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映画「孤狼の血LEVEL2」感想

松坂桃李さん主演の映画「孤狼の血LEVEL2」を観ました。本作品は、いろいろな意味で「怖い」映画です(以下、核心部分のネタバレをかなり含みますのでご注意を)。

まず、わかりやすい「怖さ」は、暴力。

ヤクザの上林(鈴木亮平)の怪演がぶっ飛んでいて、生きたまま目玉をえぐるわ、突然アイスピックで頭を刺すわ、鉄格子の犬小屋に入れ首輪をつけて拷問するわ、目を背けたくなるシーンのオンパレード。

宇梶剛士さんと至近距離での怒鳴り合いや、刑務所の看守に対する恨みをシャバに出てすぐその家族に報復するなど、キレキレの狂犬ぶりが凄まじい。

鈴木亮平さんは、撮影期間中ずっと広島弁をしゃべるなど役に没頭していたそうですが、ちゃんとカタギの世界に戻ってこられたのか、心配になるレベルです(笑)

そして、もうひとつの「怖さ」は、組織。

県警上層部が鑑識結果をごまかしてあえて上林を泳がせ、身内の日岡刑事(松坂桃李)を困らせようとしたり、同じ警察なのに日岡の弱みを執拗に探ろうとしたり。

じつは、鈴木亮平さんより怖いと感じたのは、日岡とコンビを組んだ定年間近の冴えない風貌の世島(中村梅雀)。公安出身ということで、はじめは警戒してひそかに身辺調査した日岡も、瀬島の家に呼ばれて妻(宮崎美子)の手料理を振る舞われたり、捜査を進めていく中で徐々に心を許しますが、最後の最後に裏切られます。

日岡は窮地を打開すべく、3年前、対立するヤクザのトップを手引きして殺害へ導いた経緯を世島に告白しますが、世島はひそかに録音して公安へリーク。世島の裏切りを知り、激昂した日岡が世島の家を訪れると、もぬけの殻。家具も何も一切なく、じつはそもそも空き家だった。妻の宮崎美子さんのやさしい笑顔も、難病で亡くなったという子どもの写真も、すべてウソだったのでしょうか?

余談ですが、私は公安委員会の採用面接を受けたことがあります。

公安というとコワモテのイメージがありますが、面接官は非常に柔和な印象。「どのような人が向いているのですか?」と尋ねたところ、「コワモテだと警戒される。相手の懐に飛び込み、情報を引き出せるタイプがよい。あなたは人あたりがやわらかいし、新聞社出身なので、適性があるかもしれない」との話でした。

それって、まさに世島のやったことと同じだ!と、ふと思い出した次第です。

ちなみに、公安の面接結果ですが、15分の面接予定が45分にも及んで盛り上がり、手応えありでしたが、不合格。何が本当で何がウソなのかわからず、やはり公安は怖いところです(苦笑)

さて、いろいろな意味で「怖い」映画で、グロい描写が苦手な人には決してオススメしませんが、そっち系が大丈夫な人には満足度の高いエンタメ作品。

ちょっと心配していたスナックのママ役の西野七瀬さんは想像以上にハマっているし、チンピラを演じる村上虹郎さんの演技は味わい深く、切ない。警察役の滝藤賢一さんのキレっぷりや、吉田鋼太郎さんのちょい小者感のあるヤクザもさすがの一言。

そして、主演の松坂桃李さん。

新米刑事役だった前作と比べて格段の進化成長が感じられましたが、今回改めて思ったのは、役所広司さんの凄さ。前作で登場した役所さんは本作に出演していませんが、酸いも甘いも噛み分けた海千山千のヤクザや刑事を演らせたら、役所さんの右に出る者はいないのではないでしょうか?

「この素晴らしき世界」という映画で元ヤクザ役を演じて、これまた役所さんじゃなければ成立しないのでは?というほどの圧倒的なハマり役でした。一言でいうと、人間としての厚み、深み、重みが違う。

たとえば、ふつうに笑っているだけでも、腹の中で何を企んでいるか、次の瞬間に何をしでかすかわからず、怖いんですよね。もちろん、子供のような純真で無邪気な笑顔もできるのでしょうが、役柄や状況に応じてその人間が歩んできた人生の重みや背負う業まで表現できてしまう。本当に凄い役者さんだと思います。

正直、本作で松坂さんは役所さんの圧倒的な存在感には及んでいないと思います。ただし、現時点ではという話で、年齢やキャリアを重ねれば、松坂さんなりの味わいや深みが出てくると期待しています。松坂さんはとてもいい役者だと思いますが、役所さんがとてつもなく凄すぎるのです(笑)

興味を持たれた方は「孤狼の血」を予習した上で、「孤狼の血LEVEL2」を観ると、よりいっそう楽しめると思います!

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