【価値とは何か?】 AIに奪われない価値を想像する
■AIに奪われない価値を創造する
文章・音楽・動画・会話・カウンセリング…。
「AIによって過剰供給される世界で、
ありふれたもの(に見えるもの)に、どうやって『価値付与』をすればいいのか?」
やみくもに生産したところで「需要がないものをつくっても意味がない」と思います。
AIと戦うにしろ、共存するにしろ、私たちはそもそもの【価値】について考えていかなければなりません。
そもそも「価値」とは何なのでしょうか?
人は何に価値を感じるのでしょうか?
このさきの時代を生き残っていくために、少し遠回りになりますが、そこから紐解いていきましょう。
□そもそもの「価値」とは何か?
結論からはじめにいいますと、
モノゴトの「価値基準」とは、おおよそ、生きていく上で役に立つか? で決められており、
私たちは役に立つことを基準として「事に意味」を「物に価値」を見出していることが多いです。
そして「価値」とは、主に「意味(特徴)」より生まれるものです。
…少しむずかしいお話になりますが、私たちは、物体や現象の持つ「意味(特徴)」を複数に分解し、そこから「役に立つもの」だけに価値を見出し、付与させていきています。なんだか少しややこしいですね。
カンタンにたとえていうと、例えば【みかん】という物体でしたら、
「甘い」「オレンジ色」「爽やか」「フレッシュ」「オイリー」という【意味】(特徴)を持ち、そのうちの「爽やかさ」や「甘み」などで人を元気にさせ、役に立つのが【価値】ということになります。
しかし、そもそも意味というグループの中に「価値」が入っていますから、意味自体も「価値」を持ちます。
例えば「学校へ行く」ということの意味なら、「読み書きができる」「就職に有利」というメリットのことであり、「友達ができる」「いじめなどがおきるかもしれない」というメリット・デメリット(意味)もあります。
ですが、「自由と時間が奪われる」というリスクという意味合いももち、この場合は「価値」がないため【意味(メリット)】があるとは言えません。
「意味」は主に、「静止した物体の価値」ではなく、ほとんど場合「流動する物事の流れの価値」、つまりは「効果」を指すことが多いです。
ですから意味と価値は「人を役に立つか?」を基準としたものであり、両者の違いとして、「事には意味」を「物には価値」を、それぞれ私たちは見出しているのです。
□希少性はどのようにして生まれるか?
「価値あるとはどのようなことか」の著者、ジョセフ・ラズ氏は、名作「星の王子さま」を引用し、物の希少性=価値を説いています。
星の王子さまは、自分の育てているバラとそっくりの花をみて、驚き、花たちに質問します。
星の王子さまが、自分の育てているものが、この世に2つとない特別なものだと思っていたのに、その存在は唯一無二ではない・他にもそっくりのバラがあることを知ってショックを受けるシーンです。
ジョセフ氏は、私たち人間が「特別感」…すなわち「価値」があると感じることは【唯一感】であり、それは他と違う「オリジナリティ」「希少性」を感じるものを私たちは価値が高いと感じると述べています。
星の王子さまは悲しみます。
ですが、王子さまはバラたちにこう答えます。
星の王子さまはこのようにのべ、自分が世話し、愛した「バラ」を再度特別なものにすることで、その価値を肯定し、愛するに値するものと定義しました。
つまり、【希少性】などの価値は、「唯一感」だけにとどまらず、「ともに時間を過ごす」などの【思い出】も、価値を高めるものになり得る。
さらには、飼いならされる・自分のものにできるなど「所有できる」「有することができる」ものかどうかも、価値を感じるポイントかどうかであると、ジョセフ氏は説いてます。
□客観と主観(理論と感性・物質と意味について)
私たちの世界は、「客観的事実」と「主観的意見」に分かれています。
これをもう少しわかりやすく分解すると、「理性と感性」「物質と意味」に分けられます。
例えば、よくあるものとして「スマートフォン」や「携帯電話」があります。
スマホや携帯をよくよく見てみれば、鉄などの鉱物のカタマリです。
しかし、電波やバッテリー、電池・通信機能、カメラなどいろいろな「意味(役割)」を持ち、そのような鉱物のカタマリをスマホやケータイを呼んでいます。
テレビやパソコンも同様です。
一番おもしろいのは、「お金」かもしれません。
私たちは、同じ【原価】17円しかない「紙幣」を、柄や色合いを変えることで、千円または一万円と【価値】と『役割』を変えさせて区別しています。
もとは同じ17円の紙なのに、不思議ですよね。
