1,650円でも汗水たらして稼いだお金なのだよ。
アメリカの歴史的コピーライター、ジョセフ・シュガーマンの著書に次のような言葉がありました。
「ものを売るとは、お客が汗水たらして稼いだお金を交換することだ」
つまりこういうことです。(と、シュガーマンっぽく書いてみる)
お金をいただくに足る価値を、私たちは本当に届けられているのか?
この質問に迷いなく答えられますか? 面と向かって言われたら躊躇するのではないかと思います。
お金をいただく。これはたとえ100円でも、誰かの人生の一部が費やされた時間を使っていただいているということですよね。
商売はシンプルイズベスト
先日、私が管理人をしているコワーキングスペースを、わざわざ検索して訪れてくれた方がいました。
「騒がしい街中じゃなくて、ちょっと郊外で落ち着いて作業ができる場所を探していたんです」
お客様はそうおっしゃってくれました。続けて、
「コワーキングスペースというより、“お部屋を借りている”みたいで心地いい」
と言ってくれました。その後、すぐさまサブスク会員になってくれたのです。
サブスク会員の価格は1,650円。会員の方は毎月2日間無料+割引価格で、コワーキングスペースを利用することができます。
「探していたんです」という言葉を聞いたとき、私は
「あ〜、こういう人のためにここの仕事をしているんだなぁ」
と改めて思いました。
高いか安いかは人それぞれの尺度です。
とはいえこうやって話をしながら、お客様の「欲しい」に対して、私たちが提供できる価値をすり合わせていく行いは非常に尊いものだと思いました。
1,650円を払うだけの見返りがあるから払っていただける。当たり前のことなのに忘れていた気がします。
以前、私は菓子商社で営業をしていました。
会社が「売ってこい」というものを、値下げも辞さずに意地でも売ってくる。「こんなことを続けていて誰が喜ぶんだ?」とずっと感じていました。業態柄、エンドユーザーの顔も見えないのでなおさらそう感じていたのです。
喜んでくれていたのだとは思います。しかし、在庫を“はかす”ために値下げまでして営業をしていては、そんな喜びなどくぐもって見えないわけです。
シンプルがいい。
シンプルに、1対1で接客をしてお互いが納得をしたうえで買っていただく。こういう営みから離れてはいけないですね。
答えはいつも
“お部屋を借りているみたい”という言葉を、直接お客様の口から聞けたのもとてもよかった。
そうか、「自宅以外の場所で作業ができること」ではなく「部屋を借りている感覚」がうちの情緒的な価値なのか。
「答えはいつもお客様の中にある」
常々、お世話になっている方がよくおっしゃっている言葉です。
お客様と価値と価値の交換をする過程で、売り手自身がサービスの価値に気づく。ままあることではないかと思います。
こと、私は不器用なので自分自身の良さに他人から気づかされてばかりです。
先ほど営業マンをしていたと書きました。自分でいうのもなんですが、数字ベースではまァまァいいセン行っていたと思います。
が、それがなぜなのか? に気づいたのは割と最近のことです。
お得意先から依頼があったとき、客観的に見て他社のほうが質のいい商品を持っている場合は積極的に他社を紹介していました。
狭い業界なので、他社といっても競合というより共同体みたいな感じなんですね。
そんな私のやり方を見て、上司は「なんでそんなことするんだよ」と馬鹿にした目を向けます。
私からしたら、お得意先の課題解決にぴったりの商品が他にあるのに、劣ったものを差し出すのが忍びなかっただけ。
このやり方を続けていたら、恩返しなのか恩送りなのか分からないけれど、必ず2ヶ月、3ヶ月後には売上が返ってきました。
そして、自信を持って売れる商品を提案するタイミングでは、ほぼ必ず成約が取れました。お得意先の担当者を次々と紹介してくれて、ドンドン売上も上がっていって。
「あの難攻不落の会社をよく攻略できたね」
自社内からはそんな声も。特別なことをしているつもりはまったくなかったのですが。
・・・という話を少し前、知り合いの営業コンサルタントの方にしたら、「それは最新の手法ですよ」と言ってくれました。
取れないものは潔く諦めて、取れるものを確実に取る。「機会損失をしないための戦い方」だと。
エピソードがめっちゃ長くなりましたが、関係構築は私の特技みたいです。これも他人が教えてくれたこと。
ずっと不完全
話を戻します。
そう、「汗水たらして稼いだお金にしっかり報いる」。そんな話でした(笑)。
「答えはいつもお客様の中」という言葉にも通じるのですが、完全・完璧などないのだと思います。むしろ「これで100%」と版を押してしまったら終わり。
私たち自身も私たちのサービスもずっと不完全なのです。不完全だからこそ、もっとずっとよくしていくことができるわけです。
1,650円相当だった価値を(これは最低でも)、2,000円にして、3,300円にして、5,000円にして…これの繰り返し。終わりなどありません。
だって「答えはいつもお客様の中」なのだから。
よくしていくことを止めない限り、答えはどこかしらにあり続けます。
俗にいう「エンゲージメントを高める」とは、終わりのない不完全を少しずつ埋めていく作業ってことなんじゃないでしょうか。
それが、汗水たらして得たお金を支払っていただくことへの責務だと思います。
おしまい
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