いいよねー、なんでダメなんだっけ?」「日数が合わないんだよー」「そうか・・・!残念だねー」
北欧、ヨーロッパ、ハワイ、インドネシア、マレーシアなどのアジア諸国。とりあえず旅程や値段などの条件は後回しにして、行って見たい国のパンフレットの束を集める。そして、それぞれの国の見所、日数や値段、日取りを自分達の条件に当てはめながら確認、選択していく。しかし、いくつものパンフレットを見ていると訳がわからなくなってくる。
「北欧行きたいよねー、なんでダメなんだっけ?」「だーかーらー日数が合わないんだって(笑)」「あー・・・(笑)」またパンフレットを漁る。
「北欧行きたいよねー」「(笑)!!!だーかーらー!・・・」こんなやりとりを笑いながら何度も繰り返していた。
旅の行き先を決めるまでのワクワクと楽しい日々。この旅行前のくだらなくて、たわいのない時間が私は大好きだった。
余談だが、バカリズム脚本のドラマ、ブラッシュアップライフのあーちん達女子のやり取りが、まるで私たちの昔を見ているようで、何だか懐かしくて胸がギュッとしてしまった。あーちんのようなしっかり者の友人がいて、あーちんのように旅の面倒な手続きや困難を解決してくれていた。たぶん人生5周目とかだったのだろう。友人達がいなければ、面倒くさがり屋の私は決して旅へは行かなかっただろう。私の旅は友人と一緒に行ってこそ、きっとそれが旅の目的だった。ブラッシュアップライフで友人たちのことを思い出していたから、昔の旅の写真を見直すことにしたのだ。
私たちの旅の優先順位は、まず先に日数。そして値段、その次に世界遺産があるところ、その次が程よく珍しい地域、だった。
友人の1人が休みが5日間しか取れず(土日含めて!)、ヨーロッパや北欧への旅は日数が足りなくて、諦める事が多かった。だから必然的に近場のアジアへの旅となっていた。
アジアの中でも皆があまり行かなそうな旅を探す。「オランウータン見てみたくない?」マレーシアには以前も訪れたことがあったが、その時もランカウイ島。本土ではなく島だった。ちなみに本土には空港以外、訪れた事がない。いつもツアーではあるけれども、ちょっとマイナーな旅を好んでいた。
私たちは世界自然遺産のあるマレーシア ボルネオ島へ行くことにした。
成田空港から、マレーシア ボルネオ島にあるコタ・キナバル国際空港へ。
宿泊先は自然保護区が近くにあり、オランウータンに餌付けができるというリゾートホテルに決めた。現在はオランウータンへの餌付けは廃止されているらしい。
何度か海外旅行をしていたのだが、当時は写真撮影に大して関心がなかった。記録として残っていれば、まぁいいかな?と。体よくいえば、旅の身軽さや機動性を重視してた。本音をいえば、重い荷物が増えることがイヤだった。そして最近撮影をしていて気がついたのだが、ひとりで誰にも気をつかわずに、自分の気が済むままに自由に撮影をしたい。友人がいると、撮影に時間をかけることに気をつかってしまうので、パパッと撮影できるスナップ撮影で十分だと思っていたし、十分だった。そして写真を撮ることよりも、友人達と楽しく過ごす時間が私には最も重要で大切だったのだ。
だから、この旅行で使っていたカメラは、当時、世界最薄最軽量と謳われていたカシオのコンパクトデジタルカメラ エクシリムだった。そういえば、テレビCMは水川あさみさん、まりりんだったな。厚さ約2cmほどの、本当に薄く小さいカメラで持ち運びには便利だったのだが、手ブレ補正や濃度補正や色調など仕上がりにはちょっと不満があった。今となっては、重さよりも画質に拘ったカメラを選んでいたら・・・とも思っている。
オランウータン保護センターへ
ホテルの敷地内にあるオランウータン保護センターへ。説明を受けた後、レンジャーの方について山へ登っていく。オランウータンが見えてきました!