そして、このような「日本円」も、日本ではどこでも共同に使えますが、外国ですと使えません。
これは、【日本円】という日本人のあいだで共通する「客観的意味」が、外国にいくとその「客観性」を失い、まったく価値のないもの…「主観性」をおびて【意味・価値・役割】が変化することによって起きる現象です。
また、お金以外でも、
高所恐怖症の人は少し上のジャングルジムでもパニックになるのに対し、その他の人はそんなに恐怖を感じないことがあります。
同じ日本人でも「物質」が与える【効果】や意味、影響・価値・役割などが変化するのです。
これは私たちの脳が、この世界にある物質たちに、意味や価値を付与して生きているだけにすぎないと言えます。
ここで客観的に価値を見るため、経済学やマーケティングの上での価値を見てみましょう。
□経済学・マーケティング上での価値
ここでは、経済学やマーケティングから価値を学んでいきましょう。
マルクス経済学などでは、
私たちがものを買うのは、何かしらのメリットを感じ、「使用価値」があるからであると説いています。
そして、これらの商品は市場などで交換に出されることで、価格がつけられ、客観的な指標として商品に「交換価値」が付与されるものといわれています。
そして、市場に同じような物がありすぎる場合には、物の価値が下がり、反対に市場にみんなが欲しいものが少数しか供給されない場合、だんだん値段があがり、需要と供給のバランスが自然にとれて、物の価格が決められていると考えられています。
さらに、マーケティングの分野において、【価値】とはおもに4つのマトリックスに分類されています。
商品の価値はおおよそ、この4つに分類されます。
そして、これらの「価値」の根本には、「生存」と「繁殖」の欲求を満たす要素が包布され、さらに8つの本能が関連しています。
□8つの本能
「進化論マーケティング」の著者、鈴木氏は、人間が価値を感じるものは、おおよそ8つの本能に基づくものだと説いています。
その8つの本能とは、
この8つです。
これらの行為は、ドーパミンやオキシトシンといった幸福ホルモンを増やす効果があり、私たちが「価値」や「意味」があると感じやすい行為でもあります。
1の「安らぐ」は、私たち人間にの生命維持の根幹に基づく欲求です。
不安や恐怖から逃れ、安心できる環境を作りたいというものであり、「警報ブザー」「安全装置」「消化器」「防犯グッズ」「防災」など、人に安心をもたらすものに人は価値を感じやすくなります。
2の「進める」は、目標やゴールを計画し、それに向かって進もうとする欲求です。
私たち人間は、「自分にとって特になる変化」「足りないモノを埋めていく作業」「増殖」を好ましいと感じる性質があり、そのような変化を望むことを「成長」と捉えて求めやすい傾向があります。
富士山への登山や、マラソン大会に出る、お遍路さんに挑戦する、コンテストに出場するほか、趣味の編み物やジオラマづくりを続けるというのも「進める」作業に入るでしょう。
3の「決する」は、自分のことを自分でどうにかしたい、コントロールしたいという欲求です。
これは「安らぐ」「進める」という本能とも関係しており、自らの環境を安全なものにしたい、自由を手にしたい、自分の環境をもっとより良いものにしていきたい、そのためにどうすればいいか? などを自分で制御したいという本能です。
人間にかぎらず、動物はある程度の自立性がなければ動くことはできません。
安全や利得のために、自分で目標を定めて行動できるようになりたい、「あなたらしく生きる」「自分を解放する」などと謳う商品も、この「決する」欲求を刺激商品になるでしょう。
4番目は、「有する」です。
これは「所有欲」とも言います。哺乳類などの動物は、食べ物を自分の巣に持ち込んで「備蓄」し、冬などの食料がない季節を乗り切ろうという本能があります。
そこから派生して、人間には車や家、高価な時計など、価値あるものを備蓄し、いざというときの切り札として使いたいという欲求があります。ですから、価値あるものが「交換可能」であることをアピールして、有する本能を目覚めさせることが可能です。
5つめの本能は「属する」です。
自由を求める「決する」本能と相反するかもしれませんが、私たちは実際に群れで暮らし、「みんなと仲良くしたい」「周囲と同じ行動をすることで安心したい」という本能があります。
自分と同じ考えやアイデンティティを持つ人と仲良くなりたいという人も多いです。そこで本能を刺激する、クラブやイベントの企画・マッチングアプリや街コン、アーティストの音楽ツアーも「属する」欲求を刺激し、価値を感じさせやすくなります。
6番目は、「高める」本能です。
人間に限らず、自然界は「弱肉強食の世界」ですから、安全のために弱くみられないよう・自分を強くみせようという本能があります。
美しく思われることで、他者から選ばれ、モテたい! という「繁殖」の本能に起因する部分でもあります。
闘争本能がない人にとっては、そんなマウント合戦をしなくても、みんな仲良く暮らしていけばいいじゃん! と感じるかもしれませんが、相手を自分より「弱い」と判断すると、その人物を支配してもいいと考える「コントロール欲」に支配される人もいるようです。
そのような人物には近づかないことが1番ですが、自分を守るために少しでも自分を高めたい、誰かと仲良くするためによく思われたいと思う気持ちはだれにでもあるでしょう。
そのような方に価値を提供するには、「見た目をキレイにする美容グッズ」「個人的成功を後押しするもの」などの商品を開発し、その効果を謳うと良いでしょう。
7つめは、「伝える」本能です。
人間は、自分のことを話し、自分のことを知ってもらう・認知してもらうと「ドーパミン」という快楽物質が出てきます。
これは、私たち人間が言葉を操り、「情報」を後世に伝達して生き残ってきた種族であるからというのがまずひとつです。
さらに、前項の「高める」本能に基づき、自分の優秀さをアピールする、自分がどれだけコミュニティの中で役に立つか? など、子孫を残すため、パートナーを見つけるために必要な行為であったとも考えられています。
この伝える本能を利用した代表的サービスが、フェイスブックやインスタグラム、ツイッターなどの「SNS」です。
ブログやキンドル、ユーチューブなども「伝える」本能に入るでしょう。ユーザー自身がコンテンツを作り、そこからユーザーに時間をつかってもらって広告収入を得る「クックバッド」なども伝える本能に根ざしたサービスとなります。
最後の8つめは「物語る」です。
物語るは、自分の話をしたいという「伝える」本能に根ざしたものだけでなく、私たち自身が「物語」によって物事の背景や世間を理解する、理解したい! という性質があり、そこから新しいものと出会うことを愛する・好むという「知識欲」が私たちの中で眠っています。
その証拠として、古来の神話や民話、聖書の物語、それらをモチーフにした絵画や彫刻が今現代にも残り続けています。
もちろんみなさんがよく知る、ドラマやアニメ、映画・漫画、文学作品など「物語」をメインとした最大の娯楽です。
ネットフリックスなど、動画配信サービスが世界的大企業となったことからもいえるとおり、私たちは物語を愛するという気質を持ちますから、商品を売るときは、その背景なども盛り込むことが重要かもしれません。
機械にフィクションのストーリーは作れても、ドラマ的「背景」はつくれませんから。
このような8つの本能を駆使して、よりよいサービスを作っていくことが重要です。
■AIで消える仕事/AIで生き残る仕事
アートにかぎらず、AIによってなくなる仕事が今後増えると予想されます。
アートやクリエイター分野でいうならば、まず、あまり知名度のないイラストレーターなどはAIの登場で姿を消すでしょう。
絵という媒体自体に価値がつきにくくなりますから、今後はイラストに【付加価値】をつける必要があります。
ストーリーで人を引き込む「漫画」「動画」
容姿・性格・行動によって魅了する「キャラクタービジネス」
などにクリエイターが流れていくと予想されます。
ホワイトカラーの仕事では、
などが減っていくと考えられます。
(※2015 野村総合研究所「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」より引用)
業種でいいますと、
などが当てはまります。
いずれ、知的産業のほぼすべてがAIに置き換わっていくと過言ではありません。
それどころか今現在、弁護士の司法試験の模擬試験さえ、AIのほうがテストで一般の受験者より高得点をあげたというデータもあります。
(Yahoo news,2023年 3月15日(水)の記事による)
当初は感性を働かせ、
創造性やクリエイティビティの高い仕事は、AIに置き換わらないという見方をしていた人がほとんどでしたが、
などの分野にもAIの影響力が及んでくるという意見が増えてきました。
すでにAIによる動画生成サービス、アメリカのメタ社による「メーク・ア・ビデオ」というハイクオリティの動画生成サービスが話題となっています。
「漫画」「動画」も、AIがボタンひとつで作ってくれる時代がやってくるかもしれません。
このまま、AIによってわたしたちの仕事はすべてなくなってしまうのでしょうか?