リンゴやバナナなどの果物を食べていました。ジュースのような物も与えられていました。私たちは木製のデッキのような場所から見守ります。
オランウータンはそんなに餌を食べず、残された餌は近寄ってきたカニクイザルの群れに奪われていました。「えー!カニクイザルの餌じゃないんだよー」カニクイザルの勢いがすごかった。
オランウータンは絶滅が危ぶまれています。オランウータンが自由に暮らせる森がいつまでも残ること、願います。
夜9時よりホテル内の敷地で夜行性動物観察があった。
すぐ近くの自然保護区にある真っ暗な小屋の中から、ただひたすらに動物を見つめる。当時、「水曜どうでしょう」という番組でマレーシアのブンブンブラウにて野生動物を観察するという放送があった。トラの出現にびくついていたが、実はトラではなく「シカでした」と言う嬉野さんの名言が流行っていた。
「ブンブンブラウみたいだな」水曜どうでしょうと同じような施設に胸がドキドキしていたのだが、実際はとても小さな木造の建物で、しかもホテルのほぼ敷地内で、「思っていたのと違う!こんなところで?野生動物が見れるのだろうか?」とちょっとがっかり不安に思っていた。
じっくり目を凝らすと・・・なんかいる。何かの動物らしき物が木の上でじっと寝そべっていた。全く動かない。熊ねこといわれる動物らしい。熊でも猫でもない、のっぺりとしたかわいい子が寝そべっていた。ヤマアラシもいたらしい。暗くてよくわからない。鹿もいたらしい。暗くてよくわからない。そして残念ながら全く覚えていない。よくわかならいまま終了になってしまったのだが、出口を出て通路を渡っているときに、通路脇に小さな塊が佇んでいた。「マメジカですね。触らないでくださいね」すぐ足元、すぐふれられる距離に40cmほどの小さな小さなマメジカがいた。鹿なのに犬のような大きさ。本当に小さくて、「うわー!何これ?かわいいー」突然現れた野生動物に驚いて、出会えたことが、とても嬉しかった。一緒に参加していた方は、「あ!」と思った瞬間、あまりにも近いので思わず触ってしまっていた。私も触りたい!と思ったが、それはルール違反、絶対ダメ。双方へウィルスや細菌がうつってしまうこともあるかもしれない。しかし、一体どんな質感なのだろう?フカフカだろうか?案外ゴワゴワだろうか?私もやっぱり触ってみたい!と思っている間に、マメジカは山の中へ逃げていった。貴重な動物に出会えて、興奮冷めぬままホテルへ戻る。
明日はジャングルを探検する。果たして野生動物に出会えるのだろうか?
ビントロングの別名を熊ねこというらしいです。
ジャワマメジカは上野動物園で飼育されているようです。
キナバル公園
標高4000mを越し世界遺産にも登録されているキナバル山の1500m付近に位置する公園本部からの簡単なジャングル散策とポーリン温泉。地上41mの釣り橋を渡るキャノピー・ウォークのツアーに申し込んでいた。
ツアーのガイドさんから、「日本円で1000円払うと今ならラフレシアが見られます。行きますか?」何とも詐欺のような提案をされた。ぼったくり感満載だったのだが、そして多分ぼったくりなのだが、今後、野生のラフレシアを見る機会はないだろうと1000円払うことにした。見るだけで1人1000円、儲かる商売だ。私たちのように、簡単にお金を出してくれる、ちょろい日本人はたくさんいるのだろう・・・でも、後悔はしていない!
今となっては、20代の頃、友人達と旅をして良かったと思います。
歳を取ると海外の食事が合わなくなったり、長距離の移動が苦痛になったり、色々と無理が効かなくなります。若いうちに、行けるときに旅するもんだなーと思います。
しかし近所の公園や喫茶店、近所であっても、まだ知らぬお店、まだ知らぬ街、ちょっとそこまで、それも旅。今は、そんな小さな旅が心地よいです。日常から非日常へ。
旅はいつでも、すぐそこに。
写真を撮影することに意味なんてあるのだろうか?と思うことも多々あるのですが、写真を記録として残す、ということについては意味はあるのだろうと思います。燃えてしまった世界遺産、絶滅が危ぶまれる野生動物、災害や政治や宗教や社会の変化で無くなってしまう景色もある。その時その瞬間を記録する撮影するということは、だから意味はあるのだろう、と思います。
写真が残っている昔の旅の記事をまとめていこうと思います。
気晴らしに、また一緒に旅してくださると嬉しいです。
お付き合いいただき、ありがとうございます!
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ここまで、貴重なお時間を!ありがとうございます。あなたが、読んで下さる事が、奇跡のように思います。くだらない話ばかりですが、笑って楽しんでくれると嬉しいです。また、来て下さいね!