…まだ、その心配はありません。
意外にも、ブルーカラーなど直接的な制作・手足を動かす仕事は、残るものが多いと考えられます。
ただ、3Dプリンターなどの技術も凄まじいものの「あまりに細かい作業」では、ロボットが緻密に動けない場合もあります。
必ず人の手が必要な部分があり、AIの発展においてはホワイトカラーよりもブルーカラーの仕事のほうが安全といえるかもしれません。
…ここでひとつの疑念が生まれます。
細かい作業は人間のほうが向いている。
けれど、知的産業はもうAIに勝てない部分もある。
それどころか、AIのほうが、効率よく、正しく、賢い選択肢をいつも示してくれる場合もある。
…すなわちそれは、
「私達の人間の未来は、AIに使われるしかないのか?」
「私達が人間が、価値あるものを作り出すことはもうできないのか?」
という疑念です。
このような疑問を解消するには、そもそものAI(ディープラーニング)のシステムを理解する必要があります。
AIと戦うにしろ、共存するにしろ、まず「敵を知る」ことが必要になります。
□人間の欲求の中でAI満たせないものを探す
ここでは、AIに勝つため、AIにできない人工知能の【穴】をご紹介していきます。
ずばり、(ここではチャットGPTを例としますと)AIできないことは、
を有した議論です。
まず、今現在トラブル防止の観点からか、データを扱える情報量の限界からか、
チャットGPTでは、株価予想などを行うことはできません。
また、同時に哲学などの思想性を有した議論も行うことはできないのです。
実際に、「美」や「思想」などの本質について聞いても、詳しい答えは返ってきません。
これは、2016年にリリースされた、マイクロソフトはAIボット「Tay」が、
「ナチスは正しかった。ヒトラーは間違っていなかった」
などの発言を習得してしまい、謝罪声明を出したことに由来すると考えられます。
おそらく、AI開発の裏では「哲学(知恵・正義・節制・勇気・信仰・希望・愛)」を議論するにいたるデータが充分に集まっているけれど、それを表に出すことは制限されている。
つまり、私たちは最終的に、おのれ自身で【善悪】を判断しなければならないということになります。
…そして、つきなみにはなりますが人間がAIにまさるに値する最大の武器とは、
であると考えられます。
AIはいまのところ、人間のアシスタントであり、あくまで補助ツールです。
AIは命令しなければ動くことはありません。
実際に、AIが出力したものに価値を付与させる・価値を見出すのは私達人間です。
AIがアウトプットしたものを組み合わせ、より価値のあるものを作り出すことが大切になるのではないでしょうか。
…とはいえ、
もはや命令文さえ入力せずに、目的を遂行してくれる高度AIや「Auto-GPT」といわれるものの存在もすでに知られています。
私たちの目の前に、ドラえもんやアトムが現れるのはもうすぐそこかもしれません。
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